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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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462 お祭りの前夜





 日が暮れてしまった。


 夜だ。


 ユイの家では、今頃、ユイが陛下と皇妃様を歓待しているはずだ。

 エリカも来ていると思う。

 難しい話をするみたいなので、私は行かないけど。

 ていうかエリカ、王様を差し置いて普通に国政に関わっているけどこれからどうするつもりなんだろうね。

 本当に女王になるんだろうか。


 エリカと言えば、ハースティオさんに続いて、竜の里から4人の竜の人が予定通りメイド隊に加わった。

 ハースティオさん1人でも余裕で最強だったのに、加えて4人。

 もうこれ、アレだ。

 エリカのメイド隊、名前はローズ・レイピア。

 竜の人たちの容赦ないダンジョン特訓で、他のメイドさんたちも恐ろしく鍛えられているみたいだし……。

 メイドとは一体。

 の状態だね、完全に。

 実際、国内では、憲兵としての側面もすでに持っているようだけど。

 エリカのメイド隊には、今度、私も遊びに行く予定だ。

 楽しみだね。

 果たして、どれだけ強いのか。

 その時には、竜の里の長であるフラウも同行する予定なので、やりすぎていて怒られなきゃいいけど。


 まあ、それはともかく。


 今は夜だ。


 祭りの前夜の聖都は盛り上がっている。

 以前の、夜は静かにすべし、という命令はすでにない。


 広場にはたくさんの屋台が出ていた。


 私は早速、行ってみた。


 広場には大勢の人がいた。

 観光客も多い。

 ソースの芳醇な香りが鼻をくすぐる。

 聖都はユイの影響で、和の食文化が根付いている。

 普通に、お好み焼きとか、焼きそばとか、おでんとか、冬なのにカキ氷までもが売られていた。

 いやカキ氷は12月にはキツイでしょ!

 などと、私は思ったのだけど、これが意外にも売れていた。

 物珍しいようだ。

 あと、こちらの世界は季節毎の温度変化が穏やかなようで、12月といっても身が凍るほどの寒さではないしね。

 もちろん、寒いは寒いけど。


 私はお好み焼きと焼きそばを買った。

 隅のベンチに腰掛けて、賑わう広場の様子を見ながら1人で食べる。

 1人で取る食事は、ちょっと寂しくもあるけど……。

 これはこれで風情がある。


 あ。


 広場で喧嘩発生。


 男の人同士が声を上げて胸ぐらを掴み合う。

 ぶつかって、お互いに、手に持っていた食べ物を落としちゃったようだ。

 敵感知に反応はない。

 祭りの華というやつかな。

 そのうち、衛兵さんが止めにくるだろう。

 と、思ったら、普通に近くにいたおばさんが仲裁に入った。

 祈りを捧げるように手を合わせる。

 男の人たちは謝罪して、同じように手を合わせた。

 さすがは聖都。

 精霊神教の拠点だけはある。

 祈りの力はすごそうだ。


 広場には、大きな石像もあった。

 魔石でライトアップされて浮かび上がっている。

 真っ白な光の大精霊像。

 リトとは似ても似つかない、ドレスを着た長い髪の大人の女性だ。

 私は知っている。

 その姿は、闇の大精霊だったイスンニーナさんのものだ。


「……ああ、そういえば、そうだったなぁ」


 そのことをユイに聞いてみようと思って忘れていた。

 リトでもいいけど。


 ふむ。


「忘れる前に聞いてみるか!」


 神殿に行ってみた。


 神殿は、祭りの前夜とあってか、夜でも普通に開いていた。

 人の出入りもある。

 私も他の人たちと一緒に中に入った。


 神殿の構造は、帝都のものとだいたい同じだ。


 奥に祭壇があって、その壁には、広場の石像と同じ白い髪と白いドレスの女性が描かれていた。


 なんとびっくり……。


 ユイちゃんぬいぐるみが飾られていて、危うく吹きかけたけど。

 普及してるね!

 商売繁盛めでたいね!

 ユイとは、その話をするのも忘れていたよ……。

 いやもう、ホント。

 いろいろなことが起きていて、大変だね、私。

 まあ、ぬいぐるみの件はいいか。

 買ってくれるなら、私は儲かるわけだし。

 べつに困らない。


 気を取り直して、脇にいた神官の人に小声で話しかけてみる。

 神官の人は気さくに応じてくれた。

 早速、壁画のことを聞いてみる。

 するとやはり、これは光の大精霊の姿とのことだった。

 聖女様も気に入っているという。


 ふむ。


 ユイはこのことを知っているのか。

 そして、問題にはしていない、と。


 気になる。

 聞いてみよう。


 姿を消して、ユイの家に飛んだ。


 ユイは、エリカと皇妃様、陛下と会談中だった。

 リトも幼女なケモミミ姿に戻って、おしゃべりに加わっている。

 朗らかな雰囲気だ。


「ユイ、ちょっといい?」

「え!? あ、クウ。もう。びっくりさせないでよー!」


 驚いて椅子から転びかけたユイを支えて、私はごめんごめんと笑った。


「陛下、皇妃様、いきなりすいません。エリカもごめん。聞きたいことがあるから少しユイを借ります。あとリトも」

「なんだ、俺達には聞かせられない話なのか?」

「んー。そうではないですけど……。じゃあ、少しお時間をいただいて、ここで聞いてもいいですか?」


 メイドさんが椅子を用意してくれたので、私は腰掛けた。

 陛下たちからの了承をもらって、私はたずねた。


「ねえ、リト。神殿の壁画に描かれている真っ白な髪とドレスの女性って、あれイスンニーナさんだよね?」

「その件なのですか。あれがリトだと聞いた時にはリトも驚いたのです」

「リトの姿ではないんだよね?」

「なのです。あれはイスンニーナなのです。間違いないのです」

「だよねえ」

「ごめんね、クウ。それ、私も知ってはいたんだけど……」

「あ、ユイ、べつに私、変えろって言いたいわけじゃないよ? そんなの大変すぎることだってわかるし。ただ、どうしてこうなっているのかが気になって忘れる前に聞きに来たんだ」

「はっきりとはしていないんだけどね……」

「だいたいはわかるのです」


 口ごもるユイに代わって、リトがぶっきらぼうに言う。


「今から千年前、ニンゲンが精霊を消耗品として使い始めた時、リトたち大半の大精霊はニンゲンを見限ったのです。

 このままでは精霊が殺されていくばかりだったのです。

 リトたちはニンゲンとは距離を置くことにしたのです。

 でも、そんな中、たった1人、ニンゲンと精霊の絆を守ろうと奔走したのがイスンニーナだったのです。

 精霊神教は、多分、その時にイスンニーナと心を通わせていたニンゲンが設立したものなのです」


「それで、ね――。

 精霊が世界から消えたことで、世界の守りが弱まって、異世界から邪悪な力が侵食してくるようになって――。

 ほら、邪悪な力って闇の魔力と混同されがちでしょ――。

 それで多分、光属性になったのかなぁ、と。

 思うんだけど……」


「あとは、もともと大陸の西側はリトの管轄だったので、リトとも混同されたのだと思うのです」


 イスンニーナさんは最後の時期、ニンゲンに明確な姿を見せることも、名を告げることもなかったそうだ。

 それも一因なのだろう。

 ニンゲンとの絆を守ろうとしながらも、そうせざるを得なかったのは、とても悲しいことだと思う。


「リトは思うのです。千年前にもクウちゃんさまがいてくれればよかったのです」

「私?」

「クウちゃんさまがいてくれれば、きっと、なにも考えずにすべてを破壊して解決していたのです。今にして思えばそれが最良だったのです。リトたちは争いから逃げすぎたのです。後悔なのです」

「おーい。それは誉めてるのかなぁ?」

「誉めてるわけないのです。やっぱりクウちゃんさまはバカなのです。でも、そのバカさが強いと思うのです」

「よーし、リトちゃんや。ちょっと表に出ようかー」


 私はリトの首根っこをつかんだ。


「わっわわっ! なにをするのです離すのですっ! ユイ! 助けてなのですリトは殺されるのです!」

「……えっと。クウ、優しくしてあげてね?」

「わかってるってー。よーし、リト、今夜は私と遊ぼうかー」


 なんかしんみりしちゃったしね。

 たまには精霊2人。

 楽しく過ごすのもいいだろう。


 リトは悲鳴をあげてるけど、大丈夫、夜空は綺麗だよ!




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― 新着の感想 ―
[一言] 返信ありがとうございます、クウちゃんさんは魔王というより破壊神だった?(笑)
[一言] 千年前に女王様やクウちゃん様が居れば、人間は滅ばされたかもしれないね。
[良い点] 夜空は綺麗だけど、今から汚い花火があがるんですよね?
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