559 ユイナちゃん
「え? 普通に行きたいけど? なんでソード様が行って、私はダメなの?」
「そりゃダメだよね?」
「どうして?」
「だって、ユイちゃんだし」
「なら私、その日はユイナちゃんになる。それならいいよね」
というわけで。
お兄さまと生徒会室でおしゃべりした、その日の夜。
私は早速、ユイの家に来たのだけど。
ユイはなんと、ユイナちゃんになって学院祭に来ると言い出した。
「ソード様がいるなら、私は安全だよね?」
「ソード様はユイナちゃん関係ないよね?」
「どうして?」
「だって、ユイナちゃんだし」
「なるほど」
ユイは納得してくれたようだ。
と思ったら、みるみる涙目になって……。
泣き始めた。
「うえーん! 私もたまには普通の女の子みたいに遊びたいよー! なんとかしてよクウえもーん!」
「はぁ。もう。当日は悪魔の攻撃があるかも知れないんだよ」
「それで私がダメなら、人類のほとんどがダメでしょー!」
「まあ、それはそうか。じゃあ、とりあえず、陛下に聞いてみるよ。オーケーならお忍びでってことで」
「わーい! やったー! 変装用の服、どうしようかなー」
まあ、どうせリトもついてくるのだ。
危険なことはないだろう。
というわけで。
私は『帰還』して、大庭園の願いの泉に出た。
もう夜だけど、まだ遅い時間ではない。
起きていることだろう。
私は顔パスで大宮殿に入ると、ご要件はと近づいてきた老年の執事さんに陛下に急用がある旨を伝えた。
陛下には、すぐに会えることとなった。
食堂で面会する。
皇妃様とアリーシャお姉さま、お兄さまもいた。
早速、ユイナちゃんのことを話した。
「結局、来るのか」
お兄さまは頭を抱えた。
「ダメならダメで断っていただければ……。伝えますけど……」
「いや、問題ないと伝えてくれ」
陛下が言った。
「いいんですか?」
「合わせて、非公式に夕食をどうかと頼んでみてくれ」
「どうしてまた……?」
「先日の、セラフィーヌに医学の知識を教える件だ。あれから検討したが、やはり是非とも教えを請いたいと思ってな。帝国の将来にとって、極めて有益となることは疑いもない話だ」
「そういうことならいいですよ。わかりました」
「クウ、夕食にはおまえも来てくれよ」
「私もですか?」
「まさか聖女1人だけを招くわけには行くまい。おまえも一緒なら安心してもらえるだろう?」
「まあ、それはそうですね。わかりました」
セラのためにもなることだ。
一肌脱いであげよう。
ここでお兄さまが言う。
「しかし、父上……。いくら変装するとは言っても、学院を1人で歩き回らせるわけには……」
「それならばわたくしが付きましょうか?」
お姉さまが立候補すると、皇妃様が首を横に振った。
「アリーシャでは目立ちすぎます。すぐに、あれはどこの誰だ、と、噂されることになります。もっと目立たず、それこそ空気のような。それでいて信頼でき、できれば事情をわかっている者でないと」
「マリエですね」
私は即答した。
「ああ、例の審判者の少女か。それはいいな」
「そうですね。あの子なら聖女ユイリアとも親しいですし」
陛下と皇妃様も同意してくれた。
というわけで。
翌日の朝。
「おっはよー! マリエー!」
「クウちゃん!?」
マリエの家である映像屋ハロの前で待ち構えて、学校に行こうと家から出てきたマリエを捕まえた。
「マリエ、久しぶりだねー」
「本当だねー」
マリエとは、学院に入学してから一度も会っていなかった。
約2ヶ月ぶりだ。
「元気だった?」
「私は元気だよー。クウちゃんも元気そうだねー」
「うん。元気元気ー」
「元気があれば、なんでも出来るっ!」
「うんうんっ!」
2人で笑いあった。
「……で、クウちゃん、今日は朝から、いきなりどうしたの?」
「ごめんね。迷惑だった?」
「ううん。そんなことはないよっ!」
「実は今度、ユイがお忍びで帝都に来ることになってね」
「へー。そうなんだー」
「マリエが付き添いをすることに決まったから、よろしくね。夜は陛下たちと夕食になるから夜の時間も空けておいて」
「え?」
「帝都中央学院の学院祭ね」
「え? あのお……」
「はい、これ。学院祭の招待状ね。じゃあ、そういうことで! ごめんね朝から慌ただしくて! またねー!」
私も今日は学校なのだ。
あまりのんびりとはしていられない。
要件だけ伝えて、私は空に飛んだ。
下からマリエの呼び声が聞こえなくもないけど、まあ、いいよね。
もう決まったことだし。
ユイナちゃんとマリエは、きっと暴れてくれる\(^o^)/
気がします(未定)\(^o^)/




