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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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46 セラと打ち合い




「クウちゃん!」


 願い泉の上に出ると、すぐに聞き慣れたセラの声が聞こえた。

 セラのうしろにはメイドのシルエラさんが控えていて、なぜか一緒にバルターさんと護衛の人たちもいた。


「セラ、こんにちは。待っててくれたんだ。待たせてごめんね」

「いいえっ! お会いできて嬉しいですっ!」

「昨日も一緒だったよ」

「でも、ずっと会っていたいんです」

「ありがとう」


 嬉しいことを言ってくれるじゃないかー!

 セラの手を握ってふりふり。

 む。


「セラ、けっこう剣の練習した?」

「はい。頑張りました」

「マメができてる。ダメだよ、お姫様がマメなんて作っちゃ。ヒール」


 治してあげた。


「ありがとうございます、クウちゃん」

「いいよいいよー。気にしないでー」

「わたくしも早く光の治癒ができるように、もっと勉強を頑張ります」

「セラならすぐにできると思うよ」


 セラといくらか話した後でバルターさんに声をかけた。


「バルターさんもこんにちは」

「ええ。こんにちは」

「バルターさんって実は偉い人だったんですね。聞いた時には驚きました」

「はっはっは。私などただの小物ですぞ」


 公爵で内務卿が小物だったら、いったいどこの誰が大物なのか。

 あえて突っ込まなかったけど。


「でも、なんでここに?」

「もちろんクウちゃん様の顔を見るためですぞ。初めてのお店暮らしで疲れたことだと思いましてな」

「バルターさん、そろそろ様はやめてよー。申し訳なくなるから」

「はっはっは。わかりました。では私もセラフィーヌ様に倣ってクウちゃんと呼ばせていただいてよろしいですかな?」

「うん。いいよー」

「ではクウちゃん、いかがでしたかな、初日は」

「挨拶にとなりのお店に行ったら、いきなりドレスを作らされた。大変だった。バルターさんの手配でしょ?」

「はい。僭越ながら」

「どんなドレスにしたんですか!?」


 セラが握ったままの手をぶんぶん振ってくる。


「完成してみないとわかんないかなぁ。布とか選んだだけだし」

「楽しみですっ!」

「ていうか、本当に私も出るの……?」


 社交の場とか。


「はい。帝国の賓客として出るべきかと。それで貴族にも顔が知られます」


 バルターさんが答えてくれる。


「ご迷惑でしたか……?」


 セラが不安げにたずねる。


「ううん、そんなことはないけど。興味あるし」

「よかったですっ!」

「ともかくありがとうございました。お金、たくさん使わせちゃってすみません」


 私はバルターさんに頭を下げる。


「すべては国益のためです。お気になさらず。クウちゃんにはぜひとも帝国での暮らしを楽しんでいただきたいと思っております」

「あはは……」


 私を囲うためだと、はっきり言われたのと同じだよね、これ。

 まあ、妙に隠されるよりいいけど。


「さあ、セラ。早速だけど、4つの型を一緒にやってみよう」


 私はそのために来たのだ。


「は、はい……」


 緊張した面持ちでセラはうなずき、シルエラさんから木剣を受け取る。

 ギャラリーが多い。

 できれば2人きりでやりたいけど無理だよね。

 そこはあきらめよう。

 私もショルダーバッグから木剣を取り出す。

 本当はアイテム欄からだけど。

 バッグが魔道具という設定なので、一応、そうしてみた。

 普段からしていないと忘れるしね、私。


「じゃあ、行くよっ! 1の型から」


 私の声にあわせて開始。

 最初はゆっくりと。

 次第に速くしていき、10回、1の型を振るった。

 休まずに4の型まで行う。


「ちゃんとできたね。さすがはセラ、すごい」

「ありがとう……。ございます……。でも体力的についていけません」

「そこはこれからさー」


 ソウルスロットを小剣武技、緑魔法、白魔法にセット。

 セラの息が整ってから、ナオとの対戦でも使った魔力障壁と魔力装甲をかける。


「……あの、これは?」

「防御魔法だよ。障壁を作ったから、間違えて打たれても安全。さあ、せっかくだし全力で打ってきてよ。私も少し反撃するよ」

「はいっ!」


 セラの体力が再び尽きて膝をつくまで打ち合う。

 初日のヘロヘロした剣とは違う、それなりに速い突きが何度も襲ってきた。

 たまに私が軽く攻撃しても、セラは型通りに払ってみせた。

 たった1日でこれとは。

 驚くほどの成長ぶりだ。


「……知識ってすごいですね。わたくし、昨日まで剣なんて振れなかったのに、クウちゃんに振り方を教えてもらって、ほんの少し練習しただけで、形だけでも打ち合うことができるなんて」

「0と1は、だいぶ違うよね」


 私は鉄製のショートソードに持ち替える。

 城郭都市アーレでロックさんに買ってもらったものだ。


「次はちょっと見てて。小剣で戦う時のフットワークを見せてあげる。騎士の剣とはかなりスタイルが違うから」


 元ゲームキャラな私と同じ動きをするのは無理だとしても、知らないよりは知っていたほうがいい。

 参考になることもあるだろうし。


 小剣は、力よりも敏捷性に頼って戦う。

 正面から打ち合っても大きな剣や重い斧には勝てない。

 身のこなしが重要だ。


 騎士が目の前にいるとイメージして攻撃を行う。


「――小剣は、武装した相手には、普通に突いても大したダメージにならないから急所狙いが基本。首や鎧の隙間とか。

 でも急所になんて簡単には当てられないから、相手を振り回すことが重要。

 ええいちょこまかとって言わせれば勝ちっ!」


 仮想の騎士に攻撃を繰り返しつつ、私は解説する。


「相手が重装備すぎたり、どうにも隙を見せてくれない時には――。

 逃げるか、魔法戦に切り替え。

 剣でやるしかない時はフットワーク関係なくなるけど――。

 腕力じゃなくて、魔力でまっすぐに押すっ!」


 魔力覚醒したセラなら、これもできるかも知れない。

 刃に渾身の魔力を通して斬る。

 まさに力技だけど、インパクトの瞬間に相手に与える衝撃は凄まじく、当てれば高確率でバランスを崩せる。


「そしてっ!」


 武技。


「フラッシュバイト」


 一瞬の輝きを放つ三倍撃刺突攻撃。

 この武技は、相手がバランスを崩していれば確実にクリティカルとなって、大ダメージを与えられる。


 決まった。


 イメージした世界の中で、仮想の騎士が消滅する。


「――こんな感じ。どうだった?」


 セラは私を見つめたまま返事をしてくれなかった。

 かわりにバルターさんが拍手をする。


「いやお見事でした。とても人間業とは思えませんでしたぞ」

「私、精霊なので」

「はっはっは。そうでしたな。まさに光と風の化身。感服いたしました」


 陛下と同じように愉快そうに笑われた。

 まあ、いいけど。


 この後はセラとベンチに座っておしゃべりした。

 バルターさんも帰らずにそばにいて、一緒に会話ってほどではないけど、必要がある時にだけ話に入ってきた。


 そして帰宅の時刻。

 今夜も夕食に誘われたけど、工房でいろいろ生成したいので断った。

 明日も会う約束をした。

 明日は礼儀作法の勉強をすることになった。

 どんな感じなんだろうか。


「セラはこれから社交界でも頑張るのかぁ。大変だね」


「いえ、本格的な活動は翌年以降となります。デビュタントは、正式に一族の者だと紹介する行事だとお考えいただければ」


 バルターさんが教えてくれた。


「なるほど。ちなみに私はどうなるんだろ……?」

「セラフィーヌ様の友人である遠国の姫として挨拶していただく予定です」

「私、挨拶するんだ……?」

「具体的な打ち合わせは陛下とお願いいたします」


 ふ、不安だ。

 なるべく簡単な設定にしてほしい。


 帰る間際にあれこれ話していると大宮殿から執事さんがやってきた。

 バルターさんに耳打ちする。


「こちらに皇妃様がいらっしゃいます」


 バルターさんが私たちにも伝える。


「お母さまが? 用件はなんでしょう?」

「さあ……。存じません」


 帰るに帰れなくなってしばらく待っていると、皇妃様が現れた。


「バルター、わたくしは怒っていますのよ?」

「はて。何故でございましょう?」

「貴方、クウちゃんのドレスをわたくしに無断で発注したそうですわね?」

「確かにご用意はさせていただきましたが……。申し訳ございません。皇妃様が関わっているとは存じませんでした」

「クウちゃん」

「は、はい」


 皇妃様に真顔で見つめられて、私は直立した。


「クウちゃんのドレスはセラフィーヌのものと共にわたくしが手配いたします。明日の昼前にここにいらっしゃい。ランチと針子の手配はしておきますので」

「はいっ!」

「セラフィーヌもよろしいですね?」

「はい、お母さま」

「バルター、そういうことですので、そちらは予備ということでお願いしますね」

「畏まりました。皇妃様」

「さあ、セラフィーヌ、クウちゃん、行きますよ。夕食の時間です」

「はい、お母さま」

「え、えっと……」


 私、帰るところだったのですけど。

 今夜は工房で、いろいろ生成しようと思っていたのですけど。


「さあ、行きますよ?」

「はいっ!」


 にっこり微笑む皇妃様を前に、断りきれるわけもなく。


 夕食は当然のように豪華だった。

 しかも今夜も、陛下と兄はいなかった。

 今夜も貴族の会合らしい。

 忙しいようだ。

 おかげで楽しく食べることができて幸せだった。


 食事の後はお風呂に入った。

 今日は帰るので服は洗わないでとしっかりメイドさんに伝える。

 私は洗われた。

 今夜は姉も一緒で、特に姉に念入りに洗われた。


 お風呂から出た後はお茶会。

 もう帰りたいです。

 とは言えずに、皇妃様と姉にセラの噂の元となった帝都からザニデア山脈までの旅を語ることになった。

 セラも喜んで聞いてくれていたのでよしとしよう。

 しゃべっていて私も楽しかったし。


 お泊りは固辞した。

 明日は午前の内にやっておきたいことが多い。


 帰宅できたのは夜も遅い時間だった。

 私はベッドに倒れて、そのまま寝た。




ご覧いただきありがとうございました!

よければ評価とブクマもお願いしますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
セラとの打ち合いとか、皇妃様の「バルター、わたくしは怒っていますのよ?」とか好きな場面だけど書籍版2巻ではカットされてて悲しい…… 書籍版2巻はお泊まり会がメインで楽しいから良いんですけどね。
[一言] パンツ丸出し少女の話ですね?
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