570 学院祭初日!
おはようございます、クウちゃんさまです。
今日は6月の15日。
学院祭の初日です。
天気は晴れ時々曇り。
気温は涼しげ。
とてもよい1日になりそうです。
さて。
ヒオリさんと手早く朝食を済ませて、私はすぐに家を出た。
まずは転移の魔法でユイの家に行く。
「おはよう、クウ。どうかな、私のユイナちゃん?」
「うん。いいねー。お忍びアイドルみたい」
「でしょー。それ、思いっきりイメージしてみたんだー」
髪をしばって帽子をかぶってメガネをかけて、地味なワンピースを着たユイは、いかにも普通の子に見えた。
あとは光のオーラさえ消しておけば、町を歩いても平気だろう。
リトは、姿を消してついてくるそうだ。
ユイもたまには普通の女の子と普通に遊ぶべきだと偉そうに言っていた。
ユイことユイナちゃんと合流した後は、そのままマリエの家に向かう。
マリエはすでに待っていてくれた。
お。
今回はお父さんとお母さんも出迎えに現れてくれた。
「こんにちは、はじめまして。マリエちゃんの友達でユイナって言います」
ユイナちゃんが丁寧にお辞儀する。
すると、マリエのお父さんとお母さんが珍しく普通に会話してくれた。
「はははっ! 礼儀正しいいい子だね。楽しんで来るといいよ」
「くれぐれも、お貴族様にぶつかったりしないようにね? ぶつかりでもしたら何をされるかわかりませんよ」
「はははっ! うちのマリエが一緒なのだ、心配しなくても大丈夫さ。でもお貴族様は怒らせると怖いからね。ちゃんと前を見て歩くんだよ」
マリエの家って歴史ある貴族家だったよね。
まあ、いいけど。
「任せてっ! お母さん直伝の技で、ちゃんと気をつけるから。私、絶対に人にぶつかったりなんてしないんだからねっ!」
フラグ回収が捗りそうなセリフだけど、まあ、いいか。
私は気にしない。
「じゃあ、あとはよろしくね」
ユイナちゃんとマリエは、学院祭の始まる時間まで帝都の散策だ。
私は準備があるので、もう行かねば。
というわけで。
学校に行って、教室に入った。
すでに多くの生徒が来ていて、準備を進めていた。
「おはよー、みんなー」
「おはよう。早速だけど、クウちゃんは更衣室に行ってもらえる? そっちに今日の衣装があるから」
「了解」
私は最初から屋台に立つ。
明日、多めに休みをもらうので、その分、今日頑張るのだ。
早速、更衣室で着替えた。
うさぎをイメージした白いワンピースだ。
お尻の部分には丸い尻尾、胸元にはピンクのリボンが飾られている。
頭には、ぴょんと跳ねたうさぎのカチューシャをつけた。
なかなかに可愛い。
みんな、頑張って作ったものだ。
「うーむ。さすがはクウちゃん、バッチリ似合いますな」
「クウちゃん、ちょっと回ってみてー」
「うんー。こうー?」
くるっと回ってあげた。
わっと衣装チームの子たちに喜ばれた。
教室に戻ると、レオたち何人かの男子も着替えを終えていた。
まさかのタキシード姿だ。
なのに頭には、うさ耳のカチューシャをつけている。
アンバランスと言えばアンバランスだけど、これはこれで似合っている気もするのが不思議だ。
「最初が肝心だからな! みんな、気合入れろよ!」
レオが早速、気勢を上げていた。
「張り切ってるねー」
「クウも今日は頼むぞ! 最初から全力で売りまくるからな!」
「任せてー。焼きまくってあげるからー」
「よーし! 行くぞー!」
「おー」
レオに続いて、最初の班が出陣する。
ちなみにレオ率いる最初の班は、私とレオを含めて8名だ。
女の子3人でハンバーガーを作って男の子たちが接客する。
正直、逆の方がいいような気はするけど、とにかくレオたち男子が目立ちたがるのでこうなっていた。
中庭に出ると、評価勝負をすることになっているクロード率いる1クラスの子たちもすでに来ていた。
1クラスがやるのはクレープ屋。
実にお洒落で可愛らしいお店だ。
1クラスの方は、男子が調理を担当して、女子が接客のようだ。
男子はエプロン姿。
女子は、パステルカラーのメイドさん姿だった。
「よーし、さっそくやりますかー」
私たち女子組は屋台に入って、早速、セッティングを始める。
簡易冷蔵庫に入っている加工済みのピクルスとオニオン、パティとケチャップを確認して並べる場所を決めておく。
シャルレーン商会の人が届けてくれたバンズも、ばっちり大量だ。
バーガーを包むための紙もオーケー。
忘れ物は……。
ない、と思う。
私は魔石をセットして、鉄板にちゃんと火が入ることも確かめる。
うん。
魔道具に問題はなし。
レオたち男子は看板を設置した後、準備運動を始めた。
今日はたっぷり動く気のようだ。
そこに1クラスの屋台からクロードがやってきた。
「よう、レオ。なんだ、おまえんとこ、女子が裏方なのか? まさかおまえが接客するわけではないよな?」
「はぁ!? なんか文句あるのかよ!」
「いや、文句はないが」
うわあ。
文句はないと言いつつ、思いっきり鼻で笑っている。
「見てろよ、テメェ。ハッピーラビットをバカウケさせて、てめぇんとこなんぞ閑古鳥を鳴かせてやるからな」
「うちのクラスの女子は、今日のためにメイド研修を積んできたのだ。接客はすでに完璧なのだが?」
なんて本気な。
うちのクラスは、そこまではやっていない。
「ふんっ! 知るかっ! 俺達のダンディが、メイドなんかに負けるかよ!」
「はは。だと良いな」
ひらひらと手を振って、クロードは自分の屋台に戻った。
私は少し不安を覚える。
準備万端の相手に対してレオは勢いだけだ。
まあ、うん。
それは、今さらか。
私はひたすらに、鉄板の上でパティとバンズを焼こう。




