表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/1359

49 光の剣と精霊の指輪



 セラと並んで歩いて大宮殿に向かった。

 到着してエントランスに入ると、バルターさんが待っていた。


「こんにちは、バルターさん」

「いらっしゃいませ、クウちゃん。おかえりなさいませ、セラフィーヌ様」

「ちょうどよかった。実はバルターさんや陛下や皇妃様、もちろんセラにもだけどプレゼントがあるんだ。陛下の分と一緒に渡していい?」

「それでしたら食堂で直接お渡しいただければと。本日の昼食は皆様と一緒に取るとのことでしたので」

「そうなんだ」

「……クウちゃん、わたくしにも何かくださるのですか?」

「うん。前に約束したのとは別だけどね」


 食堂に入って待っていると、陛下と皇妃様がやってきた。

 今日はナルタスくんは一緒ではないようだった。


「クウちゃん君、俺たちに何かくれるそうだな?」


 席に着くなり挨拶もせず、陛下がいつものニヤリとした笑みを向けてきた。


「はい。一応、お世話になっているのでお礼です」

「何をくれるのかな? 食事の前に遠慮なくいただこうではないか」

「剣もあるんですけど、出していいですか?」

「構わん」


 陛下の許可をもらってから取り出す。

 ミスリルソードと8個のシルバーリングをテーブルに置いた。


「……これは、ミスリルか?」

「刃はミスリル100%の混じり気なしです。あと付与効果をつけてあります。試しに発動させますね。眩しいので最初は目を逸してください」


 掲げてホーリーブレイドと声に出す。

 ミスリルの刃が輝きを増し、部屋一面に白い光を放った。


「アンデッドと魔族に対して特効を持つ力です。ホーリーブレイドと声に出すだけで発動するので簡単です」

「クウちゃん君は、アンデッドや魔族との戦いを想定しているのかね?」

「いいえ。この世界って、光の力が尊ばれているみたいなので、これがいいかなとつけてみました。どうぞ」


 いったん手放して、光を消してから陛下に渡す。


「俺が唱えても発動するのか?」

「はい」

「ホーリーブレイド」


 陛下の掲げた剣が白い光を放つ。


「……ほお。これは素晴らしいな」

「でしょー。自信作です。あ、手放せば光は勝手に消えますよ」


 陛下が剣をテーブルに戻し、光を消してから、再び手に取る。

 そして再びホーリーブレイドと唱えて輝かせた。


「これは何度でも使える力なのか?」

「効果は永続のはずです。……もしかしたら違うかも知れませんけど、試していないのでわかりません」


「あの、クウちゃん……。わたくし、剣のことは詳しくないのですが、それでもその剣はとても高価なものに見えるのですが」

「ふっふー。高品質のミスリルインゴットをふたつも使ってるからねー」


 2000万円はするよっ!


「どうですか、陛下。気に入ってもらえました?」

「……バルター、悪いが、君の意見を聞かせてやってくれ」


「ミスリルは、その美しさと硬度と魔力伝導率の高さから、万全とも呼ばれる希少な金属です。しかし、それ故に単独での加工が難しく、帝国の聖剣でさえミスリル純正ではありません。純ミスリルに加えて光の力となれば、剣の価値は規定不可能でしょう。これはクウちゃんが作られたのですかな?」


 横からバルターさんが神妙な面持ちでたずねてくる。


「はい。私が作りましたけど……。あ、でも、作るには特別なアイテムが必要なので量産は無理ですよっ! それ1本だけの逸品ですからねっ!」


 この設定、ちゃんと考えておいてよかった!

 あと帰ったら、ショーウィンドウに飾ったままのミスリルソードはしまおう!

 売るのはアイアンが上限だね、これは。


「わかっている。君を閉じ込めて剣を作らせるつもりなどはない」


 剣をテーブルに置いて、陛下が上機嫌に笑う。


「ならいいですけど……」

「それでこの剣は、本当にありがたく俺がもらっていいのだな?」

「はい。よくしてくれたお礼です」

「はっきり言っておくが、家一軒よりも、よほど高価だぞこれは」

「そかー」

「気の抜けた返事をするな。まったく、君というやつは」

「だって剣があっても家は買えないですよね」


 身元不明だしね、私。


「あ、剣の名前は光の剣と言います」


 私が考えた!


「大層な名前だと言いたいが、この剣には相応しいか。民衆への演説会で派手に使ってやるから楽しみにしていろ」

「民衆への演説会なんてあるんですね」

「精霊の祝福について、そろそろ公式な見解を出さねばならんのでな。最近はその打ち合わせで大忙しだ」

「なんか、すみません」

「安心しろ。君の存在は隠す。いや、一部の貴族には、すでに君が遠国の王女であることは伝えたぞ」

「どんな設定になりましたか?」

「設定はない」


 断言された。


「えっと……」

「詳しく話す必要などあるまい? やんごとなき事情でよい。君の姿を見れば勝手にエルフと思うだろうさ」

「エルフっぽい感じなんですね。嫌だけどわかりました」

「なんだ、エルフは嫌いか?」

「好きではないです」


 精霊はエルフの下位互換と言われ続けてきたしね。


「はっはっは! エルフが聞いたら泣くぞ」


「――ハイセル、そろそろわたくしたちにも話を振ってもらえるかしら? いつまでも独占するものではなくてよ?」


 トントンとテーブルを指で叩きながら皇妃様が微笑む。


「ああ、すまなかった。クウちゃん君よ、アイネーシアとセラフィーヌに指輪の説明をしてやってくれ」


「その前に、こんにちは、クウちゃん。ごめんなさいね、皇帝ともあろう者が無作法に挨拶の1つもなくて」

「あはは、いえ。こんにちは、皇妃様」

「それでこの指輪はどんなものなのかしら? 見たところ、普通のシルバーリングのようだけれど……」

「これは精霊の指輪です。私が力を込めて作りました」

「精霊の……?」

「はい。手に取ってくださって大丈夫です。セラもどうぞ」


 セラにひとつ渡してから、私も指にはめる。


「こうして指にはめることで、それぞれ1日に1回ずつですが、攻撃を無効化し、毒を消します。

 これさえあれば奇襲を受けても大丈夫、毒を盛られても平気です。

 サイズは気にしないでオーケーです。

 はめれば自動的に合います」


 武具や他のアクセサリーは装備してもサイズが変化したりはしない。

 なので使用者に合わせて生成する必要があった。

 だけど指輪は違っていた。

 装備すると、サイズが使用者に合う。


「すごい指輪ですね……」


 セラが指にはめたシルバーリングをまじまじと見つめる。


「こういうのって魔道具でありますか?」


 皇妃様に質問してみる。


「そうですね――。

 指のサイズに合う魔道具の指輪は、たしか存在していた気がします。

 攻撃を防ぐ魔道具は、設置型のものであれば存在します。

 ただし、魔術師による制御が必要ですし、長時間の発動は不可能なので、日常的に使えるものではありません。

 毒についても解毒ポーションや毒消しの魔術は存在しますが、あらゆる毒に効果があるわけではありません。

 クウちゃんのこの指輪は、常に防御効果を発揮できる状態で、あらゆる毒に効果があるのかしら?」


「はい。1日に1回なら寝ている時でも攻撃は防ぐはずです。古代竜クラスからの攻撃になると防げないかも知れませんが、それ以下ならまず平気です。毒はすべて大丈夫のはずです」

「それなら安心ですね。古代竜に襲われたら、そもそも国が滅びます」

「あはは」

「この指輪は国宝級と言えるでしょう」

「そかー」


 国宝かー。

 気楽に量産できるアイテムではないということか。

 これ、メアリーさんやリリアさんにはあげない方がいいね。

 やめておこう。

 悪い人に狙われそうだし。


「あ、これも特別なアイテムが必要なのでっ! 逸品なのでっ! たくさんは作れないアイテムなのでっ!」

「ええ。わかっています。クウちゃんの不利益になることはいたしません。せっかくこうして持ってきてくれたのですから」


「そうだっ! セラ、ためしに木剣で私を突いてみてよ。平気だから」

「えっ。こ、ここでですか!?」


「面白い。セラフィーヌ、やってみなさい」

「お母さま……?」


 陛下に促されたセラが、困って皇妃様に助けを求める。


「基礎だけとはいえ剣を習ったのでしょう? 見せてごらんなさい。クウちゃんが平気というなら平気でしょう」

「……クウちゃん、本当に怪我しませんか?」

「平気だよー」


 私は席を立って、自由に動けそうな後ろ側に歩いた。

 壁際にはメイドさんたちがいるけど、当たらないくらいのスペースはある。


「ほらセラ」

「は、はい……」


 そばによってきたセラに木剣を渡す。

 渡してから、少し距離を取る。


「本当に行きますよ……?」

「いいよー」

「わかりましたっ!」


 セラが基本の姿勢を取る。

 次の瞬間には体のひねりを利用した鋭い突きを放ってくる。

 私は避けずに正面から受けた。

 でも、切っ先が届く寸前で魔法の障壁が現れてその攻撃を受け止める。


「きゃっ!」


 剣を弾かれて、セラが尻餅をついて倒れる。


「セラ! 大丈夫っ!?」

「……はい、平気です」


 あわてて駆け寄ってヒールした。


「セラ、今の一撃すごくよかった。自然に体が伸びて、剣が生きていたよ」

「ありがとうございます」


「ああ、そうだな。俺も驚いたぞ。セラフィーヌは剣にも才能があったのだな。さすがは俺の娘だ」

「セラフィーヌですもの。当然ですわね」


 意外と親バカなのだろうか。

 陛下と皇妃様は満足そうに言葉を交わしている。


「……それであの、先程の透明な盾のようなものが指輪の力なのですか?」

「うん。ちゃんと発動してよかった」

「すごいですね……」

「これさえつけておけば即死はないから、セラもよかったら装備しておいてね」

「はいっ! 大切にしますっ!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 剣があっても家は買えない ふわふわしてる精霊様が珍しく本質を突いた!……たまーに、突然地に降りてくる精霊様だ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ