表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

490/1362

490 ルルさんからの情報




 こんにちは、クウちゃんさまです。

 早いもので、いよいよ今年も、あと2日です。

 とはいえ、特別にやることもないので、昼は普通に仕事をしました。

 そして、今は夜。

 私はいつものように『陽気な白猫亭』で夕食の最中です。


 テーブルを囲むのは、私、ヒオリさん、ロックさん。

 今夜はルルさんも一緒だ。


 ルルさんは、ロックさんのパーティーメンバー。

 虎人族の獣人で弓と格闘戦の名手だ。

 Sランクになった後、商隊を率いてザニデア山脈の向こう、ジルドリアとトリスティンの間に広がる故郷の大森林に行っていたのだけど――。

 昨日、無事に帰ってきて、今夜は私たちと一緒にいる。


 ロックさんも、昨日、聖都から帝都へと帰ってきたところだ。


 ブリジットさんは残念ながら来ていない。

 今夜は家族と過ごすそうだ。


「――というわけで、なんとか無事にたどり着いて、私は故郷で大きな顔をすることができたってわけさ」

「すごいねー。大冒険だったんだねー」

「ま、普通ならな。私にとっちゃ、ただの軽い散歩さ」

「さっすがー」


 ご機嫌のルルさんをヨイショしつつ、私はソーセージをパクリ。

 うん、美味しい。


「で、実はクウちゃんに渡したいものがあってさ」

「ん? 私?」


 なんだろか。


 ルルさんが持参していたバッグから取り出してテーブルに置いたのは、見覚えのない鞘に入った短剣だった。

 パッと見ただけで特別な品だとわかる。

 なにしろ、柄にも鞘にも、実に見事な紋様が刻まれている。


「大森林を統べし金虎族ル・ギドの長から一族を救ってくれた者に。ル・ギトの友であることを示す証だ。受け取ってくれ」

「私? 人違いじゃなくって?」

「クウちゃんのことは、妹のノノから聞いたよ」

「あー! ノノかー!」


 思い出した。


 ノノは以前、ザニデア山脈で助けた、ジルドリアの元獣人奴隷だ。

 故郷の大森林に送り届けてあげたんだった。


「懐かしいなぁー。ねえ、ルルさん、ノノは元気でやってた?」

「ああ。元気そのものだったさ」

「それはよかった」


 なによりだね。


「私もノノから話を聞いた時には、正直、まさかとは思ったけど。どう考えてもクウちゃんだったからな。やっぱりクウちゃんか」

「あはは。まあ、ですねー」

「そんなわけだから、それは貰っといてくれ。大森林に来た時に誰かに見せれば顔を繋げるからさ」

「じゃあ、ありがたくもらっておきます」


 ここで断るのは、さすがに無粋だよね。

 私は受け取って、魔法のバッグからアイテム欄に入れた。


 ここでロックさんが質問してきた。


「なあ、クウ。おまえ、いつそんな善行してたんだ?」

「夏の前くらいだったかなー。竜の里に行っていた時にねー」

「へー。竜の里ねぇ……。って、竜の里!?」

「うん。そうだよ」


「ロック殿、店長の交友関係はとても広いのです。細かいことは気にしたら負けなのです」


 今夜も元気に山盛りの料理を食べつつ、ヒオリさんは言った。


「うちの妹も、竜の背中に乗って大森林に帰ったらしいぜ。すごいよなー」

「すごいっつーか。まあ、すげーな!」

「クウちゃん、あらためて感謝を。ありがとな」

「どういたしましてー」


「おまえ、しかし、ホント、どこにでもいやがるなあ。聖都でバッタリ遭遇した時にも驚いたけどよ」

「お祭り、面白かったよねー」

「まあな! わざわざ聖都まで行った甲斐があったよな!」

「お。そうだったよな! ビディが入賞したんだろ? 聞かせてくれよ!」

「おう。ビディの芸もすごかったぞー」


 というわけで。


 今度は私とロックさんが、ルルさんに聖都でのことを語った。

 もちろん、私がソードってことは秘密だ。


 お祭りの話は盛り上がった。

 途中でロックさんはすっかり酔っ払った。


 ルルさんから気になる話を聞いたのは、その後のことだった。


 ルルさんがしみじみと言う。


「しかし、そうか……。あの糞みたいなトリスティン王国が、本当に聖女様の軍門に下ったのか……。そうなると、独立戦争はどうなるんだろうね……。聖女様と戦うなんてことにならなきゃいいけど……」

「戦争なんてあるんだ?」

「トリスティンから逃げ出した獣人連中が、今、海洋都市の方に集まって獣王国復活の準備を進めているって話さ」


 海洋都市と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、ナオのことだ。

 ナオは今、海洋都市の方にいるはずだ。


「……ねえ、それって、もしかして、銀狼族が関係していたりする?」


 私はおそるおそるたずねた。


「たぶんな。連中が海洋都市の方に集まるのは、そっちの方に銀狼族の噂があるからだろうな」


 噂とは、かつてのド・ミの国の銀狼の王族が、海洋都市のどこかで今も生きているというものだった。

 それはナオが姉と慕っていた、ニナさんのことで間違いない。

 ナオも彼女に会うために旅に出た。


「私ら獣人は、個々の力で見れば人族よりも遥かに強い。

 だけど、私らには――。

 正確に言うなら、荒野で暮らす諸部族には、広い意味でのまとまりがない。

 部族単位でしか動かない。

 人族よりも、他の獣人部族と争うことの方が多い。

 でも、例外はある。

 それが、三獣族ってモンでさ。

 かつての草原の覇者、獅子族。

 かつての丘陵の覇者、銀狼族。

 そして、大森林の覇者たる私ら金虎族。

 この三族だけには、他の獣人族を従わせる権威と尊敬がある。

 あった。

 でも悪いが、私ら金虎は大昔から大森林だけが縄張りさ。

 他の地域のことなんて知ったこっちゃない。

 獅子族については、とっくに王家の血は途絶えている。

 だから、戦争したけりゃ――。

 特にド・ミの国を取り戻したければ――。

 どうしても銀狼族、特に王家の血筋を御旗に掲げる必要があるのさ」


 独立戦争かぁ……。


 私には確信があった。


 ナオは絶対に巻き込まれる。


 ナオは銀狼。

 しかも、王家の血を引いている。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ