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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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615 ボルケイノ24スペシャル



 7月11日。

 朝。


 私は眠かった。

 普通に座っているだけでも、頭が振り子みたいに揺れる。

 くらくらクウちゃんだ。

 なにしろ徹夜のダンジョン攻略から帰ったところなのだ。

 徹夜。

 そう。

 すなわち、私は丸一日、すでに寝ていないのだ。


 でも今日は、のんびりと寝てはいられない。

 なぜなら今日は、午前9時から、中央騎士団と黒騎士隊の選抜メンバーを鍛えるお仕事があるのだ。


 中央騎士が30名。

 黒騎士が10名。


 いや、うん。


 正直、明日にしてほしいんだけど……。


 黒騎士のみなさんはわざわざアーレから来ているし、中央騎士のみなさんには治安維持等の仕事がある。


 そういうわけには、いかないよね……。


 現在の時刻は午前8時。


 そもそもみんな、もう訓練場に到着して、準備を始めているだろうし。


 お兄さまたちは、ぐっすりと寝た。

 戦いを終えて、帝都近郊のFランクダンジョン『マーレ古墳』に転移の魔法で飛んで、離脱の魔法で外に出て、待機していた馬車に乗り込んだところで熟睡してそのまま帰宅した。

 丸一日は目覚めないことだろう。

 そして、目覚めれば――。

 レベルアップに体が順応して、さらに一回り、強くなっているはずだ。

 ロディマスさんたちは、精神に異常がなければいいけど。

 まあ、うん。

 様子が変だったら、ゼノになんとかさせよう!


 そのゼノも、すでに帰っている。


 私はロビーでセラと一緒にいる。

 セラは私が帰還すると、すぐに駆けつけて出迎えてくれた。

 セラの専属メイドのシルエラさんが、コーヒーを淹れて、私たちのテーブルにまで運んでくれた。

 軽くつまめるお菓子もセットだ。


「クウちゃん、本当に大丈夫ですか……? 今にも倒れそうですよ……?」

「平気だよー。あははー」


 コーヒーとお菓子をいただきつつ、私は笑った。

 くらくらながらも。


「今日は騎士団の訓練なんですよね?」

「うんー。そだよー」

「クウちゃんっ! わたくしもお手伝いしますっ! クウちゃんほどではありませんが強化魔法と回復魔法はすでに使えますしっ!」


 お、それは有り難いかも。

 と私は思ったのだけど、すぐにシルエラさんが言った。


「姫様、今日は魔術科のご学友とのお茶会が予定されております」

「ああ……。そうでしたぁ」


 セラはがっくりとうなだれる。

 次の瞬間には、ならお茶会は中止にします!とか言い始めたので、私からお手伝いはお断りさせていただいた。

 ちゃんとクラスメイトと交流していこうね!


 というわけで。


 私は1人、騎士たちの訓練場へと向かった。

 訓練場は、大宮殿に隣接しているとはいえ、それなりに遠い。

 浮遊して、空から向かった。


 指定されている場所は、第一訓練場。


 そこには、すでにフル装備の参加者がずらりと整列していた。

 みんな、真顔だ……。

 雑談ひとつせず、私を待っている……。

 いかん……。

 寝ぼけ眼でくらくらと前に出たら、流石に失礼だ……。

 とはいえ、眠気は簡単には取れない。


 試しに白魔法のブレスをかけてみたけど、体に力はみなぎるものの、やっぱり眠気はなくならない。

 なんとも妙な感覚になって、ますます調子を崩しそうだった。

 なので、ブレスは解除した。

 ちなみに眠気には、回復魔法も効かない。


「仕方ないか……」


 私は、最後の手段を使うことにした。

 アイテム欄から、赤いラベルの一本のポーションを取り出す。


 エナジードリンク『ボルケイノ24スペシャル』――。


 これは24時間に渡って効果が持続する、錬金スキル80から生成可能な伝説級の飲料なんだけど――。

 テキスト欄にはこう書かれている。


 ――赤いラベルは勇気のしるし。

   24時間戦えますか。

   眠気を忘れ、一心不乱に噴火を続ける冒険者のための妙薬。


 ゲームでは、普通に有用なポーションだった。

 HPMPの自動回復に加えてハイテンション状態になるので、能力上昇と状態異常耐性を有することができたし。

 特に、敵からの睡眠攻撃を無効化できるのは大きかった。


 竜の人との交換会で素材が手に入ったので――。

 まさに、こんな時のために、作っておいたものだけど……。


 ただ……。


 いざ飲むとなると少し怖い。


 一心不乱とか、ね。

 リアルの私に、どんな作用があるんだろうか。


 ヒオリさんで実験しておけばよかったね……。


「ええいっ!」


 私は思い切って飲んだ。

 一気に飲み干した。


 すると――。


 効果はテキメンだった。

 私の思考をぼんやりと覆っていた灰色のモヤが一瞬の強風に流されて、あっという間に消え去った。

 眠気は吹き飛び――。


 うおおおおおお!


 と、叫びたくなるほどに力がみなぎった!


 やれる!


 これならば、余裕だ!


 燃え上がる心のまま、私は勢いよく騎士たちの前に降りた。


「よーし! 集まってるな! やるぞおおお! 全員、剣を持てぇぇぇ! 強化魔法はくれてやるぅぅぅ! まずは半殺しにしてやるから、全員、死ぬ気でかかってこいやぁぁぁ!」


 はい。


 私はこの後、ただひたすらにハイテンションで――。

 訓練というか――。

 騎士たちをぶっ飛ばし続け――。


 翌朝。


 そう……。


 次の日の朝まで、それを続けたのだった……。


 私の強化魔法を24時間受け続け……。

 必死に戦い続けた騎士たちにとっては、ダンジョン探索にも負けない強烈な訓練にはなったようだ。


 私は、はい。


 訓練終了を告げた後、心配して駆け寄ってきたセラに抱かれて。

 そのまま、意識を無くしました。


 いや、これ……。


 そのタイミングで悪魔に襲われていたら……。

 さすがの私も殺されていたね……。


 幸いにも――。


 私はセラの部屋で目覚めることができたけど……。



 ボルケイノ24スペシャルは、封印決定!


 二度と使わない!






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― 新着の感想 ―
[一言] 黄色と黒は勇気の印 赤は……、強すぎましたね
[一言] 次回、616話「メガボルケイノ365フェイタル」 に期待。。。 キタイ。 キ・タ・イ。 キ・タ・イ! キ・タ・イ!? …
[一言] 効果強すぎるでしょ 飲む量をちょっとにするとか、水で薄めるとか・・・(貧乏性なもので)
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