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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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442 なんでもタイム





 なんでもタイム、スタート。


 前回のユイの記録は、たしか8秒だったっけ。


 驚いている間にその記録は抜いたけど……。


「ねえ、ユイ。私、そんなこと言った覚えはないんだけど……?」

「そうだっけ?」

「うん」


 首をひねるユイに、私はうなずいた。


「でも、もうそうやって告知しちゃったよ? 優勝者には、精霊様がどんな願いでも叶えてくれるでしょうって」

「しょうってことは、叶えてくれるかも知れない的な?」

「叶えてくれるんだよね?」

「私に聞かれても……」


 困るというものだ。


「でもさ、クウ。ちょっと考えてみて?」

「なにを?」

「その方が絶対に盛り上がるよ? もう三国全部熱狂だよ? 超盛り上がること確実なのにしないの?」

「ふむ……」


 でしょう、なら、絶対にってことではないよね。

 それに確かに。

 その方が盛り上がるのは確実だ。


「まあ、いいか。ならユイ、それでいこう! 決定!」


 うん。


 そうするかー!


「聖女様――。質問をよろしいでしょうか」


 少しだけ紅茶を口につけてから、ディレーナさんが静かにたずねてくる。


「はい。なんでしょう?」

「どんな願いにも――には、婚約や結婚も含まれますか?」

「もちろんです。なんでも、ですから」

「そうですか。ありがとうございます」


 場に沈黙が降りた。


 ふむ。


 なんとなく不穏な空気を感じる。


 というか、そもそも婚約や結婚なんて私の手に余る。

 やるとすればせいぜい、精霊として結婚や婚約を認めるか、ゼノにお願いして精神操作するくらいだ。

 ……まあ、やれちゃうのか、それだと。

 いやダメだからね私!

 相手の合意がなければそういうお願いはキャンセル決定!


「なんでも、ですか……」


 お姉さまがつぶやく。

 お姉さまのお願いはなんになるのだろうか。

 ケーキ食べ放題?

 クッキーのお城?

 と思ったら。


「……世界征服、なんて面白いかも知れませんね」


 とかつぶやいて、ふふふ、と笑う。

 冗談ですよね……?


「なんでも……。わたくしはそれなら――」


 セラのお願いは平気な気がする!

 セラに優勝してもらおう!

 と思ったら。


「……クウちゃんを死ぬまで独占できる権利とか、素敵ですね」


 とかつぶやいて、ふふふ、と笑う。

 いや、うん。

 普通にお友だちでいようね?


「スオナには、なにかお願い事とかはないの?」


 私は、ずっと黙って紅茶を飲んでいるスオナに話を振ってみた。


「僕かい……?」

「うん。なんでもいいよー」

「そうだね……。それなら……。母さんを蘇らせてほしい、かな」

「……そかー」


 遊び半分で聞いてごめん。


「安心したまえ。そもそも僕にお笑いなんて無理だよ。だから僕の願いは気にしなくてもいいさ」

「いいえ、スオナさん、可能性を捨ててはいけません。そもそも平和の英雄決定戦なのですから、普通に一芸でも良いということはないかしら?」


 かぶりを振ったスオナに力強く声をかけて私に質問してくるのは、ディレーナさんだった。


「はい、まあ、そうですね。お笑いじゃなくても、みんなを幸せにできる芸ならオーケーだとは思います」

「クウちゃんが決めるのではなくって?」

「いえ、そこはほら、最高審査員がいるので――」


 みんなの視線が一斉にマリエに向いた。


 マリエはさっと目をそらす。


 その後、静かに目を閉じて、姿勢を正し、まさに自然と一体化するかのように気配を消していった。


「マリエさん、そのあたりはどうなのですか?」


 しかし見つかった!


 ディレーナさんに名指しで質問されて、マリエはおそるおそる、そっと目を開けてまわりの様子を見た。

 相変わらずみんなの視線が集まっている。

 私もマリエを見ていた。


「……あのお、私じゃなくてユイさんに聞いたほうが」

「私? 私は駄目だよ。だって私も参加するし」

「参加するんですかっ!?」

「うん。だって、私にもお願い事はあるし」


 ユイがにこにこと言う。


「あら、それならわたくしも参加させていただきますの。精霊様に王国の加護をお願いしたいですわ」

「えっ。エリカは結婚じゃないんだ?」


 参加宣言したエリカに、ユイが驚いたような顔を見せる。


「まさかユイの願い事って、結婚とかなの?」


 私はたずねた。

 するとユイは、もじもじと顔を赤らめて、


「う、うん……。だって私、聖女だからそういうの難しいし……。精霊様なら上手くご縁を結んでくれるかなぁって」


 あの……。


 なんかまるで、精霊様どころか神様にお願いする雰囲気なんだけど。

 少なくともユイとエリカはわかってるよね?

 精霊様って、私だからね?

 知ってるよね?

 そんなの無理だって、わかるよね?


「聖女様にエリカさんが参加されるのなら、わたくしが参加してもなんの問題もありませんね。わたくしも出ます」


 ディレーナさんまでもが参加を宣言する。


「もちろん、わたくしも出ますよっ!」

「セラは駄目だよー」

「うう。そうなんですかぁ?」

「だって陛下が審査員だし。ユイも審査員なんだから参加はダメだよー」

「クウは私に結婚するなっていうの!? なんとかしてよー!」

「駄目なものは駄目です」

「決めるのはマリエちゃんだよね!?」

「いいえ。誰が決めようが、私がダメと言ったらダメです」


「そうですそうですその通りっ! クウちゃんですよね決めるのはっ!」


 すかさずマリエが太鼓持ちをしてくる。


「うう……。ひーどーいー」

「ユイは審査員です。いいね?」

「うう……。はい……」


 涙目になりつつもユイはあきらめてくれた。

 ユイに優勝されたら大変すぎる。

 大人しく審査員をしてもらおう。


「……それで、ディレーナさんは本当に出るんですか? はっきり言って悪目立ちしますよ? オススメはしません。エリカもだけど」


 私は一応確認した。


「……エリカさんは、聖女様が出なくても参加されるのですか?」

「……ディレーナさんは、どうされるおつもりで?」


 結局、2人とも参加を辞退した。

 うん。

 さすがにその方がいいと思う。

 だってどっちが優勝しても、確実に面倒だし!






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