585 武闘会!
さあ、いよいよ学院祭2日目のメインイベント。
武闘会の時間が来た。
私はクラスメイトのアヤやエカテリーナさんと一緒に、生徒用の観客席から試合を応援する。
コロセウムには一般観客席と貴賓席もあって、ユイナちゃんとマリエは一般観客席に無事に入れたようだ。
貴賓席にはローゼントさんや、その他の貴族の姿がある。
ゼノとリトは姿を消して空の上にいる。
ゼノが、見学ついでに警備してくれるというので、ありがたくお願いした。
リトは、うん……。
ゼノに警備なんて出来るのかとまたも煽ってきたので、一緒に警備しろと空の上に放り投げた。
「エカテリーナさん、接客、頑張ってたねー」
私は横に座る、うさぎコスプレ姿のエカテリーナさんに話しかける。
「正直、どうなるか不安でしたけど、やればできるものですね」
「ちらっと見たけど、人気だったねー」
「我ながら、それなりに集客できた自信はあります」
「私は頑張って焼いたよっ!」
こちらもうさぎコスプレ姿のアヤが、むんっと笑顔で腕に力を込めた。
「タタくんは来た?」
「もー! クウちゃーん!」
「あれ、来なかったんだ?」
「来たよ……。美味しいって言ってくれた」
「へー。よかったねー」
「さすがは店長さんのバーガーって、クウちゃんを褒めてたけどねっ!」
「あはは」
それはごめんよ。
「でも、いいお客さんばかりで楽しかったよー」
「そうですね。良い経験になりました」
おしゃべりしていると、試合場に生徒会の役員が出てきた。
武闘会運営委員長のメイヴィスさんだ。
「みなさん、お待たせしました。これより本年度の武闘会を開催します」
メイヴィスさんが、マイクごしに宣言する。
予定では、最初に私がソードとして演舞することになっていたけど、それは最後に回された。
選手一同が舞台に上がって、第一回戦の対戦カードが紹介される。
対戦の抽選は、直前に行われる。
つい先程、決まったばかりのはずだ。
さあ。
セラは誰と戦うのかなー。
私は注目して、セラの登場を待った。
武闘会の参加者は32名。
大会形式はトーナメント、すなわち勝ち抜き戦だ。
今日の午後だけで全試合を行うので、試合はさくさくと進行する。
試合時間は3分。
判定の場合は騎士科の先生方の得票で決まる。
決勝と準決勝では延長戦も行われる。
参加者は、ほぼ全員、騎士科の4年生と5年生。
基本、武闘会には学院の生徒なら誰でも参加できる。
私達普通科1年生のクラスにも、参加申込みの話は来た。
だけど全員が本戦に出られるわけではない。
定員オーバーすれば、事前に予選会が行われるのだ。
もっとも、武闘会への参加には暗黙のルールがある。
参加するのは騎士科の4年生と5年生、しかも成績優秀者というのが基本で、成績下位者や下級生や他の学科の生徒が出ようと思えば、予選会以前に、強い風当たりを覚悟する必要がある。
ちなみに獅子男のギザ・ロ・ザナドくんは、1年生ながらも堂々と参加を表明していたけど……。
参加は辞退して、今では立派なメイヴィスさんの子分の1人だ。
レオは出なくてよかったと思うね、ホント。
「あ、クウちゃん。セラフィーヌ様だよ」
「ホントだっ!」
セラが出てきた。
セラは、参加者の中でもひときわに小柄なので逆に目立つ。
対戦相手は――。
騎士科の4年生のようだ。
私の知らない顔だけど、鍛えられた体をしている。
普通に見れば、セラなんて、軽く一撃で吹き飛ばされてしまいそうだ。
この武闘会の結果にスオナとの対話を賭けたガイドルも出てきた。
対戦相手は、こちらは騎士科の5年生のようだ。
ガイドルは普通科の5年生。
同学年だけど、対戦相手の方が明らかに立派な筋肉をしている。
騎士科の生徒は、みんな、しっかりと鍛錬に励んでいるようだ。
ガイドルには頑張ってほしいけど、対戦相手の子にも日頃の訓練の成果を遺憾なく発揮してほしいものだ。
アンジェにデートを申し込んだブレンディ先輩は……。
はい。
対戦相手、メイヴィスさんだね……。
さらば……。
もう1人のマキシム先輩はブレンダさんと戦うようだ。
2人とも運がなかったね……。
いや、まだ決まったわけではないか!
頑張ってもらおう!
で――。
私が学院最強と見ているウェイスさんは貴賓席にいた。
お兄さまの横に座っている。
うん。
ウェイスさんは武闘会には出ない。
なんか、カッコつけた、いかにもな理由はあったけど――。
私は知っている。
メイヴィスさんやブレンダさんに負けて、婚約者として兄としての威厳を失いたくなかったので逃げたのだ!




