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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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450 ダンジョンで激闘していた






 こんにちは、クウちゃんさまです。


 私は今、アンジェと2人でダンジョンに来ております。

 場所は聖国のバドローナ地下洞。

 ボス部屋の奥。

 扉を開ければ、2つ首の黒い獣がいるはずだ。


「……ねえ、クウ。ホントにその武器でやるの?」

「うんっ!」


 私は両手につけた「鉄の爪」をガシガシと合わせてから、カッコよく格闘なポーズを決めた。


「どう、似合ってる?」

「似合ってはいるけど、そんなので本当に戦えるの?」

「たぶん」

「大丈夫……?」


 思いっきり眉をひそめられた。


「へーきへーき。無理そうなら剣に戻すからさ」


 そう。


 私は今日、『格闘』で戦うつもりなのだ。

 私の格闘スキルは未だ一桁。

 スキルカンストの小剣や魔法と比べれば、かなり戦闘力は落ちる。

 とはいえ、今までの経験的に考えて、問題はないはずだ。

 なにしろ私は強い。

 自分でもびっくりするくらいに、圧倒的に強い。

 スキル一桁でも、基礎ステータスだけで普通の魔物なら圧倒できるはずだ。

 でも慢心してはいけない。

 故に、格闘スキルを上げようと思ったのだ。

 素手でも戦えれば、対応できる局面が増えるのは疑いなしだし。


「アンジェは剣でいいの? 後衛をやるなら杖もあるよ?」


 アンジェはミスリルソードを両手で握っていた。

 防具はつけていない。

 学校帰りのまま、ブラウスにスカートという軽装だ。

 カバンは私が預かってアイテム欄に入れた。


「剣でいいわ。私も前に出たい」

「じゃあ、横に並んで戦おうか」

「うん。お願い」


 出会った頃、アンジェは普通に魔術師志望だった。

 フォーメーションを組んで遊んだことがあるけど、その時にもアンジェは後衛というのが基本だった。

 でも、夏の旅の中でセラの剣技に感化されて――。

 対抗意識を燃やして、かな。

 アンジェも剣を振るうようになった。

 夏休みにはメイヴィスさんに、かなり鍛えられたようだ。

 果たして、どれだけできるのか。

 楽しみだ。


 ふう――と、アンジェが緊張した顔で息を吐いた。


「まさかいきなりダンジョンに来るとは思わなかったわ。ねえ、クウ。私、つい30分前まで学校にいたのよ」

「あはは。だねー」

「ホントにもう。でも、嬉しいわ。やっとクウと戦えるのね」

「おまたせ」

「ありがとね。わざわざ来てくれて」


 思えば、最初にパーティーを組もうと約束したのはアンジェだった。

 すっかり後回しになってしまったけど。


「じゃあ、強化魔法をかけるね」

「あ、待って」

「どしたの?」

「ねえ、クウ。私の強化魔法じゃ、ダンジョンで戦うには弱いかな? かけるから見てもらってもいい?」


 そういうとアンジェは、火と風の強化魔法を自身にかけた。

 フェアリーズリングの補佐があるとはいえ、セラと同様の見事な腕前だった。

 みんな、ホント、強くなってるねえ……。


 ただ、アンジェの強化魔法は、敏捷性と攻撃力に作用するものだ。


 たしかに見事だけど、ダンジョンで戦うには心もとない。


 今はまだ、防御力が一番に大切だ。


「そっかぁ、残念。じゃあ、お願いしてもいい?」

「うん。まかせて」


 怪我をすることがないように、しっかりと強化魔法をかけた。


「よし。準備完了だね。まずはボスからやってみようか」

「……いきなりボスっていうのもすごいわよね」

「あはは。だいじょーぶ。ここ、聖国のダンジョンだし。知り合いなんて絶対にいないからさー」

「そういう問題じゃないけどね。まあいいけど」


 では!


 というところで。


 ドアの向こうから大きな音が響いた。


 攻撃魔法。


 火の玉でも炸裂したのだろうか。


『いくぞ、てめぇらぁぁぁぁぁ!』

『おおおおおおお!』


 野太い声が聞こえた。

 冒険者パーティーがボスに挑戦を始めたようだ。


 ふむ。


「ごめん、知り合いが来たみたい」

「言ったそばから」


 扉の向こうの声には聞き覚えがあった。

 なんだかんだと縁のある、暴れ牛を自称する粗暴な冒険者。

 今では聖女ユイにも信頼されている聖戦士。

 メガモウだ。


「ねえ、クウ。どうする?」

「どうしようか」


 困ったね。


 というか、メガモウに仲間なんていたんだね……。


 なんて失礼なことに関心している内、扉の向こう側での戦いは一気にエスカレートしていった。

 大激戦のようだ。


『ぐぁぁぁぁ!』

『ワルダス! いったん下がれ! モッセナ、ヒールを!』

『…………』

『モッセナ! びびってんじぇねぇぞ!』

『は、はい……!』

『うおおおおおおおおおお! 俺達は負けねぇ! こんなところで、負けるわけにはいかねぇんだよぉぉぉ!』


「ねえ、クウ。苦戦しているみたいだけど、助けてあげなくていいの?」

「うーん。どうしようかー」


 もちろん、本当にヤバそうなら助ける。

 だけどまだ激戦中だ。

 下手に手を出せば、それこそ本気で怒られるだろう。


「でも、知り合いなのよね? こっそりと少しだけ手伝ってあげたら?」

「そだね。そうしよっか」


 というわけで。


 少しだけ扉を開けて、私は1人でボス部屋に出た。

 もちろん『透化』はしている。


 うわ……。


 メガモウたちの様子を見て驚いた。


 血まみれだ……。


 回復の魔術が追いついていない。


 ヒーラーらしき男の子は、すでに満身創痍だ。

 もう1人いるヒーラーの人も、とっくに限界が来ているようだ。

 火の魔術師らしき人も魔力切れ寸前の様子だ。


 前に出ている3人は――。


 あ。


 軽装の1人が黒い獣の爪に弾き飛ばされた。


 不味い状況だ。


 残る重装の2人が武器を構え直す。


 1人はメガモウ。

 もう1人も、メガモウに負けじ劣らずの悪党っぽい人だ。


「……へっ。まだいけるか、メガモウ」

「おうよ」

「俺が突っ込んで隙を作ってやるからよ。テメェ、しっかりと力を溜めて、でかい一撃をくれてやれ」

「ワルダス、テメェ――。まさか死ぬ気か?」

「んなわけがあるか、バカ野郎が」





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