表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

452/1359

452 理想のランチ





 こんにちは、クウちゃんさまです。


 さて。


 唐突なのですが、今、私の目の前には卵がみっつあります。


 藁の敷かれた小さなカゴに入れられた、ひとつで銀貨1枚、約1万円はするという高級な卵です。


 いや、はい。


 ひとつで1万円ですよ。


 いくらなんでも高すぎでしょうという話なのですが、エミリーちゃんが持ってきてくれました。

 ウェーバーさんにもらったものだそうです。


 さて。


 時刻は現在、午前11時30分。


 今、私はお店を開けて、いつものようにカウンターに座っているのだけど、お客さんはいない。

 いるのは、卵を持ってきてくれたエミリーちゃんだけだ。


 なので、そろそろランチにしようと思う。


 と、なれば。


 この卵を使うべきだろう。


 どうしたものか。


「ねえ、クウちゃん」


 私が悩んでいると、カウンターに顎を乗せたエミリーちゃんが不思議そうな眼差しで私を見上げた。


「どうしたの、エミリーちゃん」

「わたし、知ってるよ?」

「どしたの?」

「卵が割れて、産まれるもの」

「鳥?」

「ううん」

「なら、カメとか?」

「ううん」

「んー。なら、なんだろ……。魔物?」

「ううん。お父さんが言うには、まごなんだって」

「まご?」

「子供の子供の孫」

「へー」

「しかも、真面目に働かない孫なんだって」


 おじいさんかおばあさんが、温めて還したのかな?

 て、それはないか。

 家族同然に鶏を飼育していたのかな?

 それを孫が手伝ってくれない?

 とか?


 と思ったら。


「なまったまご。なんだって」

「なるほど」


 生卵。

 なまった孫。


「ねえ、エミリーちゃん」

「なぁに、クウちゃん」

「今日はね、せっかくだし、この卵でランチを作ろうと思うんだけど……。エミリーちゃんはなにが食べたい?」

「わたし?」

「うん」


 たずねると、しばらく考えて、エミリーちゃんは言った。


「なまったまご?」

「残念だけど、孫は食べられないかなー」

「じゃあ、えっと……」

「なんでもいいよー」


 なんでもタイム、スタート。


「じゃあ、ゆでたまご!」


 それ漫画家!


 なんでもタイム、終了。


 記録3秒。


 ……じゃ、ないか。


 あぶないあぶない。


 あやうく、このクウちゃんさまともあろう者が、ここでは通じないツッコミをしてしまうところだった。


「ゆでたまごかぁ……。じゃあ、そうしようか」

「やったー!」


 なんでも達成!

 おめでとう!

 ありがとう!


「でも、さすがにゆでたまごだけだと味気ないね。ゆでたまごをベースとして理想のランチを構成してみようか」

「……理想のランチ?」

「うん。そう。理想のランチを、今日は食べよ」


 というわけで、シンキングターイム。


「まずは、そうだねえ……。エミリーちゃんは、ゆでたまごと一緒に食べるとしたらなにがいい?」

「パン!」

「なるほど。いいね。じゃあ、ゆでたまごに、パン」


 私は頭の中に理想図を描いていく。


 と、すると……。


 普通に考えれば、スープとサラダがほしいね。


 でもそれだと喫茶店の、ちょっと豪華なモーニングセットみたいだ。


 ランチって感じじゃない。


 となれば――。


 私が提案すべきなのは、なんだろうか。


 ゆでたまごと、パン。


 この組み合わせで心配されるのは、口がパサパサになるということだ。


 つまり、私が提案すべきなのは、そのバランスを取る料理――。


 スープでもサラダでもなく。

 トロトロとしたもの。

 さらにはランチらしく、力の付くものがいい。


「じゃあ、私はそこにグラタンくんを投入しようっ!」

「やったー! グラタン大好きー!」

「さあ、戦力が整ってきました。さらにエミリーちゃん、我が軍を強化するとすれば次はなにかな?」

「……んー。なんだろー」

「そうだねえ。パンとグラタンは主力だし、ゆでたまごはなんだろ、遊撃部隊なのかなぁ。とするとほしいのは、あ、そうだ! 先鋒隊だね! 最初に突撃して勢いを付ける部隊!」

「じゃあ、姫様ドッグ!」

「ふむ。それだと、パンとパンでかぶってしまうね」

「そかー。なら、姫様ドッグのソーセージ!」

「お。それはいいね!」

「激辛ソースつき!」

「いいねいいね! 突破力ありそう! 先鋒隊にはぴったり!」

「やったー!」


 陣営がさらに強化された。


 激辛ソーセージで先陣を切り、主力のパンとグラタンにつなげて、さらにはゆでたまごで遊撃!


 完璧だ。


 完璧すぎて怖いくらいの布陣だ。


 しかし、不安がある。


「……どうしたの、クウちゃん? 浮かない顔になったよ?」

「うん。我らの部隊に一点の不安要素を見つけてね」

「なぁに?」

「食後のデザート」

「ねえ、クウちゃん。わたし、知ってるよ。デザートは贅沢なものだから、毎日は食べられないんだよ」

「たしかに」


 それはそうか。


 贅沢に慣れてはいけない。


「でも、なにもないのはさみしいよね」


 私は考える。


「ゆでたまごは?」

「ゆでたまごは遊撃隊だから、途中で食べるんだよ」

「そかー」


 難しい。


 デザートではなく、最後の締めとして満足感を得られるもの。


 最後の一打を与える最終兵器。


 イメージとしては、なんだろう……。


 大砲……。


 大きな一撃……。


 それが今、私とエミリーちゃんのランチには必要だ。





なまったまご(´・ω・`)

ただ、それだけが言いたかった……(´・ω:;.:...

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
鈍った孫ちゃん! 訛った孫ちゃん! 孫ちゃんは無条件で可愛いものですしどちらのほうになまっててもほっこりしちゃいますねぇ(*´ω`*)
[一言] 筋肉バス〇ー。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ