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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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446 閑話・皇帝ハイセルは確認する





「――しかしまさか、本人の知らぬ内にとは言え、トリスティンでの暴動にクウが関わっていたとはな」

「いやはや、驚きましたな」


 パーティーの後、俺はバルターと意見のすり合わせを行う。

 俺、ハイセルは皇帝であり、俺の判断が国の今後を決める。

 知り得た情報の確認作業は欠かせない。


「クウの張った結界が強力すぎて、呪具にまでも影響を及ぼし、呪具の効果を消失させたということで良いのだよな?」


 誤解のないよう、俺はあらためてたずねる。


「聖女の話では、そういうことでしたな」

「……この帝都にも、もうクウの結界は張られているのだろうか」

「いえ、それはないかと。今のところ、呪具で拘束された帝都の犯罪者に異変は見られていません」

「一体、どういうことだと思う?」


 聖女の話では、クウはこの帝都にも結界を張るつもりのようだった。

 ただ現状、帝都に結界の張られた様子はない。


「クウちゃんのことですから忘れているのかと」


 バルターの口から出てきた推測は、なんとも肩の力の抜けるものだったが、俺もそう思わなくはない。

 なにしろ最近、クウは多忙だった。

 あいつの中では、トリスティンでの騒動など、とっくに過去のものだ。


「張ってもらうべきだと思うか?」

「難しいところですな」

「うむ……」


 クウの強力な結界は、悪魔の侵入を恐らく完全に防ぐ。

 だが強力すぎて、呪具の力すら消し去る。


 クウに相談するのが一番だろうが……。

 それも迷うところだった。

 何故なら聖女ユイリアからこの件に関してクウに相談するのはやめてほしいと頭を下げられている。

 聖女ユイリアは、トリスティンでの暴動がクウの魔法をきっかけにしていることを隠したい様子だった。

 そんなもの、いくら隠したところで、やがてクウが自分で気づくのは確実だ。

 何しろ、クウ自身の魔法なのだ。

 しかし、俺の口からそれをクウに語れば、聖女からの心象は最悪となる。


 聖女ユイリアと薔薇姫エリカが年頃の少女としての顔を見せるのは、クウが関わる時に限る。

 そうでない時の2人は、すでに油断のならない為政者だ。

 話していると本当に、クウやセラフィーヌと同年代の少女かと疑う。


 薔薇姫エリカの浪費王女という評判は、とっくに過去のものだ。

 最近では、官僚に加えて軍部からの支持も得て、ジルドリアの実質的な支配権を得つつあると言う。


 聖女ユイリアは事ある度に謙遜して実権は聖王と総大司教にあると言うが、それは言葉だけのことだ。

 結局は、国策の大半を自ら決めている。


 2人とも、甘く見て良い相手ではない。


 結局、結界の問題については、アヤシーナ商会関連の捜査にケリがついてから改めて考えることにした。

 クウが勝手に張ってしまったら、その時はその時だ。


「――あとは、例のお笑い祭りか」

「平和の英雄決定戦、ですな」

「まさかあそこまで、なにも考えずに企画されていたとは」


 とりあえずステージだけ用意して、あとは成り行き任せ。

 聖女もクウも、そんな様子だった。


 聖女が主催して、精霊が願いを叶える――。


 それがどれだけのものなのか、あの2人はまったく理解していない。


 結局、俺の提案で決定戦はこうなった。


 12月16日 参加申込抽選会

 12月17日 予選

 12月18日 予選

 12月19日 本戦


 今日は11月の1日。


 あと1ヶ月半しかないが、まだそれだけの準備期間がある。

 たとえ1万の参加者が来ても、最悪、「くじ引き」で決めてしまえば、なんとかなるだろう。

 参加者が少なければ、予選はなしにすればいいだけだ。


「大祭については、陛下はどうされるおつもりで?」

「迷っているところだ」


 大祭では、ジルドリアとトリスティンの両国王が、聖女ユイリアから衆目の前で祝福を受ける。


 トリスティンのラムス王は、悪魔と契約を交わし、ド・ミの国の蹂躙を始めとした多くの蛮行を行ってきた。

 それはすべて悪魔による洗脳の結果とされているが、果たして本当にそれだけかは怪しいところだ。

 実際、ラムス王は聖女の宣言に激怒し、洗脳されているのは聖女だとして聖女奪還を口実に聖国を攻めようとした。

 結果としては、クウの結界によって王都の獣人奴隷が解放され――。

 王都は大混乱に陥り――。

 ラムス王は手のひらを返し、聖女に助けを求めた。


 ジルドリアの国王は圧政の結果、民の暴動を招いている。

 暴動は、薔薇姫の活躍で沈静化されたが……。


 まず、俺がその2人と共に祝福を受けることは有り得ない。

 それは確実に我が帝国の威信を下げる行為だ。


 聖女からもそうした提案はなかった。


 かわりに聖女からは、見届人として舞台に上がって欲しいと頼まれた。


 聖女と対等な立場の者として、だ。


 悪い話ではない。


 だが、聖女の世界に組み込まれる事実に違いはない。


 受けるべきか。

 断るべきか。


 迷うところだった。


「バルター、おまえはどう考える?」

「お受けになるべきかと」

「そうか――。そうだな――」


 そもそも前日のお笑い祭りには参加するのだ。

 もうひとつ増えたところで同じか。


 俺は参加を決めた。


 明日の午前、聖女と薔薇姫とは、あらためて会談をする予定だ。


 本当にクウには感謝するところだ。


 ここまで簡単に話が進むのは、決定権を持った者同士が、顔を突き合わせて話ができるからだ。


 あとは、やはり。


 クウが間に入っているからだろう。


 クウには妙な安心感がある。


 クウがいるなら、まあ、大丈夫なのだろう――。


 俺も実のところ、そう思う部分がある。


 聖女ユイリアと薔薇姫エリカは、絶対的にそう思っている様子だ。






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― 新着の感想 ―
[一言] 11/1→12/16はどう考えても2ヶ月無いと思いますが…… 1ヶ月半、が妥当では?
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