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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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420 雨が止んだから





 弱く雨が降っていた。


 窓の向こうで、しとしと、しとしと。


 私は自分の部屋の窓辺で、椅子に座ってボンヤリと空を見ていた。


 午前10時。


 ヒオリさんは朝から学院に出かけた。


 私は、やることもなく。


 適当にお店を開けようかなぁとも思うんだけど、どうせ雨だからお客さんなんて来ないよねえ。


 んー。


 スオナは元気にしているのかなぁ。


 あれから――。


 スオナと出会ってから、3日が過ぎていた。


 スオナは今、バロット孤児院にいる。

 保護されたのだ。


 うん。


 陛下と皇妃様に橋の下で暮らす少女のことが知られて、次の日にはそうなった。

 スオナの素性については……。

 とりあえず……。

 陛下たちは、私とセラには深く聞いてこなかった。

 深いため息はつかれたけど。


 陛下には、悪いようにはしないから、あとは任せておけ。

 と言われた。


 水の魔力を持つ私たちと同年代の黒髪の少女という時点で、思い当たる節が大いにあったようだ。

 その上で表面上、スオナは浮浪児として普通に保護されたのだった。

 もっとも見張りはつけられているのだろうけど。


 それもあって、私はまだ、保護されたスオナに会いに行っていない。

 任せちゃったこともあるんだけど……。

 なにより、どんな顔をして会えばいいのか。

 完全に私たちのせいだし。

 ただ、とはいえ、ずっと橋の下にいるのがいいとは思えない。

 なんとかしてあげたい気持ちもあった。

 なので、スオナの存在を本気で隠そうとはしなかったし、孤児院行きの話を聞いても反発はしなかった。


 あと、妖精のアクアはどうなったんだろうか。

 たぶん、一緒にいるとは思うけど。


 よし……!


 いつまでウジウジしていても仕方がない。


 窓の外では、ちょうど雨が止んだ。


「……行ってみるかぁ」


 私はよしょと身を起こした。


 まずは『透化』で姿を消して、『浮遊』で窓から空に出る。

 どちらも精霊の特性だ。

 言葉もMPも必要なく、そうしようと思うだけでそうすることができる。

 物理的にも本当にふわふわだね、私。


 孤児院に向かう。


 途中、市街地の宿屋で敵感知が反応した。

 珍しいことだ。

 放置はできないので様子を見に行った。

 敵感知の反応がある部屋の中では、異様に目をギラつかせた青年が両手に握ったポーションを見つめて笑っていた。


「ふふふふ……。見ていろ……。デイニスめ……。この俺を選ばなかったことを絶対に後悔させてやる……。デイニスもあの黒虫も、悲鳴を上げさせて命乞いをさせて、誰が選ばれし者かを教え込んでやる……。ひゃははははははははははははははははははははははははは!」


「昏睡」


 とりあえず、眠らせた。


 その後、ポーションをアイテム欄に入れて鑑定した。


 モーフィングポーション

 黒魔術によって生成された強化薬。

 使用すれば、英雄級の強さを手に入れることができる。

 ただし人間の姿を失う。


 ふむ。


 武闘会でガイドルたちが使ったドーピングポーションの上位版だね。

 効果は高そうだけど、副作用も凶悪だ。


 念の為にロープでぐるぐる巻きにしてから、私は青年を肩に担いだ。

 その時に顔をよく見た。

 尊大な雰囲気がガイドルに似ている。


 まさかとは思うけど、スオナの義理の兄なのだろうか。

 黒虫……。

 スオナを貶す言葉なのだろうか。

 デイニスというのが誰かは知らないけど。


 まあ、いいか。


 とりあえず衛兵の詰所に引き渡そう。


 と思ったけど、できれば、もっと信頼できる場所の方がいいか。


 私は大宮殿に飛んだ。


 いつもの陛下の執務室に外から行ってみる。


 残念ながら室内に陛下はいなかった。


 私は代わりにアルビオさんを見つけた。

 アルビオさんは魔術師団のトップで、帝国を代表する大魔術師だ。

 強大な魔力の持ち主なので敷地内であれば発見は容易い。


 アルビオさんは室内で団員の指導中だった。


 いきなり現れた私に驚くこともなく、アルビオさんは話を聞いてくれた。


 私が連れてきた青年は、やはりスオナの義兄だった。

 アルビオさんには面識があるようだった。

 選民意識の強すぎる人間で、魔術の才能はそれなりにあったみたいだけど評判は最悪だったらしい。

 義兄は帝都追放の処分を受けている。

 帝都にいただけでも罪となるそうだ。


 ポーションも渡しておいた。


 あとは任せてほしいとのことだったので、お任せする。


 あと、デイニスというのは、アロド公爵の名前だった。


 ついでに公爵の居場所も聞いてみた。


「本日はラインツェル公爵と共に外出との話でしたが――」

「公爵様が2人で外出なんて、なんかすごいですね」


 ラインツェル公爵とはバルターさんのことだ。


「……ふむ。これはどうしたものか」

「どうしたんですか?」

「いえ、クウちゃんがらみの案件だと聞きましたので」

「私ですか?」


 なんだろか。


「クウちゃんの友人に会いに行くと言っておりましたが、その様子ではクウちゃんはご存知ないようですな」


 私には、すぐにわかった。

 スオナのところだ。


「クウちゃんに秘密にしている様子はありませんでしたが……」


 アルビオさんが付け加える。


「あ、そのあたりはわかるので平気です。気にしないで下さい。任せる話になっていたので」

「そうでしたか」

「ともかく、彼のことはお願いします。殴るか一日経てば起きますので」

「はい。ポーションの入手経路等、しっかりと調べてみせます」

「では、私はこれで」


 お辞儀をして、私は足早にアルビオさんの元を離れた。


 スオナのことが気になる。


 孤児院に行こう。





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