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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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500/1361

500 クウちゃんさまvs算学





 入試は1日がかりで行われる。

 午前中は筆記試験。

 算学、語学、社会学、自然学。

 4科目で行われる。

 筆記試験の内容は、どの学科を志望してもこの4科目で、みんな同じ会場で受けることになる。


 私は正直、社会学と自然学はほとんどわからない。

 歴史に一般常識、地理に理科。

 昔、ギザス王国が世界征服を目論んで自滅して……とか。

 精霊にお祈りする言葉……とか。

 城郭都市アーレが帝都ファナスとザニデア山脈の中間くらいにあって……とか。

 薬草の見分け方……とか。

 自分で経験してきた範囲のことならば理解できる。

 ナティ先生が熱心に優しく繰り返して教えてくれた授業の内容は……。

 結局、頭の中に残らなかった。

 まるで川の水のように、流れていって、消えた。

 ごめんなさい。


 しかし!


 算学と語学はイケる。


 私の語学はチートだ。

 こちらの世界に来た時から、会話も読み書きも自由自在だった。

 すらすらだ。

 文字も綺麗に書ける。

 なのであとは、私の読解力次第!


 算学は、ただいま試験中。

 問題は、3分の2がストレートな計算問題だった。


 4547+1345=

 6543-2149=

 320x51=

 696÷12=


 こんな感じだ。

 正直、パッと見るだけではさっぱりわからないけど、ちゃんと式を書いて計算すれば私にも解くことは出来た。

 ただ、問題数が多い。

 しかも計算問題の後には、高い得点のついた図形問題と文章問題があった。


 真剣にやるのであれば――。

 高得点を狙うのであれば――。

 挑まねばならない難敵だ。


 いかに計算問題を素早く終え、図形問題と文章問題にじっくり挑むだけの時間を作ることができるか――。

 そこが勝負の分かれ目だ。


 私は考える。

 割り算は時間がかかる。

 いっそ捨てるべきか――。

 いや、しかし。

 割り算なら、時間さえかければ、確実に解くことは出来る。

 詰まることはない。

 逆に図形問題と文章問題は、解けない可能性がある。

 散々に時間をかけた挙げ句――。

 わかりませんでしたぁぁぁぁ!

 では目も当てられない。


 どうすべきか――。


 私は迷い、結局、計算問題はすべて解くことを決めた。

 その思考時間、わずか数秒。

 私の集中力は加速されていた!

 自分でもわかる。

 研ぎ澄まされていくのが!


 そして――。


 終了のチャイムは鳴った。


 テスト用紙が回収されていく。


 やがて、テスト用紙を手に、試験官が部屋を出ていく。


 ドアが開いて、閉じた。


 そこでようやく、教室の緊迫した空気が、ふわりと開放されたのを感じた。


 私は天を仰いだ。


 見えるのは、教室の天井――。


 私は燃え尽きた。


 正直、図形問題はかなり危ういけど、あとはそれなりに解けた。


 確信はない。


 あくまで、それなりだけど――。


 うん。


 私、全力を尽くしました。


 なんだろう。


 気楽に受け流すつもりだったのに、いざ始まってみると、場の真剣な空気に思いきり感化されたみたいだ。


 セラは、どうだっただろうか……。


 斜め前の席にいるセラは、早くも何人かの受験生に囲まれていた。

 私が話しかけていい雰囲気ではない。

 貴族の子弟たちが、セラに挨拶をしているのだ。

 1人ずつ、順番に自己紹介していく。

 みんな礼儀正しい。

 ちらりと振り向いたセラが、困ったような助けを求めるような視線を送ってくるけど私は無言のまま笑顔で答えた。

 がんばれ。


 まあ、うん。


 休み時間とはいえ、入学試験の最中に挨拶はどうかと思うけど……。


 セラは結局、お茶会とか開かなかったしね……。

 同年代の貴族とは、まるで面識を持とうとしなかったんだよね……。

 なにを話していいのかわからないとか言って。

 私とばかり遊んでいたし。

 みんな、ずっと、セラと面識を持ちたかったんだろうねえ……。


 ちなみに教室にテキストやノートの持ち込みは禁止されている。

 なので、知り合いのいる受験生たちは、集まって雑談をしたりもしている。


 休み時間の教室はそれなりに賑やかだ。


 私は寝てようかなぁ……。


 頑張りすぎて、すでにぐったりと疲れた。


 あくびが出てしまいます。


 と――。


 あくびの途中で、となりにいる女の子と目が合った。


 エルフの女の子だ。

 耳が長くて、髪の色は透き通ったグリーン。

 地方から来たのだろうか。

 帝都ではあまり見ない、ヒオリさんの旅装束に似た、なんとなく和服ちっくな衣服を身に着けている。


 休み時間なのに背筋をぴしっと伸ばして、綺麗に座っている。

 休み時間なのに、すごく緊張感があった。


「テスト、疲れたねー。まだ最初だけど」


 私は笑いかけた。


 すると女の子が、ぴくりとも笑うことなく、冷たい眼差しを向けつつ、冷たい声でこう言った。


「話しかけないで下さい。一緒に見られるのは迷惑です」


 …………。

 ……。


 ふむ。


 私、あれか。


 一緒に見られたくない子か。


 まあ、うん。


 みっともなく、人前で大きなあくびしていたしね。


 まあ、いいか。


 私は大人なので、これくらいのことでいちいち怒ったりはしないのだ。


 ふぁ~あ。


 いかん、またあくびが出た。


 少し寝ようっと。







ついに500話まで来ました\(^o^)/

記念回なのにテストを受けているだけですいませんっ!

ここまでで、約560万PV、

3152ブックマーク、総合評価12762点をいただきました。

ありがとうございました!

クウの異世界生活は、まだ続けていきたいと思っております。

よかったら今後ともお付き合い下さいm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[一言] テストってどれだけ年を取っても嫌なものです、真剣にテスト受けたのなら結果がどうあろうとも無問題で。
[一言] 精霊にお祈りする言葉は、ハイカットじゃないですか?
[一言] これがかの有名なウィンナー園の誓いである。
感想一覧
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