表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

484/1361

484 閑話・冒険者ロックは見ていた



 しかし、聖都の人間っていうのはすごいモンだ。

 つい3分前まで、人でごった返す中央広場は、怒鳴り声に笑い声に子供の泣き声と大騒音だったのに――。

 鐘が鳴って――。

 ステージの上に神官が現れる否や、すうーっと静まり返った。

 泣いていた子供まで鐘の音で泣き止むのだから驚きだ。


 俺はロック・バロット。

 帝国から来た冒険者だ。

 俺は今、仲間のブリジットと2人、ザニデア山脈を超えてリゼス聖都の聖都アルシャイナに来ている。

 俺たちの用件は昨日でおわったのだけど、せっかくだから大祭も見学していくことにして、今、聖都の中央広場に来ている。


 聖女ユイリアがジルドリアとトリスティンの国王に祝福を与えるという儀式は大聖堂の礼拝堂で行われる。

 今日、大聖堂は一般人立入禁止だ。

 各国のお偉い様が集まっている。

 なので市民は中央広場に集まっている。

 中央広場のステージには、魔道具の巨大なスクリーンが置かれて、儀式の様子をリアルタイム中継する。


 今、広場のステージに現れた神官が、儀式の開始を告げた。

 まわりの連中が一斉に祈りを捧げる。

 同調圧力に負けて、俺も形だけ祈りを捧げた。


 俺のとなりにいるメガモウというデカブツは真剣に祈りを捧げている。

 メガモウは、たまたま酒の席が一緒になって、カラアゲで喧嘩をして、殴り合い寸前になったヤツだが――。

 お互いにクウの知り合いだということで和解した。

 今日もたまたま顔を合わせたので、そのまま一緒に見学している。


 もちろんブリジットも一緒だ。

 ブリジットも俺の横にいる。

 いつものローブ姿だが、いつも深く被っているフードは、人混みの中では怪しすぎるので外させた。


 祈りがおわると、スクリーンに映像が現れた。

 大聖堂の礼拝堂。

 祭壇の前が映し出される。

 正面を向いて立つ聖女ユイリアの姿があった。


 荘厳な音楽も流れてきた。


 聖女ユイリアの斜め後ろには、左右に2人の人間が立っていた。

 2人とも、聖女ユイリアと同じ系統の、神官として、いかにも地位の高そうな格好をしている。

 そして2人とも白い仮面をつけていた。


 どちらも、小さい。


 片方は、聖女ユイリアと同じくらいの背格好。

 人間とするなら10代前半のサイズだ。

 ふと、俺は思う。


 クウのヤツと同じくらいだな……。


 まあ、さすがに偶然か。

 いくらクウでも、さすがに今日のステージにいるはずはない。

 髪色がわかればよかったが、残念ながら髪は白い布で束ねられて見える範囲には出ていなかった。


 もう1人は、聖女ユイリアよりも明らかに小柄。

 獣人の少女だった。

 真っ白な肌。

 真っ白な長い髪と、真っ白な獣の耳。


 2人とも、明らかにただの娘ではない超常の気配をまとっていた。

 何者なのだろうか――。

 おそらく、聖女ユイリアの護衛なのだろうが――。

 ステージ上でも2人は帯剣している。


 やはりそうだった。


 簡単な挨拶の後、聖女ユイリアが2人の紹介をする。


 聖女親衛隊『ホーリー・シールド』。


 唐突に町で話題が沸騰した――。

 市民ですらも初めて名前を聞いたという謎の組織――。


 俺がクウと勘違いしたのが、序列第一位ソード。

 聖女ユイリアが、堂々と、比類する者なき聖国最強の戦士として紹介した。


 真っ白な方が、序列第二位セイバー。

 聖女ユイリアが、こちらも堂々と、聖国第二の戦士として紹介した。


 2人は今まで、常に影として聖女のそばにいたそうだ。


 しかし今回――。


 大祭を行うに当たって、初めて表に出たそうだ。


 やはりクウではないようだ。

 俺は1人、苦笑いした。

 実は否定しつつも、やっぱりまたクウだろこれ、と思っていたのだ。

 俺の勘はよく当たる。

 よく当たるから、今まで生き延びてきた。

 だけど今回は外れたようだ。


 次に見届人が紹介される。


 現れたのは4人。


 聖国の聖王。

 聖国の総大司教。

 帝国の皇帝陛下。

 そして、昨日の大会にも来ていた、審判者マリーエ。


 聖女が4人を紹介する。


 俺は驚いた。


 聖女が名を告げる順番が、聖王、総大司教、皇帝陛下、審判者だったからだ。

 今回は宗教的な儀式なので、聖王が先に呼ばれるのはわかる。

 皇帝陛下は賓客なので、聖王と総大司教の後に呼ばれるのは妥当だろう。

 ただ、審判者という存在が最後に呼ばれたのがわからない。


 それはつまり、審判者という存在が――。

 国の支配者よりも「上」であると宣言しているに等しい。


 いや、今さら驚くことではないか。

 昨日もそうだったか。


 一体、マリーエとは何者なのか。


 輪郭が揺らいで、その姿はハッキリと認識できない。


 精霊ではないのだろう――。


 なにしろ昨日の大会には、精霊が来ていた。

 司会者として、派手に。


 同じ精霊であるなら、精霊として紹介されているはずだ。


 では、なんだ――。


 聖女、皇帝、そして精霊までもが「上」と認める相手――。


 まさか――。


 神、なのだろうか――。


 俺は戦慄する。


 そうとしか思えなかったからだ。


 紹介された各人が所定の位置についたところで、儀式が始まる。


 聖女が、今回の大祭の大きな意味を語った。


 悪魔に対する人類の結束。


 聖女はそれを強く訴えた。


 悪魔ねえ……。


 異界からの侵略者ってことらしいが、いまいちピンと来ない。

 禁区調査では悪魔の計略で殺されかけたわけだが、俺たち『赤き翼』は直接悪魔と対峙していない。

 なので、悪魔については話でしか聞いていないのだ。


 まあ、出てきたのなら倒すだけだが。


 お。


 聖女は、聖都にいる俺たちにも祝福をくれるそうだ。


 心を開いて、受け取ってほしいと言われた。


 せっかくだ。


 ありがたくもらっておこう。


 聖女の祈りが始まる。


 美しい調べだ。


 合わせて、大聖堂を中心に聖都の空に光が満ちていく。


 これが、聖女の光の魔術――。

 祈りの力――。

 なのだろうか――。


 完全に超常の現象だ。


 中央広場からは感嘆の声が上がった。


 やがて――。


 聖女が祈りの最後に、両腕を天に掲げる。


 光に満ちた空から――。


 まるで雪のように、輝く白い欠片が舞い降りてきた。


 体に触れると、解けて消えた。

 そして――。

 心と体に、活力が漲る。


 広場の感嘆は絶叫のような歓喜に変わった。


 俺は思う。


 俺はみんなほどの感動は受けていない。


 むしろ冷静に思うのだ。


 ……ほんとーに、クウのヤツは関わっていないんだよな?


 なにしろ、舞い降りてきた祝福――。

 その力は――。


 素晴らしいものであることは確かだ。

 それは確かなんだが――。


 クウが『陽気な白猫亭』での大宴会の時、適当にばら撒いた祝福と同じものとしか思えなかったからだ。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] マリーエ様は神だったのか、ついにマリーエ様の正体が解明されました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ