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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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477 表彰式





 ステージには今、30名の参加者がずらりと揃っていた。

 私は参加者のみなさんに語りかける。


「みなさん、今日は本当に素晴らしい芸をありがとうございました。

 世界は面白い。

 そのことをあらためて知ることができました。

 そのお礼も込めて――。

 この決勝の舞台に立ち、見事に芸をやりきったみなさんに、

 まずは私からのプレゼントです」


 私が準備してきたのは一枚のメダルだ。

 いわゆる参加賞。

 銀で生成して、精霊さんの横顔のシルエットを刻んだ。

 もちろんモデルは私です。

 我ながら、かわいくカッコいい!

 さすがは私!


 1人ずつに手渡した。


 ちなみにメダルは、ただのメダルだ。

 魔法効果は付与していない。

 必要以上に価値を出してしまうと、余計なトラブルになりかねない。

 なのでやめておいた。

 決勝進出者には金一封も贈られるそうだし、メダルは記念に取っておいてもらえると嬉しい。


 その後は、3位と2位の表彰だ。

 3位に輝いたのは、ブリジットさん!

 水の舞は本当に見事だった。

 後半のギャグとの対比は賛否が分かれたけど、面白かったことは確かだ。

 ブリジットさんにはユイから表彰状とトロフィーが贈られた。


 2位に輝いたのは、ハリーさん。

 ジョークです。

 の締めには本当に笑った。

 おめでとう!

 ハリーさんにもユイから表彰状とトロフィーが贈られた。


 さあ、そして。


 最後に1位の表彰だ。


 1位に輝いたのは、フォーン神官。

 圧巻の芸だった。

 私はあの時、本当に、聖なる山ティル・デナを見た。

 なのに滑稽でもあり、笑える。

 文句なしの優勝だね。


 と、優勝を告げる中で私は、今更ながら、フォーン神官の芸に感じていた既視感の正体に気がついた。

 アンジェだ。

 以前、私の家でお泊りした夜、アンジェが披露したんだった。


 ただ、うん。


 アンジェには申し訳ないけど――。


 別物に感じるくらい、その先に見えるものが違っていた。


 だからすぐに、思い出せなかったのだろう。


 私が鳥頭だからではないはずだ。

 たぶんっ!


 最後、ユイが観客の方を向いた。

 そして朗らかに告げた。


「みなさん、今ここに、平和の英雄は誕生しました。

 祝いましょう」


 一気に会場が沸いた。


 その熱気の中、ユイがフォーン神官に言う。


「精霊に願いを」


 と。


 そういえば。

 そうだった。


 優勝したら、なんでも願いが叶うんだったね。


 忘れてたよ。


「ふぉふぉふぉ……。

 そうですなぁ……」


 フォーン神官は笑いつつ、私へと目を向けた。


「では、ひとつ、お願いしますかの」


 なんだろうか。


 世界征服とか人類撲滅じゃなければいいけど。

 まあ、それはないか。

 人望の厚い神官さんだし。


 世界平和だろうか。

 それはそれで大変すぎて困るね……。


 個人的な願いなら――。

 なんとかトンチで切り抜けよう。


 世界一の金持ち、なら……。

 世界で一番大きな鐘を生成してプレゼントしよう。


 不老不死、なら……。

 浮浪の父子を連れてくるとか。


 ふむう。


 でも、それだと、二度と大会は開けなくなるね……。

 信用度、ゼロに落ちるよね……。


 やっぱり、アレか。


 それは無理です。

 別の願いをどうぞ。


 が無難か。


 でも、それだと、なんでもじゃないよね……。


 まあ、でも……。


 ユイのなんでもタイムなんて、発動しても10秒と続かないんだから、それでいいのかも知れない。


 トンチで切り抜けるか、却下するか。

 難しい問題だ。

 でも悲しいかな、じっくりと考えている時間はない。

 直感で勝負するしかない。


 私は緊張しつつ、フォーン神官からの言葉を待った。


 やがてフォーン神官が、うやうやしく頭を下げながら言う。

 それは――。

 私とユイにしか聞こえないくらいの小声だった。


 ――孫娘との、変わらぬ友情を願います。


「わかりました」


 私は二つ返事で答えた。


 いや、うん。

 これ……。

 私の正体、完全にバレてるね、フォーン神官には。

 誰にもバレない鉄壁の光ガードを施しているというのに。

 さすがだ。


 ユイが会場に向けて言った。


「今、願いは届けられました。

 ――皆、祈りを」


 ユイに合わせて、会場の人たちが一斉に祈りを始める。

 さすがは聖都。

 すごい一体感だった。


 ユイが祈りの言葉を口にする。


 私は警戒した。


 まさか――。


 来てしまうのだろうか――。


 アレが――。


 祈りの最後の言葉――。


 はいカット……。


 が……。


 たぶん、来るのだろう。


 私は全身に力を込めて、その衝撃に耐える準備をした。


 私はステージの上にいる。

 精霊さんとして、衆目に晒されている身だ。


 ここで笑うわけには、さすがにいかない。


 祈りがおわった。


 ユイの唇が、さらに動いた。


 来る――!


 耐ショック、耐ワード防御!


 ユイが言った。


「ヤマスバ」


 と。


 …………。

 ……。


 私は逃げた。


 全身全霊の力で空の上へと逃げた。


 そして笑った。


 心の底から笑った。


 ユイ、なんて恐ろしい子なのか!


 最後の最後で、まさかそんな不意打ちをしてくるとは!


 お腹が痛いです。






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― 新着の感想 ―
[一言] 今、この瞬間、ヤマスバ教が生まれました。
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