表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

455/1362

455 最高のモーニング






「おはよう、エミリーちゃん」

「おはよう、クウちゃん」


 朝。


 腰にひっついて寝ていたエミリーちゃんと一緒に起きて、あれやこれやの支度をした後でお店のテーブルに着いた。


 こほん。


 一息をついてから、私は語る。


「さて、エミリーちゃん。いよいよ集大成です。これより我々は、最高のモーニングに挑もうと思います」

「これで一日の最高メニューが完成だねっ!」

「なのです。ここに至る道程は大変でしたが――。いよいよなのです」


 実に感慨深いことだ。


「ねえ、クウちゃん。今回は、どんな集団にするの? 昼は軍隊、夜は冒険者パーティーだったけど」

「その前に大切なことを伝えます」

「はい……」


 エミリーちゃんが姿勢を整え、緊張の表情を浮かべた。


「今回は、必ず食べられる量で行こう」

「うん。そうだよね。残すのはよくないよね」

「なのです。それは、とてもとても罪深いことなのです」


 とてとてなのだ。


「ちなみにエミリーちゃんは、いつもはどんな朝食を取っているの?」

「芋が多いかなぁ。蒸したお芋。あ、でも、帝都に来てからは、パンとスープのこともあるよ! あと、たまにフルーツも! すごいよね、帝都! なんでも普通に売ってるんだから!」

「だねー」

「クウちゃんは、いつもはどんな朝食なの?」

「私もパンとスープかなー」


 朝はシンプルなことが多い。


「じゃあ、最高のモーニングもパンとスープかな?」


 ふむ。


 そこは悩みどころだ。


 たしかに、それが無難だろう。


 しかし、面白みがない。


 最高とは、すなわち、特別。


 いつもの、よりは、たまのごちそう、で、あるべきだろう。


 しかし、果たして、本当にそうなのだろうか。


 最高だからこそ、いつもの幸せ、で、あるべきなのかも知れない。


 考えてみれば、昼はラーメンだった。

 夜はタコ焼きだった。


 どちらも、いつもの幸せ、だ。


 いや、ちがうか。


 ここは異世界。


 どちらも、ここでは、たまのごちそう、だ。


 いや、ちがうか。


 べつに元の世界でも、ラーメンとタコ焼きは、たまのごちそうだ。


 いや、まて。


 ラーメンといっても種類はある。


 即席麺やカップラーメンは、いつもの幸せだ。

 しかし、外で食べるチャーシューメンは、明らかにたまのごちそう。


 こ、これは……。


「うううううううう。ああああああぁぁぁああ」


「クウちゃん!? どうしたの!? ヒオリちゃん呼んでこようか!?」


「……う、ううん。いいの。大丈夫」


 私は頭を振って、湧き上がった矛盾をいったんは排出した。


「ちなみにエミリーちゃんは、今、なにが食べたい?」

「私?」

「うん。素直な気持ちで」

「……うーん。そうだなぁ。わたしね、クウちゃんと同じのが食べたい」

「私?」


 今度は私がたずねた。


「うん。クウちゃんと同じのがいい」

「そかー」


 私の食べたいものかぁ。


「ていうと、そうだなぁ……。うーん。たとえば、おにぎりとか……」

「おにぎり?」

「お米を固めて、中に具材を入れて、海苔で巻いたものだよー」

「じゃあ、私もそれがいいっ!」

「ならおにぎりにしよっか」

「やったー!」


 作るのは簡単だ。


 お米と海苔と塩と具材を準備して、生成するだけ――というのは味気ないので自分で握ろうかな。


 ともかく。


 問題は具材をどうするか……。


「うーむ」

「どうしたの、クウちゃん」

「うん。おにぎりに入れる具材をどうしようかと思ってね。最高なんだから特別なものがいいんだけど」

「普段はどんなものが入っているの?」

「そうだねえ……。私的には、酸っぱいものか塩っぽいものかなぁ……」


 私はおにぎりと言えば、梅干しと塩昆布が定番だ。


「そかー」


 2人で考える。


「とりあえず、おにぎりは2つにしようか。今回は、コンビで」

「コンビ! わたしとクウちゃんの?」

「うん。そう。最高のモーニングは、私たちのコンビでいこう!」

「やったー!」

「あ、そうだ。なら、お互いにひとつずつ決めよう」

「わかった! 考えるね! 酸っぱいものと塩っぽいものだよね?」

「ううん。せっかくだし、別のものでもいいよー。今回は、いつものというより特別なものだし」

「わかった! じゃあ、別のものにするね!」


 うーむ。


 私もその路線で考えてみるか。


 酸っぱくなくて、塩っぽくもないもの。

 か……。


 まあ、いろいろあるよね……。


 ただ、「これは!」というものを選ぼうとすると……。


 意外と難しい。


「クウちゃん、わたし、決めたよ。わたし、辛いものがいい。姫様ドッグのスパイスなんてどうかな?」

「おお。いいかも。なら私は甘い物にするか! 姫様ロールのシロップ!」


 姫様ドッグと姫様ロールは帝都の大切な味。

 最高のモーニングに組み込む素材として、不足はまったくない。

 むしろ最適と言える。


 早速、作ってみよう。


 まずはキッチンに移動する。


 ご飯は調理技能で生成。


 その後、ご飯、海苔、塩、スパイス、シロップを並べた。

 おっと。

 ニギニギしやすいように、水を入れたボールも置かねば。


 スパイスは本当に激辛だ。

 ツーン、と、鼻に来る。


 シロップは本当に激甘だ。

 見ているだけで、口の中が甘くなってくる。


 これでおにぎりを作れば、最高の味のコントラストになることは請け合いだ。

 しかも、大切な帝都の味。


 まさに、最高のモーニング!


 …………。

 ……。


 いや、待て、私……。


 本当に、本当にそうなのか……?


 本当に、激辛スパイスと激甘シロップで最高のおにぎりが出来るのか……?


 想像してみよう。

 その味を。


 …………。

 ……。


 ふむ。



「ごめん、エミリーちゃん。私は気づいたよ。やっぱりね、定番は最高だからこその定番だと思うんだ」

「そうなんだ?」

「うん。だから、これにしよう。私の定番。すなわち、最高の具材」


 私はアイテム欄から、ユイに貰った梅干しと塩昆布を取り出した。


 梅干しを初めて見たエミリーちゃんが、これは本当に食べ物なのかと心配した顔を私に向けてくるけど。

 任せて!

 大丈夫!

 酸っぱいけどね!

 なんと言っても、安心と実績の定番アイテムだからっ!


 ニギニギ。


 完成。


 コンビ:梅干しおにぎり。

 コンビ:塩昆布おにぎり。


 あと、お茶。


「クウちゃん、ヒオリちゃんの分も作らないと」

「あ、そうだね」


 ヒオリさんはたくさん食べるから、たくさん作ってあげた。


 完成したところでヒオリさんが降りてくる。


 朝の挨拶もそこそこに、ヒオリさんの興味はおにぎりに向かった。


「今朝はおにぎりですか。美味しそうですね」

「いっぱいあるから、いっぱい食べてねー! 最高のモーニングだよー!」

「ありがとうございます! もちろん、いただきます!」


 ヒオリさんも席についた。


 みんなで一緒に、いただきまーす!


 最高のモーニング。


 最高の朝。


 私、幸せ者だねー。


 ぱく。


 うん、おいしいっ!

 やっぱりこれだね!






最後は定番で。

クウとエミリーが考える最高の1日メニュー、堂々完成。

やったぜ\(^o^)/


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
発端の高級タマゴが行方不明に・・・
ついに朝昼晩完成! 私の明日のメニューも決まりました! コンビニおにぎり!→その辺の店でとんこつラーメン!!→銀だこ!!! くぅぅぅぅ〜最&高!!!! お財布へのダメージも最&高!!……!……(*´・…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ