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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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429 メガモウと迷子の女の子




 ユイが仕事に出た後、私は聖都の冒険者ギルドに行った。

 するとヤツがいた。

 猛牛みたいな印象の大男だ。


 退屈そうな顔で、掲示板に貼られた依頼表を見ている。


 名前は、なんだっけ……。


 ああ、そうそう。


「よー! ひっさしぶりー! 元気だったー? テラギュウ!」


 うしろから肩をバンバン叩いて陽気に挨拶。


「おい、喧嘩売ってんのかテメェ! って……。おまえ」

「やっほー」

「……クウか?」


 どうやら私のことは覚えていてくれたみたいだ。


「うん。ひっさしぶりー」

「テメェ……。よくも俺のことを、変な名前で呼んでくれやがったな」


 久しぶりなのに睨まれた!


 なんで!


 と、思ったら。


「俺の名前はメガモウだ! ウンモウでもテラギュウでもねえ! 特にンは使われてねえんだよ、よく覚えとけ!」


 ということだった。


 どうやら私、名前を間違えたみたいだ。


 ごめんね。


「そういえば聞いたよ? 称号をもらったんだよね。たしか、聖――」

「うおおおおおおお!」


 突然、メガモウが雄叫びみたいな声をあげて、私の腕を掴んだ。


 なんだなんだ!?


 と思っている内、冒険者ギルドの外に連れ出された。


「……おい、待て」


 メガモウが今度は小声でささやく。


「どしたの?」

「……それは秘密なんだ。外で言うのはやめてくれ」

「え。どして? ユイからもらった、名誉ある称号だよね?」

「……バカ野郎。せっかくの聖戦士が実は俺でしたなんてことになったら、みんなが落胆するだろ」

「そうかな? 本当のことなんだから、そんなことはないと思うけど」

「……いいから黙ってろ。頼む」

「んー」


 でも、なんかもったいないね、それ。


 まあ、いいか。


「ねえ、そういえばさ、最近、ジルドリアとかトリスティンではいろいろあったみたいだけど、聖国はどうだったの?」

「ああ、暴動か。んーなもん、この聖国であるわけがねぇだろ」

「そなんだ?」

「あったりめぇだろうが。聖女様の御威光に傷をつけるようなヤツなんざ、暴動以前に俺らが許すかよ」

「なるほど」


 聖国は、ユイがいる限り安泰のようだ。


 この後、メガモウとは別れて、私は1人で町に繰り出した。


 聖都には和食が豊富だ。


 あれやこれやと買って、アイテム欄に詰め込んだ。


 白いローブを頭からすっぽり被った挙動不審な子供に気づいたのは、そんな時のことだった。

 魔力反応や敵反応はない。


 迷子だろうか……。


 白いローブを着ているということは、よそからの巡礼者だ。


 私は近づいて声をかけてみた。


「ねえ、君。どうしたの?」


 振り向いた子供は、やつれた獣人の女の子だった。

 年齢は私よりも下。

 エミリーちゃんと同じくらいだろうか。


「ひっ。ニンゲン」


 私を見て、ビクリとする。


「もしかして、迷子? お父さんかお母さんとはぐれちゃった? ちなみに私は人族じゃないよー」


 私は膝を曲げて目の高さを合わせ、なるべく優しくたずねた。


 女の子は戸惑ったけど、一緒に探すことになった。

 手をつないで歩く。

 探しつつ、私は話しかけた。

 最初、女の子は警戒して、口を開いてくれなかったけど。


 ベンチで小休止して、姫様ロールをあげたら――。

 警戒しつつも受け取ってくれて――。

 一口食べて、美味しいと大喜びしてくれた。


 姫様ドッグもあげた。

 よほどお腹が空いていたのか、姫様ドッグは3つも食べた。

 姫様ロールもおかわりした。

 あとは水。

 お腹が一杯になる頃には仲良くなれていた。

 さすがは帝都の名物。

 最強だ。


 女の子はクノと名乗った。

 トリスティンの王都から両親と共にやってきたのだそうだ。

 トリスティンでは両親と共に暮らしていた。

 両親は商家に雇われて、荷物を運んだりする仕事をしていたそうだ。

 獣人ばかりが住む下町に暮らして、表通りにさえ出なければ貧乏ながらも平和に暮らせていたそうだ。


 トリスティンって、獣人は全員、支配の首輪で強制奴隷!

 みたいなイメージがあったけど、どうやらそういうことはないらしい。

 結婚して家庭を作ることも可能だったみたいだ。


 まあ、考えてみれば支配の首輪は悪魔の手作りだし、全獣人に付ける程の数は用意できるはずもないか。


 そんなある日、異変が起きた。


 王都で暴動が起きたのだ。

 満月の夜。

 それまで獣人を支配してきた呪具が、突如として効力を失くした。

 王都には火の手が上がって、怒号と悲鳴が響いた。


 暴動は、暴れた獣人たちが王都から去ったことで収束した。


 暴動が収まった後、商家の主人は、雇っていた獣人とその家族を精霊神教の巡礼者として王都の外に逃した。

 このまま王都にいると復讐の対象にされかねないから、と。

 白いローブを着せられて聖都に行けと言われた。

 聖都に行けば、きっとなんとかなる、聖女様がお救い下さる、と。


 ふむ。


 商家の主人、いい人だね……。


 でも、あてはないんだね……。


 大丈夫なんだろうか……。


 クノも純粋に、聖都に来れば聖女様に会えて、聖女様がすべてなんとかしてくれると信じているようだ。


 ユイ、信じられすぎてて大変だね、これは……。


 というか間違いなく、他国の人間がいきなりユイに会うなんて不可能だ。

 さすがに無理がある。

 聖国に、難民を保護するためのシステムがあればいいけど。


 私たちは、そんなこんなの話をしつつ一時間ほど一緒にいた。


 クノのお父さんとお母さんは見つからない。

 どうしたんだろうか。


 クノは、離れちゃいけないと言われていたのに、つい、いろいろなものが珍しくて離れてしまった。


 そんなに遠くには行っていないはずだ……。


 なので私たちも遠くには行かず、途中からは、クノがはぐれてしまったという広場にいたけど……。


「おう。クウじゃねーか。テメェ、まだいやがるのか」


 そこにメガモウが来た。





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― 新着の感想 ―
[良い点] クウチちゃん様が誰かといる=何か発生すると感じて声を掛けてくる聖戦士の直感の凄さよ
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