表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

413/1359

413 廃屋にて





 さて、どうしたものか。

 廃屋の中には今、忍び込んだ黒髪の少女が1人と、かなり弱い反応ながらも一体の死霊がいる。

 敵感知に反応はない。

 死霊は少なくとも、私や町に害を与える存在ではないようだ。


「クウちゃん、行ってみましょう……!」

「行こう行こうっ! 怖いけど面白そうだよねー!」


 セラとミルは侵入する気満々だ。


 私は迷っていた。


 私1人ならともかく、セラとミルを危険に晒して良いものか。

 できれば待っていてほしいけど……。

 うーん。

 ミルは絶対に来そうだ。

 まあ、『昏睡』させておけばいいだけの話なんだけど……。

 なんでも力づくなんてよくないよね……。

 嫌われそうだし。


 私はもう一度、廃屋を魔力感知と敵感知で確かめた。

 やはり敵反応はない。

 魔力は、先程の少女と死霊があるのみだ。


 まあ、いいか。


「シルエラさん、危険なことにはならないと思うけど……。セラも連れて行っていいですか?」

「姫様のご意思にお任せします。私も同行はさせていただきますが」

「はい。それはもう」


 話は決まった。


 念の為、セラたちには防御魔法をかけておく。

 これで万が一の時にも安心だ。

 私の防御魔法は、こっちの世界でまだ破られたことがない。

 鉄壁なのだ。

 あと、足音を消す魔法もかけた。


「じゃあ、みんな、私の後についてきてね。話す時は小声だよ。いい?」

「はい……」

「……わかってるって、まかせて」


 セラは緊張の面持ちで、ミルはお気楽な様子で。

 それぞれ小声で了承した。


「アンロック」


 まずは銀魔法でドアの施錠を解除する。


 静かにドアを開けた。

 開けた先にあるのは、埃臭い玄関だ。

 やはり、もうそれなりの期間、人は住んでいないのだろう。


 玄関の先にはホールがある。

 ホールの奥には、上に続く階段があった。

 左右にはドアがある。


「……クウ様、まずは探索してみようよ。……何かあるかも」


 私の肩に腰掛けてミルが提案してくる。


「でも、クウちゃん、人の家を勝手に探るのは問題があるかもですよ……」


 セラは反対のようだ。


「とりあえず、さっきの女の子のところに行ってみよう」


 私はセラの意見を取り入れた。

 階段を上る。

 魔法をかけてあるので、足音は立たない。


 魔力感知で女の子の居場所はわかる。

 二階の隅。

 同じ場所には死霊の反応もある。

 どうやら女の子は、死霊に会うために侵入したようだ。


 なにをしているのだろうか――。


 階段を上り、廊下を歩いて、女の子と死霊がいる部屋の前についた。

 ドアは閉まっている。


「……ここですか?」

「うん」


 セラにうなずいて、私はドアノブに触れた。

 ノブを回してみる。


 鍵はかかっていなかった。


 ノブは無音で回った。


 音を立てないようにゆっくりとドアを開き、私は中の様子を窺った。

 部屋の中は薄暗い。

 カーテンで締め切られているようだ。


 中には、座り込む女の子の背中があった。

 黒い長髪が床まで伸びている。

 その前には、小さな黒い影が静かに揺らめいていた。


「……ふふ。どうだい、僕の魔力は? 美味しいかい? 遠慮せず、どんどん食べてくれていいんだよ」


 女の子が恍惚とした声でしゃべっている。


 女の子から黒い影へと、シャボン玉のような揺らめく青い光が届いた。

 黒い影の中に光が吸い込まれる。

 女の子の言葉の通り、魔力を与えているのだろう。


「ねえ、その黒い影って君のペットなの?」


 私は話しかけてみた。


 女の子が、ゆっくりと振り向く。

 目が合う。


「これは驚いた。僕の他にも、妖精さんを気にかける人間がいたとは」

「来たのは初めてだけどね」

「と、君の肩にいるのも妖精かい? この子とは随分、違うんだね」

「初めましてっ! ミルだよっ!」

「なんと、しゃべるのかい。この子はずっと無口だから、妖精とはしゃべらないものだと思っていたよ」


 女の子は、黒い影を妖精と言っている。

 私の目には、アレだ。

 お行儀よくしゃがんだ子犬に見える。

 そんな輪郭だ。

 魔力的には死霊で、黒く淀んでいるけど……。


「私はクウ。君は?」

「僕はスオナ。神秘の探求者さ」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
またずいぶんと独特な子だなぁ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ