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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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40 金貨20枚!




 ギルド長が鑑定士を連れて戻ってくる。

 鑑定の結果、高品質なアイアンインゴットとのことで銀貨1枚の値がついた。

 約1万円。

 そんなもんかぁ。

 期待したよりは高くなかった。


「たとえば、ミスリルのインゴットならいくらになりますか?」

「ミスリルなら市場で金貨10枚にはなりますよ。高品質なものなら、その10倍の値がつくことも普通です」


 鑑定士の人が教えてくれる。

 金貨10枚。

 すなわち100万円。

 高品質なものなら1000万円かー!


 頑張って取ってよかった!


 やっぱり成金だね私!


「ただし商業ギルドに卸すのなら、市価の半額程度となります。代わりに買い取りなので即現金化できますが」


 なるほど、勉強になりました。

 鑑定士の人は忙しいみたいで、長話はせずにすぐに退出した。


「それで、早速なんですけど。高品質のアイアンインゴットをギルドに卸したいんですけど大丈夫ですか? 200本」


 私はギルドの長に取引をお願いした。


「200本ですか!?」


 思いっきり驚かれた。

 鉄は、山で取りすぎてそれこそ山ほどあるのだ。

 1本5千円だとしても200本なら100万円。

 しばらくの資金にはなる。


「クウちゃん様、その取引については私にお任せいただけますか?」

「バルターさんが?」

「はい。クウちゃん様はせっかくですので、姫様と共にギルド施設の見学などされてはいかがでしょう」

「あっ、それはいいですねっ! 行きましょう、クウちゃん!」

「わかりました。バルターさん、よしなにお願いします」


 もはや成り行きのままいこう。


「ギルド長、姫様方を案内できる職員を連れてきてもらえますかな? 信頼できる者でお願いしますぞ?」

「はっ! ただちに!」


 ギルド長があたふたと応接室を出ていく。


「……あの人、ギルド長なのにすごい小物臭がするね。ロビーにいたウェーバーって人のほうが大物そう」

「実際、その通りですぞ。商業ギルドの長はただの事務屋です。大商人の操り人形で実権はありません。故に上位者として振る舞えば盲目的に従います。逆に下手に振る舞えば付け上がるのでご注意を」

「難しそうだし、なるべく関わらないようにするよー」

「はっはっは。いざとなれば踏みつけてやればよいのです。その上でペンダントを見せておやりなさい」

「……そ、そかー」


 それは最大限に遠慮したいです。


「あと私、いろいろ特別待遇みたいだけどいいのかな……?」

「無論、構いません」

「法律違反とかしてない? 嫌われない?」


「問題ありません。

 彼らが独自に決めた規則をほんの少し変更しただけです。

 何しろ女の子が1人で店を持つのです。

 クウちゃん様が帝国の庇護下にある特別な存在であることを明確にしなければ逆にトラブルの元となります」


「な、なるほど……」


 よくわからないけどわかった気もする!


 この後、ギルド長が案内役の女性を連れてきくれた。

 モニカさんというらしい。

 20代半ばに見えるのに、4人いるギルド副長の1人とのことだった。


 やつは四天王最弱……。


 とは思えない、頭の切れそうな女性だ。


 ずっと無言のまま控えていたシルエラさんにローブを渡してもらって、身につけ、応接室から出た。


 私とセラは、モニカさんの案内で商業ギルドの施設を一通り回った。

 モニカさんは毅然とした方で、冗談や軽口は叩かず、あくまで業務として私たちに必要な説明をしてくれた。

 セラはそれを余裕のある態度で聞き、気になったことを自然体でたずねる。


 私は、なんだか緊張して話が耳に入らない。


 いやだって。


 私、就活失敗の元大学生だしね。

 なんかこの状況、恐怖の会社見学を思い出してならない。

 ううっ!

 受け答えがまったくできなくて白い目で見られた前世の悪夢が蘇るっ!

 うわぁぁぁぁぁぁぁぁ……。

 やめて蘇らないでぇぇ……頭が壊れちゃうぅぅ……。


 一通り回って応接室に戻ってきた頃には、私は前世のトラウマにぐるぐると侵食されて泥になりかけていた。

 モニカさんは仕事に戻っていった。


「……あの、クウちゃん。ずっと無言でしたけど、どうしたんですか?」

「ううん。いいの。なんでもないの」


 ふう。

 気を取り直そう。

 今の私は精霊さんなのだ。

 よくわかんないルール通りにしなければならない就活生ではない。

 もう何事にも囚われる必要はないのだ。

 ふわふわなのだ。


「でも……」


 となりではセラが心配してくれている。

 私は誤魔化して笑った。


「あははっ! セラはたくさん質問してたねえ」

「はい。とても興味深くて」

「えらいえらい」


 頭をなでてあげよう。


「もうっ! 同い年ですからねっ!」


 応接室に入る。

 疲れた顔のギルド長と、私たちを笑顔で迎えるバルターさんがいた。


「どうぞお座りください。取引はまとまりましたぞ。高品質のアイアンインゴット200本で金貨20枚となりました」

「おおっ! 気のせいか、なんか高くないですか、それ!?」

「今後の取引も考慮して、ギルド長が奮発してくれましてな。税は別途で支払い済みなので全額がクウちゃん様のものとなりますぞ」

「やったー! ありがとうございます、バルターさん!」


 大儲けだ!


「おめでとうございます、クウちゃん!」

「ありがとう、セラっ!」


 金貨20枚あれば、もう一生暮らせるんじゃないのこれ!


「インゴットはここで出しちゃえばいい?」

「クウちゃん様、今日は大容量の魔道具の鞄は持ってきていないはずでは?」

「あ、はい」

「納品については私が行いますので大宮殿でお渡しいただければ。準備もありますので明日の昼でお願いします」

「わっかりましたー!」


 これで商業ギルドでの用件はおわった。

 私たちは馬車で大宮殿に戻る。

 戻ったらすぐに勉強会。

 セラも一緒だった。

 先生はバルターさんで、勉強というか反省会だった。

 主に私の行動について。

 はい。

 ごめんなさい。

 迂闊者でした。


 反省会がおわるとバルターさんは陛下のところに行き、かわりに別の男性が勉強会の先生となった。

 夕食の時間まで、商取引の流れや経理や税金のことをざっと学んだ。

 うん。

 最初からわかっていたけど、私には無理でした。

 暗号解読の世界です。

 ありがとうございました。

 でも、学んでおくべきことはまだあるそうで、明日、私たちは専門家の授業を受けることになった。


 セラは、知識が得られることを純粋に喜んで、すごくやる気だ。

 今日の勉強会にもついていけた様子だった。

 あれ。

 私、22歳だよね。

 元大学生。

 なぜ11歳の女の子に完全敗北しているんだろう。

 い、いかんっ。

 実は年上のプライドにかけて、セラに負けるわけにはいかない。

 今夜はセラの部屋でお泊りなので、夜にでもセラに復習をお願いしよう。

 あれ。

 何か矛盾を感じるけど。

 まあ、いいか。



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