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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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441 11月のお茶会





 11月になった。

 もう秋だ。

 見上げれば、澄んだ青空が高く広がっている。

 奥庭園の樹木も、いつの間にか赤や黄色に色づいている。


 今日は久しぶりのみんなでのお茶会。


 私たちは奥庭園の東屋に集まって、テーブルを囲んで座っていた。

 参加者は9人だ。

 王女のエリカ。

 聖女のユイ。

 ユイの肩に乗っている白いフェレットのリト。

 第一皇女のアリーシャお姉さま。

 第二皇女のセラ。

 公爵令嬢のディレーナさん

 映像屋のマリエ。

 水魔術師のスオナ。

 そして、私。


 スオナは今、ディレーナさんのお父さんであるアロド公爵の元で勉強と魔術の修行に励んでいる。

 今日はディレーナさんが息抜きにと連れてきてくれた。


 スオナとは、次に会う時は学院で――。

 と、約束していたけど。

 思わぬ再会になった。


 スオナは、かなり緊張している。

 カチカチだ。

 私の知っている、学者然というか鷹揚として捉えどころのない不思議少女スオナとはまるで別人だ。

 相変わらず、王侯貴族が苦手のようだ。

 とはいえ、ディレーナさんとは、それなりに仲良くしているようだ。

 よかったよかった。

 ちなみに妖精のアクアはお留守番のようだ。


 妖精といえばミルもいるけど、あの子は妖精郷に帰っている。

 オダウェル商会と妖精郷との正式な取り引きが始まって、妖精側の顔役としてしばらく頑張るそうだ。

 余計なことをしてオダンさんやアルくんに迷惑をかけないといいけど。


 あとは、ナオがいればよかったんだけど……。

 残念ながらナオからの連絡はない。

 ニナさんに会った後はジルドリア王国で冒険者になる予定だったけど、まだ王都にも姿は見せていないそうだ。

 無事だとは思う。

 今のナオが、簡単に捕まって奴隷にされることはないだろうし。

 それに運命の勇者だし。

 ただ、なにをやっているのかなぁ、とは思う。

 ナオの人生は七難八苦。

 だけど、その合間の、穏やかな時間を過ごしてくれていれば嬉しい。


 お茶会が始まる。


 最初にアリーシャお姉さまが立ち上がって挨拶をする。

 お姉さまは、すっかりスリムになった。

 もはやプヨプヨはどこにもない。

 むしろ筋肉質になりすぎて、もう少しプヨプヨしていてもいいのですよと皇妃様には言われた。

 というわけで、スイーツは本日、ついに解禁された。


 まあ、はい。


 10月にもこっそりと私のローカロリースイーツは食べていましたが。

 それは私たちだけの秘密だ。


 エリカとユイは、久しぶりに公の場で接してみると――。

 なんだかすごく大人びて見える。

 表情や仕草のひとつひとつからして、ちゃんとした王女様と、ちゃんとした聖女様に見える。

 カメから人に戻って、責任ある仕事をしているからだろうか。


 特にエリカなんて、ディレーナさんと再会しても、前のように舌戦を交わすこともなく穏やかだ。

 お兄さまのこともまったく話題に出さない。


 お茶会は楽しく進んだ。

 会話は、アリーシャお姉さまとエリカが中心になって、最近あったあんなことやこんなこと――。

 ダンジョンでの修行や、王国での混乱。

 それをいかに乗り切ってきたかを語る。

 たまに炸裂するマリエのディレーナさまヨイショ砲も今日は絶好調だ。


 ただ、うん。


 私は正直、ちょっと物足りない。


 私の顔色に気づいたエリカが、私に声をかけてくる。


「……クウ、先程から浮かない顔をして、どうかいたしましたの?」

「いや、うん。まあね」

「心配ごとでもありますの?」


 エリカがたずねると、みんなの視線が私に向いた。


「クウちゃん、なにかあったんですか?」


 セラも心配してくる。


「いや、たいしたことじゃないんだけどね……。なんでみんな、そんなに仲良しなのかなぁと思って」

「どういうことですの?」


 エリカが首をひねる。


「いや、だってさ、前のお茶会って、私のいない時、けっこうバトルを繰り広げていたんだよね? 私、そういうのが見たかったというか、もっとこう、マリエには目を回してほしいというか」

「あの、クウちゃん……? 私に振らなくていいからね……?」

「いや、うん。だってさ、マリエってそういうキャラだよね? なんだかんだ巻き込まれちゃうヒロイン的な」

「……あの、クウちゃん。私、ここにいる時点で十分にそんな感じだからもうこれ以上はいいよ、ホントに。それに私はヒロインじゃないし。言うなれば背景の1人だよねどう考えても」


「あはは。またまたマリエちゃんったらー。マリエちゃん、世界の運命を決める大会の最高審査員なのにー。背景なんてとんでもないよー」


 ユイがほがらかに笑う。


「世界の運命とは穏やかでありませんね……。聖女様、それは一体……」


 ああ、そうか。

 ディレーナさんには細かい話をしていないんだった。

 ここは私が説明しよう。


「今度、聖国でお笑い大会をやるんですよー。それでマリエに、大会の優勝者を決めてもらおうと思いまして」

「そうなんですのね――。ああ、そういえば、前回のお茶会の時に、マリエは審判者となりましたか」


 さすがはディレーナさん。

 理解が早い。


「はい。そうです。それでマリエに決まりました」

「それで、そのお笑い大会というのは、聖国の大祭のことなのかしら?」

「はい。そうです」

「そうなんですのね……。もっと厳かな祭と思っていましたが……」

「ふふー。私が司会をします」


 えへん。


 お任せください盛り上げますよー。


 私が胸を張っていると、エリカが横から付け足してきた。


「……一応、補足しておきますけど、クウが言っているのは大祭前日に行われる平和の英雄決定戦というイベントのことですの。大祭自体は、厳かなものであることに変わり有りません」

「あれ。そうなの? 大祭って厳かなんだ?」


 それには私が驚いた。


「当然ですの」

「お祭りっていうから、てっきり、大騒ぎするものだと思ってたけど……」


 私がそう言うと、エリカとユイは静かに首を横に振った。

 冗談めかした様子はない。

 ふむ。

 ちがったのか。


「あれ、じゃあ、もしかして、お笑い大会って場違い?」

「なにを今更」


 エリカが肩をすくめた。


「でもユイだって乗り気だったよね……?」

「え、あ、うん。私はほら、クウがやるっていうなら、なんでもやるよ? 私、クウの子分だし」

「いや友だちだよね!?」


 むしろ前世からの親友だよね!?

 私、泣くよ!?


 私が泣きかけちゃってる中、ディレーナさんは話を続けた。


「しかし、聖女様。では、お笑い大会で世界の運命が決まるというのは、一体どういうことなのですか?」

「それはだって、優勝者には、精霊様がどんな願いでもひとつ叶えてくれるっていう副賞があるから」


 ユイがなんでもないことのように、ほがらかに言う。


 私たち、しばしの沈黙。


 その後。


 な、なんだってー!?


 いや、はい、私も驚いて言っちゃいましたよ。

 なにしろ初耳だし。





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― 新着の感想 ―
[気になる点] このままだと、お笑い大会にボンバーが出場すると面倒ですね……。 願い事のオチを楽しみにしています。
[一言] ここに来てユイからのまさかの無茶ぶり(笑)
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