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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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433/1359

433 ダンジョンでの戦い






 セラは怖気づかなかった。


 勇敢に突進していった。


「セラ! 釣り! 1匹を釣って!」

「てりゃあああああ!」


 私の作戦指示なんて忘れて、4匹の敵の真っ只中へと!


 怖気づいてはいない……。


 怖気づいてはいないけど暴走したぁぁぁ!


「お姉さま! 援護を!」

「…………」

「お姉さま!」


 呆けていたお姉さまに鋭く声をかける。


「はっ! そ、そうですわね! 待ちなさい、セラフィーヌ!」


 お姉さまには逆によかったかも知れない。

 怖気づく暇もなく緊急事態となって、お姉さまは剣を抜き、突進する妹の後を慌てて追いかけた。


 お姉さまには私の強化魔法がかかっている。

 以前のマーレ古墳では、ボスの猛攻を受けても平気だった。

 普通の敵に不覚を取ることはない。


 私はセラを注視する。


 セラの強化魔法は自前だ。

 果たして、ダンジョン中層の魔物に通じるだけの強度はあるのか。


「やーっ!」


 セラが先制の突きを放つ。

 練習の成果は出ている。

 正確にトカゲの鼻先を突くことができた。

 ただトカゲは巨体だ。

 セラの10倍以上は確実に重量がある。

 普通なら弾き飛ばされておわりだ。

 11歳の少女の筋力では、どうあがいても抗いきれない。


 押し勝てるかどうかは、魔力次第――。


 さあ、どうかな!


 おお!


 セラの一撃が、トカゲの分厚い皮膚を貫いた!


 素早く剣を抜いて次の攻撃姿勢に移る。


 トカゲの鼻から青い血が吹きこぼれる。


 横から来たトカゲはお姉さまが上手くフォローに入った。

 お姉さまも動けている!

 というか、思いっきり攻撃は食らっているけど、強化魔法の効果でダメージは受けていない!


 よし、いけっ! セラ!


 追撃だ!


 と、思ったら……。


 動きを止めたセラが私の方を振り向いて、


「く、くく、くうちゃん……。血が……。血が青いですぅぅぅぅ」

「セラ! 来るよ!」

「え? きゃっ!」


 セラがトカゲの突進を受けて吹き飛ばされた!


「セラっ!」


 思わず私は叫んだ。

 同時に助けに跳びかけたけど――。


「いたた……。でも……!」


 岩に肩からぶつかりながらも、セラは素早く剣を構えた。

 次のトカゲの突進は回避する。


 どうやら私の手助けは必要なさそうだ。


 激闘の末、セラとお姉さまは4匹のトカゲを魔石へと変えた。


「ふう……。疲れましたわ……」


 お姉さまがその場にへたり込む。


「クウちゃん! やりました!」


 セラは元気に大喜びだ。


「おめでとー! さあ、次に行こうかー!」

「まだやりますの!?」

「ていうか、始めたばかりですよね?」


 お姉さまの悲鳴は気にしない。

 なにしろ無傷だ。

 どんどん戦って、どんどんカロリーを消費してもらおう。


「あ、セラはヒールしときなよ」

「はい。――ヒール」


 セラは、いくつかの傷を負っていた。

 とはいえ、かすり傷だ。

 自身のヒール1回で全快した。

 セラの強化魔法にも、十分な強度はあるようだ。


 この後は広場を出て通路に入った。

 通路にいたカニ型の魔物を倒しつつ、次の広場に向かう。


 何戦かする内、2人も慣れてきた。


 途中でセラにレベルアップ的なものが発生した。

 ただ以前、お姉さまがダンジョンボスを倒した時のような、ガッツリとした重いものではないようだ。

 少しの休憩で、あっさりと回復した。

 休憩中、お姉さまには甘い物をねだられたけど、まだあげない。

 もう少し頑張ってもらおう。


 そして。


 2時間ほど、私たちは洞窟の中で連戦を続けた。


「……クウちゃん。わたくし、さすがに限界なのですが」


 肩で息をしつつ、お姉さまが剣を杖のように使う。


 ふむ。


 まあ、頑張ったか。


「じゃあ、そろそろ今日はおわりますか」

「やっとですかぁ」


 お姉さまが安堵の息をついた。


「わたくし、まだできます! もう少しだけやりましょう!」


 セラは元気だ。


「じゃあ、この先の広場に行こうか。敵、けっこういるみたいだし、そいつらを倒しておわろう」


 私はマップを確かめて言った。


「まだやるのですかっ!?」

「最後の踏ん張りです。頑張りましょう、お姉さま!」

「セラフィーヌー」

「滅多にない機会なんですよ。生かさないと」

「うう……」


 セラに背中を押されて、お姉さまも仕方なく進んだ。


 やがて、広い岩場に出た。

 高い天井のあちこちから、とても緩やかに砂が流れ落ちている。

 その下には、まるで水たまりのような砂場があった。


 どうやらこの岩場は、トカゲの巣のようだ。

 たくさんの敵反応がある。

 目視できる範囲だけでも6匹はいた。


 同時に広場には、たくさんの冒険者がいた。


 ひい、ふう、みい……。


 ざっと20人はいる。


 ただ、冒険者たちは、トカゲをほとんど狩っていなかった。

 休憩しているわけでもない。

 トカゲから離れた場所で臨戦態勢を取っている。


「……クウちゃん、これは一体、どういう状況なんでしょうか。冒険者の方々が大勢いるようですけれど」


 セラが首を傾げる。


「そうですわね――。事故でもあったのでしょうか」


 お姉さまにもわからないようだ。


 私にはわかる。


 この状況は、間違いない。

 以前、マーレ古墳の地下で同じ光景を目にしたことがある。

 ポップ待ちだ。

 もうすぐ、ネームドモンスターが現れるのだ。

 トカゲの王だろうか。

 強敵だけど、占有権を手に入れて倒すことができれば、高額な品々を手に入れることができるのだ。




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