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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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447 クウちゃんの午後





「ねえ、クウちゃん」

「なぁに、エミリーちゃん」

「お客さん、来ないね」

「雨だしねえ」


 しとしと。

 しとしと。


 平日の午後、外には雨が降り続いている。


 私はエミリーちゃんと2人、ぼーっと店番をしていた。


 11月の中旬。


 オダンさんご一家が、最近、帝都に引っ越してきた。

 家は片付いたみたいだけど、お店の方はまだてんやわんやでエミリーちゃんがお手伝いできる状態ではない。

 というわけで、うちにアルバイトに来ている。

 とはいえ、日給はなし。

 タダ。

 遊びに来ているのと同じだ。

 私としては日給銀貨1枚くらいあげてもよかったんだけど、それはオダンさんにキツく止められた。

 まともに働きもせずお金だけ貰うことを覚えさせてはいけない。

 と……。

 うん、はい。

 まともに働かないお店でごめんなさい。


「ねえ、クウちゃん」

「なぁに、エミリーちゃん」

「あのね。このあいだの商業ギルドの規則のことなんだけど……」

「おーっと! 思い出したー! そういえば作らなくちゃいけないものがあるんだったー。少し工房に入るから、エミリーちゃん、店番をお願いしてもいい?」

「うん。いいよ。わかった」


 あぶない……。


 あやうく難しいことを質問されるところだった。


 私は工房に入った。


 ふむ。


 これはいかんですよ。


 勉強のことで見栄を張ってしまったせいで、エミリーちゃんと接するのがとてもとても大変になってしまった。

 とてとてだ。


 なんとかせねば……。


 しばらくヒオリさんにお店にいてもらう?


 でもなぁ……。


 ヒオリさん、学院でも頼りにされているっぽいんだよねえ。


 さすがに申し訳ない。


 いっそ、本当のことを言っちゃう……?


 うう。


 それは嫌だぁぁぁぁぁぁ!


 だって私は、天才で秀才で才能の塊で、なんでも知っててなんでもできちゃうクウちゃんでいたのだ。


 し、しかし、このままではエミリーちゃんと接し辛い……。


 そうだ!


 ひらめいた!


 この手だ!


 この手しかない!


 私は早速、テーブルの角に頭をぶつけることにした。


 どーん。


 テーブルにぶつかって、倒れる。


「クウちゃんっ! どうしたの?」


 音に驚いて工房にやってきたエミリーちゃんが私を発見する。


「クウちゃん!」


 あわてて介抱に来てくれた。


「うう……」


 私は目を開ける。

 そして、言うのだ。


「ごめんね、エミリーちゃん。生成に失敗しちゃったよ……。おかげで記憶がだいぶ飛んじゃったよ……」

「クウちゃん! 大丈夫なのクウちゃん!」

「うん、ありがとう……。私は平気だよ。被害は記憶だけだし……」

「……クウちゃん。わたしのことはわかる?」

「うん。わかるよ。エミリーちゃん」

「よかったぁ」


 エミリーちゃんが泣いて安心する。


 泣かしてごめんね。


 でも、しょうがないの。


 許して。


 だって、これは、そう――。


 計画通り。


 これで難しいことを質問されても、記憶が飛んだと言えるのだ。


『クウちゃん! エミリーちゃん! 遊びに来ましたー!』


 お店からセラの声が聞こえた。


「セラちゃん! セラちゃん!」


 エミリーちゃんが切迫した声で呼びかけると、セラが工房に走ってきた。


「エミリーちゃん、どうかしたん――。

 え――。

 クウちゃん!?

 一体、何があったのですか!?」


 倒れている私と介抱するエミリーちゃんを見てセラが驚く。


「セラちゃん、大変だよ。クウちゃんが事故で記憶をなくしちゃって……」


 エミリーちゃんが涙ながらにつぶやく。


「ええええええええ!?」


 いや、あの。

 セラ、そんなたいしたことじゃないからね?


「どうしたのですか、セラフィーヌ。そのように大きな声をあげて」


 え。


 皇妃様まで来た。


「お母さま! クウちゃんが事故で記憶をなくしたそうなのです!」

「クウちゃん、それは本当なのですか?」

「あ、えっと。いや、あの……。はい……事故で……」

「わかりました。すぐに大宮殿に行きましょう。クウちゃんの魔法でも治せないものにどれだけの効果があるのかわかりませんが、医者に診てもらうべきです。さあ、すぐに行きますよ」

「わたくしが運びます!」

「セラちゃん、わたしもついていっていい!? 心配だよ!」

「お母さま、よろしいでしょうか!?」

「ええ。エミリーちゃんでしたわよね。一緒に来なさい」


 え。


 あの。


「クウちゃん、大丈夫です! お医者様に診てもらいましょう!」


 強化魔法をかけたセラが、私をお姫様抱っこした。


 そのまま馬車に乗った。


 あの。


 えっと。


 あのね……。


 そんな大げさにすることではないんだけど……。


 みんなのあまりに真剣な顔に、私は正直、とてもとても混乱状態に陥ってうまく言い訳することができなかった。


 雨の中、馬車は全速で大宮殿に戻った。


 すぐに伝令が飛んだ。


 私は医務室に入れられた。


 陛下にバルターさん、ローゼントさんにアルビオさんまでもが、連絡を受けて駆けつけてくるという。

 帝国の重鎮が私の嘘の前に勢揃いしようとしている……。

 ヒオリさんのところにも伝令が向かったようだ……。


 これは、ぅん。


 計り知れないほどに深刻な空気だ。


 深刻すぎて、嘘でしたーあはははー、って言えない……。


 完全にタイミングを逃した……。


 マズい……。


 とてつもない大騒ぎになってきた……。






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― 新着の感想 ―
[一言] カメ4号出撃します!
2022/06/19 19:38 サバの煮付け
[一言] クウちゃん・・・イタッ、イタ~イ、ココロガ。
[一言] > とてつもない大騒ぎになってきた……。 助けて女神さまー
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