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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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480 朝




 朝。


 真面目な顔をして、ユイが部屋にやってきた。


 ここはユイの家。


 部屋というのは、私が一泊した客室のことだ。


「おはようございます」


 やけにかしこまって、ユイは言った。


「おはよ。……どうしたの?」


 いきなり真面目な顔をしているので、私は訝しみながらたずねた。

 部屋には私とユイの2人きりだ。

 なので、遠慮は無用のはずなんだけど。


 ユイは手にバッグを持っている。

 なんだろか。


「実は、なんとかしてよクウえもーん、するために来ました」

「なるほど」


 故にいきなりかしこまっているわけね。


「これを見て下さい」


 ユイがバッグを開ける。

 ベッドの上に広げたのは、白地の美しい衣装だった。


「へえ、キレイだねー。どうしたの、これ」


 今日の大祭でユイが着るのだろうか。


「実は昨日の夜、パーティーがおわった後に竜の里に飛んで、フラウさんから譲り受けて来ました。私が譲り受けた神子服と同年代の礼装です」

「へー。なるほどー」


 ユイは転移魔法を習得している。

 竜の里と聖都との行き来は自由自在だ。


「あと、これを見て下さい。これをどう思いますか?」


 さらに、白い仮面をバッグから取り出してベッドの上に置いた。


「うん。仮面だね。飾り物かな」


 私は見たままで答えた。

 目も鼻も口もない、のっぺりとした仮面だった。


「これもフラウさんから譲り受けてきました。目のところが空いていなくても外を見ることのできる魔道具の仮面です。対価として、魔石100個に光の魔力を充填することになりました。大変です」

「そかー。がんばってねー」

「はい。がんばります」

「で、どしたの?」

「実は、ソード様にお願いがあって来ました」

「あ、うん。そっちね」


 ソードというのは、昨日、トリスティンの王子と揉めた時に、私が適当に取ってつけた名前だ。

 聖女親衛隊『ホーリー・シールド』の序列第一位。

 という設定にしたはずだ。


「実は私、昨日の夜、見栄を張ってしまいました。ソード様のことがいつの間にか広まっていて、つい」

「なんて言ったの?」

「ソードはいつでも私を見守ってくれているって」

「へー」

「それで、ね」

「うん?」

「国のみんなに、挨拶だけでもさせてほしいって頼まれて、ね」

「いいよって言っちゃったんだ?」

「はい。言っちゃいました」

「なるほど」


 それでこの衣装と仮面で、ソードになってほしいわけね。


「ねえ、ソード様」

「ん?」

「親衛隊『ホーリー・シールド』って、どこにいるんだろうね?」

「さあ。私に聞かれても」


 困るというものだ。


「みんなが言うんだよ?

 私直下の最精鋭なんだって、『ホーリー・シールド』

 光の加護を受けし最強無敵の集団なんだって、『ホーリー・シールド』」


「へー」


 すごいね。


「どこにもいないよね!?」


 いきなり涙目になってユイが叫んだ。


「まあ、うん。いないよね」


 私がテキトーに言っただけだしね、それ。


「いないのに私、それは秘密です☆

 って、ちょっとかわいく聖女様っぽく言っちゃったのー!

 クウのせいだからねー!

 クウが悪いー!

 なんとかしてよクウえもーん!」


 うわーーーーん!


 ってユイに泣きつかれた。


「いや、うん。秘密なら永遠に秘密でいいのでは」

「それはそうだけどぉぉぉぉ!」

「もう、しょうがないなあ、ユイ太くんは」


 仕方がない。

 このクウちゃんさまがいいアイデアを出してあげるとするか。


「ならさ、注意書きでも入れたら? ホーリー・シールドは架空の存在です。実在の人物や団体などとは関係ありません」

「それどこの映画ー!」

「あはは」

「うわーーーーん!」

「なら、アレだよ、アレ。ホーリー・シールドは精霊の部隊です。なので普段はいなくて当たり前なのです。ソード様も精霊なのです。なので秘密なのです」

「……いいの、それ?」

「いいんじゃないかな」


 実際、私、精霊だし。

 リトもいるから、2人で部隊だよね。


「あれ、そういえばリトは?」


 そばにいないね。


「今は精霊界に戻って仕事をしているよ。さすがに分体だけでは無理なこともあるみたいだよ」

「へー。精霊も大変なんだねー」

「クウはいいの?」

「私も仕事はしているよ」

「あ、そっか。ふわふわするのが仕事ってアシス様に言われたんだよね」

「うん。そ」

「いいなー。ふわふわが仕事なんてー」

「あっはっはー」


「ただいまなのですー!」


 笑っていると、ポンッとリトが目の前に現れた。


「おかえりー、リト」


 ユイが笑顔で出迎える。


 リトは最初から白いフェレットの姿だ。

 私とも目が合う。


「うえ。クウちゃんさまなのです」

「おはよう、リト」

「お、おはようなのです! 今日もお元気そうで何よりなのです!」

「ねえ、リト。私、いいことを思いついたんだー。リト、今日は一日、人間の姿でいてもいいからね」

「いいのですか?」

「うん。今日は一日、私と一緒にユイの親衛隊をするよー」

「親衛隊なのですか。わかったのです」


 私は早速、ユイがフラウから譲り受けた古代の衣装に着替えた。

 リトの分は、リトのサイズに合わせて私が生成する。

 仮面も生成した。

 生成には貴重な素材も必要だったけど、竜の人たちとの交換会で貰っていて私は所持していた。

 リトにも着替えてもらった。


 私は正体バレしたくないので髪も隠しておく。

 水色メイドさんの時と同じように、白い布で巻いてまとめた。


 その後は、3分ほどポーズの確認だ。


 それがおわったら――。


「いくよ、リト」

「はいなのです……」


 2人でびしっとポーズを決めた。


「「我ら『ホーリー・シールド』! ただいま推参!」」


 なのです!


 ユイはわーっと拍手して喜んでくれた。

 うん。

 完璧だ。


「……恥ずかしいのです」


 大丈夫だよ、リト。

 こういうのは、すぐに慣れて気持ちよくなるからね。


 かくして。


 聖女親衛隊『ホーリー・シールド』は本当に結成された。

 まあ、2人なんだけどね。

 戦力としては十分だろう。




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― 新着の感想 ―
[一言] 返信ありがとうございます、まあ、これから隊員増やしてけばいいんじゃね?二人だけって寂しいでしょ?
[一言] クウちゃん海外に行き帝国に帰国したらっていうかもはや陛下への報告会が無い方が皆無なような気がします(笑)
感想一覧
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