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529 クウちゃん、勉強す!





 翌朝、アヤがおそるおそる私にたずねてきた。


「クウちゃん。昨日って大丈夫だったの……?」

「平気だったよー」

「クウちゃんって、ホントに知り合いだったんだね……」

「そだねー」

「……なんの用だったの?」


 騒がしかった教室が妙に静かだ。

 昨日は何も聞かれなかったけど、みんな、知りたかったのか。


「学院祭の時、変な魔道具を悪意ある人に使われないようにするには、どうしたらいいのかって相談を受けてねー」

「クウちゃんが?」

「私、魔道具には詳しいしね」

「あー、そっかー! ふわふわ工房の家の子だもんね、クウちゃんって」

「家の子っていうか、私のお店なんだけどね」

「そうなの?」

「私が工房主だよー。学校とお店で大変なんだよー」

「もしかして、魔道具を作れたりするの!?」

「作れるよー」

「すごいんだねっ! 天才!?」

「あはは」

「でも、じゃあ、なんで、勉強があんまりできないの? 魔道具を作る時って勉強の知識はいらないの?」


 アヤに本気で不思議そうに聞かれた。


「そだねー。普通ならいるよねー」


 たぶん。

 よく知らないけど。


「特別な作り方なんだ?」

「うん」

「すごいんだねっ! それってもしかして、異国の技術!?」

「そだよー」


 なんてことを話していると、先生が来た。

 今日も授業が始まる。

 今日も私は勉強に苦戦した。


 休み時間。


 エカテリーナさんがやってきて、私を廊下に連れ出した。

 用件はわかる。

 セラのことが聞きたいのだろう。

 私はことのあらましを教えてあげた。


「――と、いうわけなんだよ。ごめんね。巻き込んじゃって」

「いいえ、とんでもないっ! これで合点がいきました。マイヤさんとの関わりがあればこそ、私は殿下のお茶会に誘われたのですね。それにしても、最初から教えてくれればよかったのに」

「最初は言いたくなかったんだよー」

「しかし、そうであれば、私も頑張らねばなりませんね」

「うん。がんばってー」

「何を言っているのですか、マイヤさんもですよ?」

「私?」

「そうです。異国の王女であり帝室の方とも親しい貴女が現状に甘んじていてはそれこそ私の恥です。さあ、教室に戻りますよ。今日の授業は、ちゃんと理解できましたか? 確かめて差し上げます」

「あ、私、そういうのはいいんで」


 いや、ホントに。


「駄目です」


 エカテリーナさんに手を取られて、私は教室に連れ戻された。

 椅子に座らされて、教科書を広げられる。

 なんて強引な!


 そんなこんなで日は過ぎて――。


 結果としては……。


 おかげさまで、とりあえず授業には追いつきました。


 もしもこれが、ヒオリさんやセラみたいに慣れ親しんだ相手だったら、なんだかんだ断って逃げちゃう私だけど……。

 エカテリーナさんや一般の先生相手だと、逃げ切れませんでした。


 エカテリーナさんは、私の素性がバレていない時からでも、私に勉強を教えると言っていたし……。

 まあ、自分の成果のためだと公言はしていたけど……。

 それでも善意だしね……断りづらい。


 先生も同じだ。

 わざわざ放課後に付き合ってくれるとは……。


 ありがとうございましたっ!

 と言っておこう。


 私は、貴重な休み時間と放課後と休日を守るため、頑張って授業を受けるようになりました。

 もう遅れを取ることはないだろう、たぶん。

 入学して一ヶ月でこんな目に遭うとは思ってもいなかったけど……。

 逆に、早めの対処で助かった。

 傷は浅かった。

 めでたしめでたし、なのでありました。


 ちなみにお兄さまが来たことで、一旦は、再び距離を取られてしまったクラスの子たちとの関係も――。

 そんなこんなで私が休み時間に醜態を晒して、アヤとエカテリーナさんに生徒扱いされている内――。

 まずは、エカテリーナさんに近い女の子たちと――。

 そして全体的に――。

 自然と、それなりには回復した。


「クウちゃんさまー、今の授業はちゃんと理解できましたかー?」

「泣いて頼むなら教えてさしあげますよー?」


「誰が頼むかっ! ちゃんと理解したわっ!」


 はい。


 男子連中にも、また、からかわれるようになりました。

 微妙に丁寧語なのが癪に障りますね!


 まあ、いいけど。


 見て見ぬフリばかりされるよりも、よほど私的にはやりやすいのだ。


 ちなみに学院祭。


 クラスの出し物は屋台をやろうということで決まった。

 バーガー屋だ。

 いいよね、バーガー!

 帝都の新しい名物を作るつもりで頑張ろう!


 ちなみに私が提案したわけではない。


 提案したのは、クラスでも地味な男の子だった。

 私は名前も知らなかった。

 からかってくる男子の名前と顔はとっくに覚えたけど、そうでない子とは接点がないしね。同じクラスにいても。

 なんでも、姉がバーガー屋をやっていて、バーガーなら材料や機材の調達が簡単にできるそうだ。


 文化祭で何をやるかについては他にも色々と案が出ていたけど、具体性という点でバーガー屋がリードして、多数決の結果、決まった。


「では、シャルレーン君の意見を採用して、5クラスではハンバーガーの屋台を開くことにします。次のクラス時間からは、具体的にどんなお店にするのかを皆で考えて行きましょう」


 先生が言った。

 それで私は、彼がシャルレーン君だと知った。


 シャルレーン……。


 お姉さんが、バーガー屋……。


 私は、すぐにはピンと来なかったけど……。

 とてもとても頭に引っかかった。

 とてとてだ。


 んー。


 誰だったかなぁ……。


 とりあえず、シャルレーン君に聞いてみることにした。






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あ、バーガーキ○グ....
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