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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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539 ナオとおしゃべり




 こんにちは、クウちゃんさまです。

 私は今、ナオが将軍を務める獣人軍の砦に来ています。

 ナオとは久々の再会でしたが、なんか戦っていたので、私もソード様に扮して混ぜてもらいました。

 ナオは、びっくりするほど強くなっていました。

 さすがにまだ、私が本気で相手をするほどではないけど――。

 まさに世界に選ばれし勇者でした。


 そして、今――。


 眼の前では、ゼノが獣人軍の兵士を相手に無双中。

 ものすごく楽しそうに、兵士達を打ちのめしまくっています。

 まあ、うん。

 別に殺しているわけじゃないし……。

 いい訓練になるよね!

 気にしないでおこう!


 というわけで、私とナオは広場の隅に下がった。

 ゼノ無双を見ながらおしゃべりする。


「ナオ、強くなったね。驚いたよ」

「ありがとう。必死に修行した」

「魔法も使えるようになったんだね」


 少なくとも身体強化は完璧だった。


「うん。ユイの言葉を思い出して、ゲームの魔法の再現を頑張った。もうそれなりには使える」

「ホント、すごいねっ!」

「クウは、今日は聖国の――ユイの使者として来たの?」

「どうして?」


 違うけど。


「だって、聖国のソードを名乗った」

「ああ。それは、うん。テキトーに正体を隠しとこうかなーと思って。べつに深い意味はないよ?」

「意味がありすぎて困る。誰がどう見ても使者」

「あはは。それよりもさ、今日は実は、朗報を持ってきたんだよ」


 私は早速、リトとの出来事を伝えた。


「戦争をしなくて済むなら嬉しい。ありがとう、クウ」

「……みんな、すごい戦争したがってるよね。しないで済みそう?」


 それは砦の空気でわかる。

 もうなんというか、戦意が満ちているし。


「少なくとも私は、獣人国を取り戻せるならそれでいい。幸いにも、獣人は血統を大切にする。それに、強さでも上下関係を決めたがる。私が強ければ、言うことは聞いてくれる」


 ナオは今まで懸命に、血気に逸る仲間達を抑えてきたようだ。


 なにしろ獣人達は放っておけば、それぞれ勝手に同族で徒党を組んで人族の集落へ襲撃をかけようとする。

 軍隊としては、統率も何もあったものではなかった。

 まずは軍としての形を作る必要があった。

 でないと結局、連戦連勝しているはずが、いつの間にか追い詰められて敗北という結果になりかねない。


 あとは、悪魔の問題もある。

 相手には悪魔がついている。

 だから、どんな手段を使ってくるのかわからない。

 故に、まずは相手に攻めさせて、相手の手札を見てから確実に攻めよう。

 と、みんなを説得してきたそうだ。


 その前提は、崩れたわけではない。

 なにしろ悪魔の消息は、依然として不明のままだ。


 でもこれから状況は大きく変わる。


「ナオ様!」


 話していると、文官らしき男の人が息を切らせて走ってきた。

 急報のようだ。

 私の姿を見て言葉を噤むけど、ナオが構わないと言うと、言葉を続けた。


「実は――。トリスティン王国の第一王子を名乗るリバースなる者が、ナオ様との面会を求めて来ております。

 旧獣王国領の――。返還についての交渉がしたいと」


 今まさに、状況は動くようだ。


「あーそうだ」


 忘れていた。


 私はナオの腕を引っ張って、文官から距離を取って耳打ちした。

 実は王子の性格も入れ替えていたんだった。

 あと私は王子の顔を知っている。

 なので私も同行することにした。


 面会は、すぐに行われた。


 王子は本物のようだ。

 怪しい気配もない。


 王子は必死になって、旧ド・ミ国を領有していた貴族の了解が得られ、返還の準備が整ったことを伝えた。

 そして、返還を以て、両国の関係を昔のものに戻したいと。

 また、トリスティン領への侵攻はやめてほしいと。


 ナオは即答を避けた。


 私は黙って聞いていた。


 ただ、そちらにいるのは聖国のソードかと王子には聞かれた。

 私はうなずいた。


「王子と会うのは二度目か。心を入れ替えたようで何よりだ」

「ああ……。私は恥ずかしながら目覚めたのだ。何故今まで、憎み、怒ることばかりをしてきたのか。今後は誠意を以て行動していこうと思う。どうか獣人の皆様には穏便に事を収めて欲しい」


 私は返答をしなかった。

 私がどうこう言える問題ではないし。


 騒動は絶対に起こるだろう。


 領土が返っても、積年の恨みが消えるわけではない。


 でも、最低限で済めばいいとは思う。


 昔のように共存できれば、それが一番だろう。


 王子との面会はおわった。

 歓迎会等はしない。

 王子にはそのままご帰還をいただいた。


 ただ連絡用に、トリスティンの文官が1人、砦に残ることになった。

 私は念の為、念入りにその文官をチェックした。

 魔力反応はない。

 悪魔が化けていることはなさそうだった。

 危険な呪具も所持していない。

 どこからみても普通の人間だったので、オーケーとした。


 私はナオと2人、広場に戻った。


 すると広場では、獣人兵達を倒し尽くしたゼノが高笑いをしていた。

 本当に楽しそうだ。


 広場には、何故か、見知った竜の人もいた。

 エリカのところにメイドとして出て行ったはずの、エンナージスさんだ。

 ナオが教えてくれる。

 今は、ジルドリアからの特使として砦に滞在しているらしい。

 ド・ミ国復興に先駆けて、復興後の取り決め事を、ナオを始めとした文官勢とまとめているのだそうだ。


「ゼノ様、お疲れ様でした。どうぞ、一休みして下さい」


 エンナージスさんがゼノにタオルを水を渡す。


「うん。ありがとう! いやー、久しぶりに動いたから気持ちいいよ!」


 忘れがちだけど、ゼノは闇の大精霊。

 竜から見ても敬うべき存在だったね。


 私たちは4人で部屋に入って、軽くお茶を飲むことにした。

 互いの近況を話す。

 ナオが聞きたがるので、私は学院生活のことを話した。


「羨ましい」


 ナオがしみじみという。


「あはは……。ナオも平和になったら、通えるといいね、学校。なんなら学院祭にでも遊びに来る?」

「ううん。今は行けない。私だけ楽しむわけにはいかない」

「そかー」

「平和になったら、ぜひお願い」

「うん。そうだね」


 ナオの七難八苦は、一体、どこまで続くのだろうか。

 それはわからないけど……。

 国を取り戻して終わってくれればいいと思う。

 転生の時に願った七難八苦のたどり着く先は、祖国復興だったはずだし。


 結局、この日。


 ナオは一度もギャグを言わなかった。

 キタイもしてくれなかった。


 キタイ・キタイ。

 キタイ・キタイ。


 ……してほしかったわけではないけどねっ!






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― 新着の感想 ―
[一言] 落ち着いたらナオが学院に遊びにですかナオ一人って訳にはいかないですよね・・・ユイも着いて行きそうな(笑)
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