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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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388 タタくんをさがせ!




 ふむ。


 学院はどうやら、現在、授業中のようだった。


 静かな中、グランドや訓練場からは威勢のいい声が聞こえてくる。


 私はグランドに行ってみた。


 教師が叱咤する中、生徒たちが懸命に走っている。

 基礎体力を鍛えているようだ。

 ただ残念ながら、走る生徒たちの中にタタくんの姿はなかった。


 私はグランドを離れて、次は訓練場の様子を見ることにした。

 こちらでは木剣を使った剣術の指導が行われていた。

 みんな本気だ。

 訓練場には熱気が満ちていた。

 適当に流しているだけの生徒がいないのは、すごいね。

 感心する。

 ただここにもタタくんはいなかった。


 とすると、普通に授業を受けているのかな。

 それかお兄さまみたいに、学院の外で仕事をしているのか。

 タタくんはすでに冒険者だし。


「あ、そうだ」


 私はいいことを思いついた。


 学院全体に魔力感知する。


 学院には、さすがというべきか、当然というべきか、多くの魔力反応がある。


 だけどその中で、2つの色が重なっている反応は――。

 ひとつだけだ。


 ヒオリさんには風と水の強い魔力がある。


 飛んで向かってみると、やっぱりそこにはヒオリさんがいた。

 幸いにも1人だった。

 学院長室で、なにやら書類に目を向けている。

 ……陛下といい、偉くなると書類仕事が多くて大変そうだ。

 私は偉くならないように気をつけよう。


「やっほー」

「あわ! あわわわわ!? ててて、店長ですか!?」

「うん。やっほー」

「やっほーです。どうされたのですか……?」

「実はちょっとお願いがあってね。タタくんを呼び出してもらえる?」

「タタくんと言いますと……。学院生兼冒険者の、ですよね?」

「うん。用事があってねー」

「わかりました。店長のことですから、重要な用件なのですよね?」

「急用なんだ。一刻も早く伝えないといけなくて」


 ヒオリさんはすぐに動いてくれた。

 本来であれば、授業中に校内放送で生徒を呼び出すことはないのだけど、緊急ということで呼んでくれた。


 タタくんが血相を変えて、学院長室に入ってきた。


「あの、なんでしょうか!?

 僕の親に不幸でもあったっすか!?

 それとも仲間に!?

 それとも僕、なにか悪いことをしたっすか!?」


「やっほー」


 焦るタタくんに私は笑顔で手を振った。


「……え。あ。店長さんっすか?」

「うん。ごめんねー、呼び出して」

「え。あ……。この緊急呼び出しって、店長さんっすか??」

「うん」

「……これは一体」


 タタくんがヒオリさんに目を向ける。


「落ち着いて話を聞きなさい」


 ヒオリさんが静かに告げる。


「は、はいっす!」


 タタくんが背筋を正し、緊張した様子で私からの話を待つ。


「いや、あの……。緊急の用事ではあるけど……」

「緊急っすか! 一体何が!?」

「いや、うん……。そんな緊張してもらうほどのことではないんだけどねえ」


 あはは。


「な、なんでしょうか……。早く教えてほしいっす……。冒険者として、覚悟はできているつもりっす……」


 タタくんがごくりと息を呑む。


「実はね、今夜、宴会をすることになってね。なんと、全部、ウェーバー商会の会長さんの奢りでね! その招待をしにきたんだー」

「え。あ。はぁ……」


 あれ。


 喜んでもらえないね。


 なんだか、がっくりと肩の力を落とされたけど……。


 ヒオリさんがおそるおそる私に聞いてくる。


「あの、店長……。まさかとは思うのですが……。宴会の誘い、なのですか?」

「うん。そだよー。あ、もちろんヒオリさんも来るよね?」

「……はい。それはもう」


 タタくんも仲間を誘って来てくれることになった。

 よかった。

 これで一通り連絡はできたね!


 最後にヒオリさんが、なんとなく怖い笑顔でタタくんに言った。


「……タタ。ここでの話は部外秘です。わかりますね? 宴会の話は、どこか他で聞いたことにしなさい。よろしいですね?」

「わ、わかりましたっす! お任せくださいっす!」

「よろしい」

「は、はいっす!」


 おお。


 なんだかヒオリさんが偉い人に見える!


 タタくんが出ていった後は、ぐったりと疲れた様子になったけど。

 仕事が忙しくて大変なのかな。

 長くお邪魔するのは申し訳ないので、私も早々に部屋を出た。


 さて。


 学院といえば……。


 アリーシャお姉さまはどうしているだろうか。


 大宮殿では、死んだ魚のような目をしていて、食事の時にもほとんど会話に入ってこなかったけど。


 …………。

 ……。


 まあ、いいか。


 関わっても疲れるだけなことになりそうだ。


 というわけで、私は家に帰って、久しぶりにお店を開けたのだけど。


 放課後の時間――。


 お店のドアが開いた。


「いらっしゃいませー」

「クウちゃん、1枚だけ、いただけませんこと」


 現れたのは、いきなりそんなことを言ってくるお姉さまだった。


「いや、あの……。それってクッキーのことですよね? 禁止されていますよね? ダメですよね?」


「ほらー、やっぱりクウちゃんが困ってるだろー」

「さあ、帰りますよ、アリーシャ」


 ブレンダさんとメイヴィスさんが、アリーシャお姉さまを引き戻した。


 ばたん。


 ドアが閉まった。


 …………。

 ……。


 大丈夫なんだろうか、お姉さまは……。

 なんかもう、いろいろとアレなんですけれども……。


 まあ、いいか……。


 頑張るしかないだろうし。

 なんといっても、帝国を代表する第一皇女様だし。


 私はとりあえず、今のは忘れることにした。


 まあ、うん。


 進展がなさそうなら、今度、私もなにか考えてあげよう……。


 というか、待てよ。


 私はユーザーインターフェースを開いた。

 生成技能の中の調理リストを見ていく。


 スキル1からスキル120まで、700種類以上の料理がリストには並ぶ。

 よくもまあここまで揃えたものだという充実ぶりだ。

 私の調理スキルはカンストの120だけど、作ったことがあるのは一割にも満たない。

 すべてを把握しているわけではなかった。

 だからもしかして、あるかなぁ、と思ったのだ。


 カロリー少なめのスイーツ。


 じっくり探してみると……。


「あったぁぁぁ!」


 さすがは充実のレシピ集!

 0カロリー天然甘味料を使ったダイエットスイーツが、ちゃんと存在していた!


 まあ、もっとも問題は、作れるかどうかだ。


 レシピを確認する。

 だいたいは、一般的な素材だった。

 問題になるのは、要となる0カロリーの天然甘味料のようだ。


 白草の粉末。

 砂糖の300倍の甘さを持つ0カロリーの天然甘味料。

 白草を乾燥させて砕いたもの。


 ふむ。


 で、白草とはどんなものだろうか……。

 採集のリストで確認する。


 白草。

 幻想の空間で稀に採れる白い草。


 実にシンプルな説明だ。


 見た目はアイコンを見る限り、白い小さな花がたくさんついた、スズランのように可愛らしい草だ。


 幻想の空間か……妖精郷でいけそうな気がする。


 採集のレベルは70。

 それなりに高い。

 採掘で考えれば、ミスリル鉱石を狙うくらいの難易度と言える。

 この世界では、相当に貴重な品だね、これは……。


 ちなみに現在の私の採集スキルは10。

 採掘はザニデア山脈でかなり上げたけど、採集は全然だ。

 まったく足りない。

 ゲーム時代には、採掘や採集は、ほとんどやらなかったんだよねえ、私。


 ホブゴブリンのアルくんたちで採集できればいいけど……。

 難しいなら、スキル上げの必要がありそうだ。


 というか、存在していればいいけど。


 この件も含めて、明日は妖精郷だね。


 ホント、大忙しだ。





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