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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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460 バーガー繁盛記




 翌朝。


 私は早速、立て看板を作ってシャルさんのところに持っていった。


「これです。どうですか?」

「すごいね……。一日で作ったんだ。ていうか本当に銀貨1枚なの? 私、もしかして騙されてる?」

「初回サービスですよー」

「いいんだ?」

「はい」

「ありがとう! これは目立つね、すごく!」


 よかった。

 気に入ってもらえたようだ。

 まあ、うん。

 前世の記憶を頼りに作っているからね。

 いいものだとは思う。


「じゃあ、シャルさん、早速だけど、バーガーを10個作って」

「10個も?」

「宣伝に行こう。材料はある?」

「ごめん。ないです」

「じゃあ、買いに行こう。お金は出してあげるから」

「いいの? じゃなくて! それくらいは自分で出しますっ! こう見えてもお金に余裕はありますからっ!」


 お小遣いでね……。

 とは、可愛そうなので言わなかった私は優しい。


「というか、クウちゃん、手伝ってくれるの?」

「乗りかかった船だし。任せて」

「ありがとー! ううううううううう。頼りになるよー!」


 お姉さんが泣いて私に抱きつく。

 なんていうか……。

 誰かに似ているなーと思ったけど、ユイだね。

 まあ、いいけど。


 というわけで、市場に買い物に出かけて、バーガーを作って、早速、宣伝活動に出かけた。

 まずはエミリーちゃんだ。

 ふわふわ工房に戻ると、もうお店に来ていた。

 エミリーちゃんには鍵を渡してある。

 私がいなくても、好きに営業していいよー、という万全の体制だ。


 まあ、うん。


 適当ですいません。


 お店には子連れのお客さんがいたので、しばし、外で待つ。

 やがてお客さんが出てくる。

 お子さんに、オルゴールを買ってあげたようだ。

 お子さんが喜んでくれていて私も嬉しい。


「ありがとうございましたーっ!」


 玄関まで来てエミリーちゃんがお見送りする。

 そこで目が合った。


「店長、おかえりなさい」

「うん。ただいまー」


 早速、シャルさんのことを紹介してバーガーを食べてもらう。

 エミリーちゃんには気に入ってもらえた。


 さて、次だ。


 私が向かうのは、おとなりの時計屋。

 相手はドワーフのモスさんだ。


 なんといっても、ハンバーガーと言えばドワーフ。

 ドワーフと言えばハンバーガー。

 気に入ってもらえれば、大いなる集客になることは請け合いだ。


「こんにちはー」


 私は笑顔でお店に入った。


 問題は食べてもらえるかだけど……。

 意外にも、あっさりと食べてくれた。


 完食。


「……どうでしょうか?」


 シャルさんが、おそるおそるたずねる。


「そうだな。エルフの食いモンとしてはいいんじゃねーのか」

「ドワーフとしては?」


 私は聞いてみた。


「パティが薄い。野菜が多すぎる。ソースも野菜に合わせたもので、野菜の風味ばかりが口に押し寄せてきたな。それはそれで悪いモンじゃねえが、ドワーフを相手にするのならパティは何枚か重ねて、ソースは特濃。もっとずっしりしたモンにする必要があるな」

「なるほど……。ありがとうございました。さすがはバーガーのプロですね」

「俺は機械細工のプロだ。バーガーなんてしらねぇぞ」

「またまたー。モスさんのクセにー」

「はぁ?」

「でも、モスさんが野菜バーガーをお好みじゃないのは意外だねー。モスさんなら大好物のはずなのに。あ、わかった。恥ずかしかったんでしょ? たしかに豪快なドワーフだとイメージに合わないよねえ。うんうん。でも、アレだよ。たまに素直になることもいいことだと私は思うよ」

「出てけ」

「またもー。照れちゃってー。このこのー。お・や・さ・い」

「出てけぇ!」

「ひゃあっ!」


 私たちはモスさんのお店を放り出されて、次は広場に向かった。

 何人かに食べてもらう。

 最初は宣伝のつもりだったけど、なんだか調査みたいになった。


 結果は有意義だった。


 シャルさんのバーガーは女性には好評だけど、男性には少し物足りないということが判明したのだ。


 では、どうすべきか。


 私たちは検討した。


 できれば、今のシャルさんのバーガーのよさを活かしたい。

 すなわち女性客の勧誘だ。

 しかし、シャルさんのお店は裏通り。

 女性客を呼び込むには立地が悪い。

 加えて、外観は古い雑居ビルのまんまだし、なかなかに厳しい。

 では、改装?

 お金がかかるので無理だ。

 シャルさんはお小遣い生活のヒトだし。


 となれば――。


「クウちゃん、私、決めたよ! 私はニューバーガーを作る!」

「おお」

「私は今まで、自分しか見ていなかったよ……。だから、自分の好きなバーガーを追求してきたけど……。それだけじゃあ、ダメだったんだね……。少なくとも今はまだ時期尚早でした……」


 シャルさんが決意を込めて椅子から立ち上がった。


 お店の中だ。


「正直、うちのお店をオシャレにするのは無理! ならば、バーガーをお店に合わせればいいのさ!」

「おお」

「ドワーフさんの意見を参考に、男の人――ううん、お腹を減らしたすべてのヒトに満足してもらえるバーガーを、私は作る!」

「ならさ、安い! うまい! 早い! なんて標語はどう?」


 異世界の牛丼屋的な。


「それいいね! 採用! 決定!」


 さすがはボンバーのお姉さん。

 勢い任せで突っ走ろうとするところはそっくりだ。


 かくして方針は決まった。


 異世界牛丼を目指した、ニューバーガーの制作。


 それは苦しい道のりになるだろう。


 でも、きっと、シャルさんならやり遂げてくれるはずだ。


「よーし頑張るぞー! 打倒、姫様ドッグ! 打倒、姫様ドッグ! ほらクウちゃんも一緒に!」

「私も?」

「当然でしょ! 同志なんだから!」

「あ、うん。そうだね。でも打倒を目指すなら、この際だし、店名も変えちゃったらどうだろ」

「バーガー2番から?」

「うん。やるなら目指そうよ! 王を!」


 トップを!


「王……。うん。そうだね……! それなら店名はひとつだね!」


 バーガーキング!


 とシャルさんが叫んだので、それは却下させてもらった。


 いや、うん。


 素晴らしい名前だとは思います。

 私は大好きです。

 間違いなく、大きくて食べごたえのあるバーガーをリーズナブルに提供してくれるお店になりますよね。


 でも、はい。


 前世の記憶に思いっきりかぶるので……。

 ごめんね……。

 ただ、バーガーの方向性としては、それでいいと思います!


 かわりに私が提案したのは……。


 バーガーハウス、ココが一番屋。

 略してココイチ。


 はい。


 他に思いつかなかったんです。


 ごめんなさい。


 トッピング自在のカレー屋さんですよね、わかります。


 ともかくこうして、お姉さんの新たなるバーガーへの道は開かれたのでした。

 前途に幸あれ!

 繁盛店になってくれると私も嬉しい。





これにてグルメ編は一旦終了。

次回から聖国編、平和の英雄決定戦です\(^o^)/

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― 新着の感想 ―
[一言] 返信ありがとうございます、何気にココが一番屋も危ない気も?カレーじゃないから無問題?(笑)
[一言] いっそのこと店名は、ク○・○イ△と語呂が似ているので 「クウ・マイヤ」にしましょう! ……いえ、一応ツッコミ所を入れようかと思った次第で……。
[気になる点] モスさんのとこなら、ライスバーガーも美味しいww [一言] 王じゃなくて皇帝にして エンペラーバーガー\(^o^)/
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