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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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406 セラとお客





 若手冒険者のみんなが、ぞろぞろと店内に入ってくる。


「ところで店長さん、奥にいる子は新しい店員さんっすか?」


 タタくんがカウンターにいたセラに気づいた。

 これは不覚。

 クウちゃんさまともあろう者がうっかりしていました。

 今日はセラがいるんだった。


 ふむ。


 どうしようか。


 私が迷っていると、セラが愛想よく笑った。


「はい。わたくし、今日は店員をさせていただいております、セラフィ――」

「おーっとセラぁぁぁ!」


 私はあわててカウンターの奥にセラを引っ張った。


「……セラさんや。貴女、今、ちゃんと名乗ろうとしましたね?」

「はい。ご挨拶をと思いまして」

「みんな、セラが皇女様なんて知ったら驚いちゃうよ? それに、今日のセラはお忍びだよね、お忍び」

「そうでした。わたくしったら。……すいません」

「わかってくれてよかったよ」

「では、わたくし、どう名乗ればよいのでしょうか」

「とりあえずはセラで。セラフィーヌじゃなくて、ただのセラね。あと、わたくしはなしです」

「では、どうすれば……」

「んー。なんかテキトーにキャラ作って?」


「……店長さん、どうかしたっすか?」


 おっといかん。

 タタくんが不審がっているぞ。


「なんでもないよーっ!」


 セラの背中を押して、カウンターから出る。


「あ。クウちゃん、まだわた、わたわた」

「ほら、わたわたしないで。この子はセラ。うちのたまにの店員さん。仲良くしてあげてねー」

「あの、わた、わたわた、わた」


 いかんセラがテンパっている。

 わたわたしている。

 というか言ってる。

 これはどうしたものか。

 と思ったら弾けた。


「ボクはセラっていうのだ! よろしくなのだ!」


 セラが叫んだ。


 誰だキミは!


 思わずツッコミかけたけど、なんとか耐えた。


 若手冒険者たちがセラに群がる。


「へー。セラちゃんっていうのか。いくつなの?」

「ク、クウちゃんと同い年なのだ」

「なんかキミ、どっかで見たことあるような気がするけど……」

「おい、何口説いてんだよ」

「ちがうって。なあ、キミ、俺と会ったことある?」

「いえ。あの……。な、ないのだ!」


 実は、若手冒険者のみんなは、禁区調査の式典でセラとは面識がある。

 と言っても、直接会話したわけではなくて、ステージ上に座るセラの姿を見ただけのことだけど。


「だいたいおまえが、こんな美少女とお知り合いのわけねーだろー」

「まさに美少女工房だよな! 映えるわあ!」

「武具の品質も一流で店員さんも可愛い! 俺、一生ここで買う! セラちゃんもこれからよろしくな!」


 まあ、でも、さすがに、店員として目の前にいる女の子が、まさかの皇女様だとは思わないようだ。

 よかったよかった。


「セラ、せっかくだし、みんなから注文を聞いてあげて」


 セラは頭がいいし、ヒオリさんが作ってくれた注文シートを熱心に読み込んでいたし、きっと大丈夫だろう。

 せっかく店員をやっているんだから、いい経験をしてもらおう。

 問題があれば、私が対応すればいいだけだし。


「え? わ、わた、わた」

「セラ、綿菓子は今はダメだよー」


「へー。セラちゃんって綿菓子が好きなのか。今度持ってきてやるよ」


「残念ですが、皆さんに出番はありませんよ。このボンバーが両手一杯の綿菓子を差し上げましょう。可憐なる花よ」


 復活してきたボンバーがセラの前でポーズを決める。

 さらにそのまま、くるりと私に向き直った。


「ふふ。焼き餅は焼かなくてもいいですよ、マイハピネスエンジェル。もちろんエンジェルの分も持ってきますので。ふふふ。これでは私、両手に花になってしまいますね困ったものです」


 ボンバーのせいで、セラが完全に硬直してしまった。

 うん、わかる。

 どう反応すればいいのかわからないよね。


「セラ、こういう時はね、こうするんだよ。タタくん、悪いけど、ちょっとドアを開けてもらってもいいかな?」

「は、はいっす……」

「とうっ!」

「ありがとうございまぁぁぁぁぁぁす!」

「はい。おしまい」


 手をパンパンと叩いて、セラにニッコリ笑った。

 使ったのは足だけどね。


 ボンバーは店の外に飛んでいきました。


「……あの、クウちゃん」

「ん?」

「今の気持ち悪いお方は、大丈夫なんですか……?」

「平気なんじゃなーい? いつもなんか、すぐに戻ってくるし」


「おもしろーい! 肉のかたまりが飛んでいったー! ねーねー、クウ様、私も今のやりたーい!」


 興奮したミルが私の顔の前で騒ぐ。

 結局、10分と持たずに姿を晒して出てきてしまった。


「ダメです」

「なんでー!」


「店長、それって噂の妖精だよなっ!? ここにいたのか!」

「店長さんが飼っていたんですね……」

「なるほどなぁ。なんか、すげー納得できる」


 確かに。


 と、みんながうなずく。


「ミルだよー! よろしくー!」


 まったくミルには困ったものだけど、若手冒険者のみんなには普通に受け入れられている。

 まあ、放っておこう。


「では、あの、みなさん、今日はクウちゃんに代わってわたくしが注文をお受けいたしますね。一人ずつお願いします」


 セラはボンバーショックのせいか、口調がいつもの通りに戻っている。

 でもこちらも、別にみんな、なんとも思わないようだ。

 普通に一人ずつ、ほしいものを伝えていく。


 ふむ。


 これはアレだね。


 そもそも私がいいところのお嬢さんだと思われているんだから、友達のセラも当然お嬢さんだと思われるか。

 わざわざ口調を変える必要はなかったね。


「とうっ! とうっ! もー! なんで飛ばないのー肉のくせにー!」

「はっはっは。小さなお嬢さん、違うのです。私が飛んでいくのは、蹴られたからではなく愛の引力によってなのです。だから、そう、マイエンジェルのように愛を込めてくれなければ飛べないのです」


 復活したボンバーが、ミルに蹴られながら気持ち悪いことを言う。


「え。肉、クウ様と愛し合ってるの!?」

「そうです。その通りです」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!? そんなわけがありますかぁぁぁぁぁ!」


 あ。


 セラが怒った。


「クウちゃんは、わたくしと愛し合っているのです! 貴方のようなただの肉なんてただの食材ですただのステーキの分際でっ! なにをとんでもない勘違い発言をしているのですかぁぁ!」


 これはバトルの予感。


「ふふ。ありがとうございます。ステーキは、マイエンジェルの好物ですね」

「クウちゃん、そうなんですか!?」

「ステーキだよね……? そりゃ、好きではあるけど……」


 あ、しまった。

 つい普通に答えてしまった。


「あうううううううう!」


 セラが負けたぁぁぁ!


 この後、セラには立ち直ってもらって、ボンバーはもう一度蹴っ飛ばして、注文を受けることはできました。






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― 新着の感想 ―
ずん○もんかな?
[気になる点] 「ボクはセラっていうのだ! よろしくなのだ!」 なんか某とっ◯このハムスターを思い出した。
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