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59 アリーシャお姉さまのお買い物




 3人の女の子は、今の私より少し年上に見える。

 中学生くらいかな。

 おそろいのブレザーとスカート姿からして、きっと学生さんだ。

 3人とも美少女で身だしなみも整っている。

 3人とも腰から細身の剣を下げていて、足はブーツで、お嬢様にしてはやや活発そうな印象もあるけど。

 なんにしてもお客さんだ。


「いらっしゃいませ」


 私は立ち上がっておじぎした。


「あらクウちゃん、そんな他人行儀な挨拶は不要ですわよ?」

「え。あ、お姉さま?」


 よく見れば正面にいたのはセラの姉、アリーシャ様だった。


「ふふ。お姉さまと呼んでくれるのね、嬉しいわ。ええ、貴女のお姉さまよ」


 やってしまった。

 セラとの会話でそう呼んでいたので、つい口が滑った。

 まあ、本人が認めてくれるならいいか。

 制服姿で帯剣したお姉さまは知的なだけでなく精悍で、まさにお姉さまだし。


「それで、あの、えっと。お姉さまはどうしてここに?」

「クウちゃんのお店を見に来ましたの」

「ありがとうございます」

「それにお礼もまだでしたし。最近は学院祭の打ち合わせに忙しく、一緒に夕食を取ることもできませんでした。クウちゃん、貴重な品をありがとうございました。大切にさせていただきますわね」


 お姉さまが指にはめたシルバーリングを私に見せてくれる。


「そう言ってもらえると嬉しいです」

「あと、紹介させてください。わたくしの友人でメイヴィスとブレンダです」


 2人がそれぞれに挨拶してくれる。


「ローゼント公爵家のメイヴィスと申します。お会いできて嬉しく思います」

「モルド辺境伯家のブレンダだ。よろしくな」


 どちらも貴族のご令嬢だった。

 私のことはアリーシャお姉さまが伝えた。


「彼女はクウ。とある事情で帝都にいますが遠国の王女です。今は、わたくしの妹同然の存在ですの。この子のことは、クウちゃんと気軽に呼んであげてください。その方がよいのですわよね、クウちゃん?」

「……えっと、はい。よろしくお願いします」


 設定とはいえ、王女と紹介されるのは恥ずかしい。

 どもってしまった。


「なあ、クウちゃん。ここの工房では武具の製作もしていると聞いたが、この犬が手にしている鉄剣はここの工房作なのか?」

「はい。そうです」


 ボーイッシュで活発そうなブレンダさんに聞かれて、私はうなずいた。


「手に取っていいか?」

「はい。どうぞ」


 お友達の2人は、ぬいぐるみよりも剣に興味津々だ。


「どう思う、メイ」

「かなりの業物ですね、これは……」


 スカートから伸びた足を見ても、2人が鍛えているのはわかる。

 しっかりと筋肉がついていた。

 とはいえメイヴィスさんは、穏やかそうで清楚で、剣よりも生花なんかが似合いそうな人だけど。


「それにしても――。わたくし、クウちゃんのお店は、冒険者を相手にした武具の工房だと思っていたのですけれど、可愛らしく仕上げましたわね」


 店内を見つつ、お姉さまが言う。


「はい。方向性をくいっと変えちゃいました。武器と防具も作りますけど、メインは可愛い小物のお店です」

「あの2人は自分に合った剣を探していて、丁度よいから連れてきましたの。よい剣があれば見せてあげてくれるかしら?」


 ……もちろん、常識の範疇でよ。

 と小声で釘を刺された。

 はい。


「どんな剣がいいかは戦闘スタイル次第だと思うので、なら一度、私の前で剣を振ってみてもらえますか?」


「そういえばクウちゃんは、セラフィーヌ殿下の剣術指南なんですよね? よければ打ち合いませんか?」

「お。いいねっ! 私もやるぞ」


 メイヴィスさんが提案すると、それにブレンダさんが乗ってきた。


「はい。いいですよ。なら見てあげます」


 私がうなずくと、ブレンダさんに口笛を吹かれた。


「上から目線とはいいねー。エルフなら、見た目が子供でも中身は別ってか?」

「彼女は見た目通りの年齢ですわよ。セラフィーヌのお友達ですし」


「本当の子供か。それで私らと打ち合えるのか?」

「そうですね。子供に怪我をさせては可哀想なのでやめておきますか」


「もちろんただの子供ではありませんわよ。クウちゃん、この2人に胸を貸すことに問題はありませんわね?」


 子供扱いされているけど、お姉さまは13歳のはずだ。

 2歳しか変わらない現実がここに。

 とはいえ、この年代の2歳差は大きいか。

 実際、すでにレディの雰囲気を持っているお姉さまたちと比べれば、私は可愛くて可憐なだけだ。


 何にしても打ち合いは問題ない。


「はい。平気です」


 私はうなずいた。


「ふふ。クウちゃんの強さに驚きますわよ」

「それは楽しみだ」

「腕が鳴りますね。今日の付き添いには水魔術師がいるので、保護をかけてもらって存分にやりあいましょう」


 このお嬢様たち、戦闘狂だ。

 いいね。

 とはいえ私は仕事中。


「すみません。私、お店の番があるので……。10分くらいでお願いします」

「10分あれば十分です」

「だな」


 お店から奥の工房に入って、工房のドアから庭に出た。

 最初に水魔術師の女性が呪文をかけてくれる。

 剣と体が保護膜に覆われた。

 これで打たれて平気とまではいかなくても、よほど本気で殺そうとしない限り、大怪我は避けられるそうだ。


「まずは1人ずつでお願いします」

「ではわたくしから」

「学院生の力を見せてやれ、メイ。私の分は気にしなくていいぞー」


 2人は女の子としては十分に強かった。

 貴族のお嬢様なのに、よくここまで鍛えたものだと感心した。

 10分後――。

 2人は精魂尽きてしゃがみこんだ。


「つ、つよいな……。おい……」

「手も足も出ないとは……。本当に子供ですか……」


 戦い自体は私の圧勝だった。

 途中から2人同時に相手をしたけど余裕を持って対応できた。


「ブレンダさんは見た目から想像できないくらいにパワーがあって驚きました。

 でも力を重視した戦い方と今の細い剣は合っていません。

 もっと重さを乗せることのできる大きな剣にしたほうがいいと思います。

 メイヴィスさんはスピードがあるのに、斬ると受けるの騎士みたいな戦い方をしていてよさを活かしきれていません。

 剣は細身のもののままでいいと思いますが、突きと払いを積極的に取り入れてみてはどうでしょうか」


 私の知識はあくまでゲームのものなので、果たしてこんな偉そうに言ってしまっていいのか迷ったけど。

 今のところ私は十分に戦えているし、剣を受けておいて言えることはありませんでは申し訳ないので所見として伝えた。


「クウちゃん、さすがですわね。2人を相手に息ひとつ切らさず、さらには2人の特徴をよく見てくれて」


 アリーシャお姉さまが褒めてくれた。


「それほどでもないです。見当違いだったらすみません」

「わたくしもブレンダはパワータイプ、メイヴィスはスピードタイプだと思うので見当違いということはないと思いますわ」

「2人に合うと私が思った剣、奥から取ってくるのでお待ち下さい」


 いったん工房に入って、ブレンダさんの体に合った大剣を生成。

 メイヴィスさんには、今使っているものより先端を鋭くした細身の剣を生成。

 どちらも鉄製の高品質。

 付与はつけない。

 価値が上がりすぎて余計な騒動になるだけだろうし。

 私は、かしこく学ぶ子なのだ。






お姉さま、某ウマ娘のメジロマックイーンみたいな

パクパクですわな口調にしたかったけど、なかなか難しかったですわ\(^o^)/


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[一言] >>私はかわいくて可憐で清楚なだけだ。 概ね同意だが、清楚?
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