588 一回戦、ブレンダvsマキシム!
こんにちは、クウちゃんさまです。
私は今、観客席から武闘会の応援をしております。
会場は盛り上がっています。
セラの戦い、熱かったです。
押し込まれて、もう駄目かなこれは――。
という刹那からの――。
光魔法による奇襲、逆転!
素晴らしい!
まさに光の魔法剣士ならではの戦いでした!
その後も熱い戦いは続き――。
そして、再び、私の知り合いの出番がやってきました。
大剣を担いだブレンダさんが試合場に姿を見せる。
ブレンダさんは現在、騎士科の3年生。
普通ならまだ観客席にいる側だけど――。
すでにブレンダさんの実力を疑う者はおらず、生徒たちからも大きな歓声で出迎えられていた。
対戦相手はマキシム先輩だ。
マキシム先輩は学院祭の前にうちのお店に剣を買いに来たお客さんだ。
たしか、騎士を目指しているんだけど成績的にギリギリで、この武闘会で活躍して評価を上げ、確実な仕官を狙っている。
となると――。
ブレンダさんが対戦相手というのは、ハッキリ言って不運だと思うけど――。
私のお店で、お友だちのブレンディ先輩と一緒に、打倒ブレンダ! 打倒メイヴィスを叫んでいたので――。
あるいは、望むところなのかも知れない。
試合場にマキシム先輩が上がった。
鉄の剣に鉄の盾。
多くの参加者と同じく、スタンダードな騎士のスタイルだ。
対するブレンダさんは、制服姿に大剣一本。
セラと同じく盾は持たない。
防御については割り切ったスタイルだ。
「ブレンダさーん! がんばれー! 強打だよー! 強打ー! マキシム先輩は慎重にねー! 見切って見切ってー!」
私は2人に声援を送った。
さあ――。
水の保護魔術がかけられて、試合が始まる。
マキシム先輩は盾を構える。
「うおらぁぁぁぁぁぁ!」
そんなものは知った事かと、ブレンダさんが豪快に大剣を振るった。
会場に、金属と金属のぶつかる大きな音が響いた。
おお。
ブレンダさんの強烈な一撃を、マキシム先輩が盾で受け切った!
とはいえ反撃には出て来ない。
防いだだけで精一杯の様子だ。
「へえ。やるねー」
ブレンダさんは余裕のある笑みを浮かべた。
「――こちらも負けられないのでね」
構え直した盾の向こう側から、マキシム先輩が応える。
正直なところ、私、最初の一撃でマキシム先輩が吹き飛ばされて、この試合は簡単に終わるとも思っていた。
なにしろブレンダさんの攻撃は強烈だ。
大型の魔物でさえ一撃で切り裂く。
対人戦でも、踏み込んで大剣を振り回すその一撃は、攻撃の有効範囲が広くてかなり回避し辛い。
マキシム先輩は、その後もブレンダさんの強打を盾で受け切った。
よく訓練された動きだった。
ブレンダさん対策を、ちゃんと練ってきているのだろう。
たぶん、ブレンダさんに攻撃させて、攻撃させて――。
疲れて動きの弱まったところで――。
反撃に出る――。
そういう作戦なのだろう。
ブレンダさんの性格を考えても、それは適切な作戦だ。
ブレンダさんの肉体は魔力で強化されている。
並の男なんて、軽々とぶっ飛ばせる。
でも、並以上に鍛えられた騎士志願の男が、全力で盾を構えていれば――。
そう簡単にはぶっ飛ばせないようだ。
――普通なら。
動きを止めたブレンダさんが、細く息を吐いて精神集中する。
防御に徹するマキシム先輩は、今こそ、攻勢のチャンスだったけど――。
私にはそう見えたけど――。
盾をしっかりと構えたまま、慎重に様子を見続けた。
その判断が、勝敗を分けた。
ブレンダさんが叫ぶ。
「武技! ダブルスラッシュ!」
「――くっ! なっ!?」
閃光のようにきらめいた大剣が、瞬時に左右から襲いかかって、マキシム先輩の盾を弾き飛ばす。
顕になった体に、ブレンダさんが正面から蹴りを入れた。
マキシム先輩は耐えようとしたが――。
膝をついてしまった。
そこにピタリと、ブレンダさんがマキシム先輩の肩に刃を当てた。
決着だ。
勝利を宣言されて、ブレンダさんが大剣を掲げる。
会場が沸き立つ。
だけど、生徒席の一部では、戸惑いのような声も生まれた。
騎士科の生徒たちだ。
彼らはたぶん、初めて武技を見たのだ。
それはマキシム先輩も同じようだった。
負けた後、ふらふらと立ち上がって――。
ブレンダさんに話しかける。
たぶん、今の技はなんだったのか、と、聞いているのだろう。
ブレンダさんはニヤリと笑って、何か言った。
「必殺技さ」
と、カッコつけて言っているようにも見えたけど、歓声の中、その声は私の耳にまでは届かなかった。
肩をすくめ、マキシム先輩が退場する。
負けてしまったけど、騎士になる夢は捨てずに頑張ってほしいものだ。
そう――。
ブレンダさんとメイヴィスさんは、武技を習得した。
まだひとつだけ、ダブルスラッシュしかできないし、発動の成功率は50%にも満たないけど。
本番で使って、見事に成功させて――。
勝負強いね。
本当に大したものだ。




