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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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492 クウちゃんさまの年末2





 挨拶の後、私はオダンさんとエマさんにたずねた。


「それで、今日はどうしたんですか?」


 ぬいぐるみでも買いに来てくれたのかな?


 と思ったけど、ちがった。


 オダンさんが言う。


「クウちゃん、今年は本当にお世話になった。

 ありがとう。

 おかげで俺は店まで持つことができた。

 エミリーのことでもお世話になって、本当に感謝している」


 続けてエマさんが、


「今日は今年お世話になったお礼に来たの。

 今年は本当にありがとうございました。

 来年もどうか、よろしくお願いします」


 家族そろって頭を下げられてしまった。


「いいですよー、そんなのー」


 私は恐縮する。

 頭を下げられるようなことは、なにもしていないし。

 とはいえ、ここはちゃんとするべきか。


「こちらこそ、お世話になりました。

 来年もよろしくお願いします」


 私も頭を下げておこう。


 その後で、


「さあ、とにかく座って下さい。

 エマさんも立っているのは大変じゃないですか?」


 エマさんのお腹は、もうかなり大きい。

 それもそのはず。

 来月には出産予定らしい。


 そんな時期に出歩くなんてよくないんじゃないかと私は心配したけど――。

 そうでもないようだ。

 庶民は普通に働くものだと笑われた。

 体調の方は、ウェーバーさんの紹介で優秀なお医者さんに診てもらうことができて万全のようだ。

 仕事も、ウェーバーさんがサポートしてくれるお陰で順調のようだ。

 よくしてもらっているらしい。

 私も今度、ウェーバーさんにはお礼を言っておこう。


 と、ウェーバーの名前が出たところで……。

 オダンさんに教えてもらったんだけど……。


 なんと、ウェーバーさんも聖国の大祭に行っていたらしい。

 商売もしてくるそうで帝都に帰るのは来年とのことだった。


 あの会場にいたのかぁ。


 ぜんぜん気づかなかったよ……。


 観客はすごい数だったし、やむなし、だけど。


 まあ、ただ、大祭の間は私、聖女ユイや審判者マリーエと一緒だったし、逆に会わなくてよかったか。


「あと、これは仕事のことなんだが――。実は、クウちゃんにも関係の深い仕事を新しく契約したんだ」

「へえ。なんですか?」


 なんとびっくり。


 姫様ドッグの素材である辛味子と姫様ロールの甘味であるトコの根、この2つの生産と管理を請け負ったのだという。


「すごいですね! それって、大契約ですよね?」

「ああ。ウェーバー会長の全面的なサポートと、クウちゃんとの繋がりがあればこその契約ではあるんだけどな。俺も、ネミエのご近所連中に仕事を振ってやることができて鼻高々だよ」

「よかったですねー」


 ネミエの人たちとは何度か宴会をして、私も顔見知りだ。

 みんな、明るくていい人たちだったけど貧乏ではあった。

 新しい仕事で、いい暮らしができるようになるといいね。


「トムもやるんだって」


 エミリーちゃんが、ちょっと嫌そうに言う。

 トムとは、ネミエの町の住民で、以前に私のことをボンボン貴族のフロイトに二束三文で売ったヤツだ。


「まあ、トムも反省している。あいつはあいつで家族を養うために必死なんだ。許してやってほしい」

「私はいいですよ。気にしてないですし」

「ありがとう、クウちゃん」


 オダンさんが頭を下げる。

 優しい人だ。


「クウちゃんがいいなら、わたしもいいけど……」


「そんなわけでね。もう忙しくて大変なの」


 エマさんが肩をすくめる。


「……エマの体が心配ではあるんだけどな」

「なにを言ってるの。最初から他の人任せにしていたら、大切な中の仕事を好き放題されちゃうかも知れないでしょ。ちゃんと自分達で管理できるようにしておかないと後悔することになるわよ」


 さすがはエマさん。

 しっかりしている。


 すべて丸投げの私とは大違いですね!


 そこから更に世間話をした。


 話題は、主に聖都での大祭のことだった。


 早くも帝都にも――。

 聖女直属の最強集団『ホーリー・シールド』の噂は届いていた。

 私がテキトーに作った架空の組織なんだけど……。

 なんか、うん。

 大げさに独り歩きしているようだ……。


 さすがにオダンさんたちに『私がソードです』とは言いたくない。

 私は知らないフリをした。

 それなりに事実を知っているエミリーちゃんも、見事に何も知らないフリをして微笑みを浮かべていた。

 セラといいアンジェといい、ありがたい友達を持てて私は幸せです。


 そんなこんなで。

 1時間ほど楽しく会話した。


 では、また来年。

 良いお年を!


 帰っていくオダンさんご一家を私は外で見送って。


 1人、お店に戻った。


 私はしみじみと思う。


 みんな、頑張っているんだねー。



 夜はヒオリさんと2人で、平和におうちで過ごした。


「今年もおわりですね」

「だねー。ヒオリさんは実家に帰らなくていいの?」

「某の実家は遥か遠方なので、当分、帰る予定はありません」

「そかー」

「ところで店長、入試なのですが……」

「ヒオリさん」

「は、はい?」

「年末だよ? 楽しいことを話そう?」

「そ、そうですね! これは失礼しました! そうですね……。店長とエミリー殿に森の中で救われて、もう半年……。長いようで、あっという間でした。いろいろなことがありましたね」

「だねー。ヒオリさんは、なにが一番、印象に残ってる?」


 2人で、今年あったことを、いろいろと話した。

 特に盛り上がったのは、夏の旅行のことだ。

 あれは楽しかった。

 またみんなで行きたいものだ。


 こうして――。


 今年最後の夜は、静かに過ぎていった。





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