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601 お片付けと閉会式





「あーでも、これで学院祭がおわって、次はいよいよテストだねえ」

「やめてー!」


 アヤが悲しいことを言うので私は悲鳴を上げた。


 学院祭がおわった、翌日の午前。


 私たちは屋台の片付をしていた。


「ねえ、クウちゃん。屋台勝負はどっちが勝ったと思う?」

「んー。どだろー」


 私とアヤは鉄板を水とタワシで綺麗にする。

 そのとなりでは、同じ肉係のラハ君とダリオが魔石コンロを分解して、荷台の上に置いていた。

 荷台は昼にシャルレーン商会の人が取りに来てくれる予定だ。


 他の子たちは、中庭の掃除や、屋台の解体をしている。


「最初は正直、クレープ屋かなーと思ってたけど、2日目は私たちもかなり健闘したと思うんだよねー」


 1クラスのクレープ屋と、私たち5クラスのバーガー屋。

 クロードとレオが学院祭の前日に喧嘩して、どちらが高い評価を受けるのか勝負になっていた。


「アヤは昨日、肉焼きに接客に、大活躍だったよね」

「めっちゃ頑張った! ホント疲れたよー」

「お疲れさま。でも、アヤは今日も元気だ」

「まあね! 元気だけが取り柄だよ!」


 ちなみにうさぎのコスプレ衣装は、各自で持ち帰った。

 私のアイテム欄にも入っている。


 鉄板とコンロの片付けが済む頃には、看板の取り外しもおわっていた。

 使いおわった看板はゴミ捨て場に、素体の屋台は所定の場所に、それぞれクラスメイトが持って行った。


 一通り完了したところでクラスメイトが集合する。


「では、大講堂に行きましょうか」


 エカテリーナさんの先導で、そそくさと移動。


 ちなみに男子たち――。

 特にレオは――。

 勝負を受けて立った張本人なのに、勝負のことは気にしていなかった。

 何故ならば。

 彼らは、ソード様のことに夢中だった。

 あと、ソード様と互角の死闘を演じた謎の2人――白騎士と黒騎士が誰なのかということについても。


 レオが偉そうにしゃべっている。


「俺が思うに、あの2人は帝国の秘密部隊の一員だな! ホント、すげーよなー空中で戦うって! しかも、あのソード様と互角! いや、俺が見るところ、時間切れでなければ倒せてたな!」


 なにおぉぉぉぉ!

 私は一瞬、沸騰しかけたけど……。

 ぐっと我慢した。

 何故なら私はソード様ではなく、ふわふわのクウちゃんなのだ。


 ちなみに白騎士と黒騎士のことは、正体不明、ご想像にお任せしますということになっている。

 昨夜、お兄さまと話して決まった。

 ただ、みんなはだいたい、レオが言うように、帝国の秘密部隊の一員だと考えているようだ。

 それはそれでいいんじゃないかなーと思う。

 だって帝国にも超人がいないとバランスが取れないしね。


 大講堂に入った。


 座る場所は、学年と科によって決まっている。

 魔術科の生徒はすべて前列。

 普通科の生徒は、学年ごとにそのうしろ。

 騎士科の生徒は二階席だ。


 大講堂は広いので、全生徒が入っても、まだうしろの席は余っている。


 私は真ん中あたりに座った。


 しばらく待っていると、閉会式が始まる。


 最初にお兄さまが、今年の学院祭を振り返って挨拶した。


 私にとっては、うん……。

 楽しかったけど……。

 ユイナちゃんに振り回された2日間だったね……。


 次に生徒会の役員の女生徒――。

 メイヴィスさんの友人でもあるレイリさんがマイクを手に取って、優秀クラスの発表を始めた。

 発表は学年ごと、まずは1年生から行われる。

 早くも勝負だ。


 結果……。


 私たち普通科5クラスは、銀賞をいただいた。

 1クラスも銀賞だった。


 まさかの引き分けだ。


 どちらの模擬店も、個性的な店舗、楽しい接客、美味しい料理、この3点が評価されての受賞となった。


 最優秀の金賞は、騎士科Dクラス。

 私は見に行けなかったけど、訓練場に作られたアスレチックが素晴らしい完成度を誇っていたそうだ。


 セラたち魔術科上位クラスの聖国展は残念ながら選外だった。

 まあ、あまり力を入れている様子もなかったし、それほど落ち込んでいるということもないだろう。


 全体での最優秀クラスは、オーレリアさんのところだった。

 私も見たけど、素晴らしい演劇だった。

 オーレリアさんは、ユイナちゃんに舞台道具を破壊されて、その罰として荷物を運ばせていたところ――。

 ユイナちゃんが聖女ユイリア様であることが露呈して――。

 顔面蒼白になってしまっていた先輩だ。

 いいことあったね!

 おめでとう!


 というわけで。

 これにて。

 学院祭は本当に終了した。


 この後は、現生徒会の解散が告げられて――。

 新生徒会の紹介となった。


 お兄さまが改めてマイクを手に取って、最後の挨拶をする。


「皆、今まで世話になった。俺は、2年から5年までの間、長く生徒会長を務めてきたが――。皆の協力のお陰で、こうして問題なく、無事に任期の満了を迎えることができた。ここからは妹のアリーシャに生徒会を任せる。皆、これまで通りに協力してやってほしい。学院の益々の発展を期待する」


 万雷の拍手が大講堂を包んだ。

 私も拍手した。


 拍手の中、アリーシャお姉さまがステージに上がった。

 お兄さまからマイクを受け取る。


「皆さま、ごきげんよう。アリーシャ・エルド・グレイア・バスティールです。明日よりわたくしが生徒会長となります。新生徒会では、今年の武闘会でも実行委員として活躍したローゼントとモルドの両名を始め、昨今、何かと話題になることも多いわたくしの妹セラフィーヌも加わり、お兄さまの時代と同じように――。いいえ、より賑やかに明るく、皆さまの学院生活を支えていきたいと思います。よろしくお願いいたしますわね」


 わー。

 ぱちぱちぱち。


 新生徒会長を私たちは万雷の拍手で迎えた。


 おわって――。

 また、始まる。


 こうして、あっさりと言えばあっさり、お兄さまは引退した。

 まあ、うん。

 べつに卒業するわけではないしね。

 しかも、皇太子たるお兄さまは、ここまでが人の上に立つ練習で、まさにこれからが本番だろうし。


 この後、私たちは教室に戻ってホームルームをした。

 今日の学校はそれでおしまい。

 まだ片付けが残っているクラスは午後も片付けだけど、私たちの屋台は午前の内に片付いたので。

 もっとも私は帰れない。

 みんなとは教室で別れて、1人、生徒会室に向かった。






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[気になる点] 祭りの後の寂しさかな。
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