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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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387 クウのおさそい




 さあ、大忙しだ。

 今夜の大宴会に向けて、みんなを誘いに行かないと!

 ただ、その前に、私は大宮殿に飛んだ。

 忘れない内に、アリスちゃんのお誕生日会にミルを誘うためだ。

 まずは陛下に話を通しに行く。


「……なるほど、話はわかった。つまりおまえは、舌の根も乾かぬ内に、妖精ミルを町に連れていきたいのだな」


「相変わらずいい加減なヤツだ。そして今夜は宴会だと。おまえは本当に人間の世界を謳歌しているな」


 執務室には、今日はカイストお兄さまもいた。

 仕事の手伝いをしていたようだ。


「いやー。あはは。我ながら、そう思うのですけれども」


 返す言葉もございません。


「あ、そうだ。お兄さまもよかったら来ます?」

「どこにだ?」

「宴会。帝都にいる私の知り合い、みんな呼ぶ予定なのでよかったら。陽気な白猫亭ってお店なんですけど。料理も美味しいし、きっと楽しいですよ。あ、お金はいりませんよウェーバーさんの奢りなので」

「おい、クウ。俺は誘わないのか?」


 陛下に言われた。


「え。でも、陛下はさすがにマズいですよね、立場とかいろいろと」

「おまえもわかってきたな。残念だがその通りだ」


 言ってみただけか!


「俺はいいというわけだな?」

「お兄さまは、だって、普通に遊び歩いてますよね? 私のお店にも来るし」

「カイスト、気が向いたのなら行ってみたらどうだ? クウがどういう連中と親交を深めているのか見てみるのも一興だぞ」

「ふん。気など向きません」

「そかー」


 残念。


 まあ、さすがに庶民の宴会には来ないか。


 しつこく誘うのはやめておこう。


「あ、ならセラは――」

「おい。まさかとは思うが、未成年の娘を宴会に誘う気ではなかろうな」


 陛下に睨まれた!


「いや、えっと、私も同い年なんですが……」

「おまえが俺の娘だったら、俺の胃には穴が空いていただろうな」

「あはは」


 たしかに。

 我ながらそう思わなくもないです。


 ともかくミルをアリスちゃんの誕生日会に連れて行く許可はもらえた。

 よかった!

 ウェーバーさんにいい報告ができるね!


 さあ、次だ。


 私はいつもの広場まで飛んだ。


 姫様ドッグのお店に行くと、伝説のSランク冒険者になったブリジットさんとロックさんが普通に働いていた。


「やっほー」

「お、クウか! おまえ、忙しいから手伝え! レタスを切ってくれ!」


 挨拶するなり、ソーセージを焼いていたロックさんが言う。


「クウちゃん、昨日は大丈夫だった?」


 お客さんのテーブルに姫様ドッグを運ぶ途中のブリジットさんに聞かれた。


「あ、はい。協力ありがとうございました。おかげで無事になんとかなりました」


 そういえば伝えてなかった。

 すいません、遅れて。


「妖精さんが無事でよかった」

「今度紹介しますね。あ、そうだ、それとは別になるんですけど、今夜、いつもの白猫亭で宴会するんですけど」

「おう、さっき話は聞いたぞ! ウェーバー会長の奢りなんだろ? もちろん俺たちも行かせてもらうぜ! なあ、ビディ!」

「うん。行く」

「おじさんと店員さんと、姫様ロールの人たちもよかったら一緒に」

「任せろ、みんな連れてくぜ!」


 やったね!


 ロックさんに任せておけば平気そうだ。


「とにかくおまえはレタスだ! レタスをひたすら切れ!」

「ごめん。私、これから冒険者ギルドなんで」

「はぁ? 仕事優先だろ! 仕事しろ!」


 いや、私、姫様ドッグの店員じゃないからね?

 あ、でも、アルバイトではあるか。

 店員か!


 でもごめん、今は忙しいのだ。


 ロックさんの元気な声を背に、私はお店を後にした。


 冒険者ギルドに到着。


 お。


 いるいる。


 私のお店で武具を買った若手冒険者が3人、なにやら雑談していた。


 幸いにもボンバーはいないっ!

 やったぜ!


「やっほー」

「お。店長さんか。どうしたんだ、仕事の依頼か?」

「ううん。今日はちょっとみんなをお誘い。実は今夜、ウェーバーさんの奢りで宴会をすることになってね――」


 飲み食いし放題なことを伝えると、みんな、ノリ気になった。

 いきなりなので全員は難しいかもだけど、私のお店のお客さんにはできるだけ声をかけてもらえることになった。

 タタくんにも伝わるといいけど……。

 お兄さまは大宮殿にいたけど、学院にいるのかなぁ。

 時間があれば行ってみよう。


 冒険者さんたちと話をした後は受付カウンターに行った。

 いつものように個室に案内されて、お馴染みのリリアさんが来てくれる。


「今日は何を持ってきてくれたの、クウちゃん」

「今日はお誘いに来ました」

「……何のかな?」


 露骨に警戒された!


「あ、そんな変なことじゃないですよー。実は今夜、ウェーバーさんの奢りで宴会をすることになったんですよー。それで、私が帝都に来てから知り合った人たちを、誘っているところなんです」

「へー。私も誘ってもらえるんだ?」

「はい。もちろんです」

「そういうことなら参加させてもらうかな。メアリーのお店でいいんだよね?」


 よかった。

 リリアさんも来てくれることになった。


「ところでクウちゃん、昨日、帝都に妖精が現れた騒ぎは知っている?」

「え。あ、はい」

「もしかして、なんだけど……」


 この後しばらく、いろいろ話をすることになった。

 疲れた。


 でも、次だね、次!


 今度は、というか、最初に行くべきだった、陽気な白猫亭にゴー!


 陽気な白猫亭は第二の我が家とも呼ぶべき場所だ。

 こちらの世界にクウとして生まれ変わって、右も左もわからない中、最初に入って最初に大騒ぎした場所だ。

 メアリーさんもロックさんも、今ではすっかり気の置けない相手だ。


 メアリーさんに今夜の話をすると、笑顔でこう言われた。


「その話なら聞いてるよ。ウェーバーさんの使いの人が来てね、前金もたくさんもらったから今夜の料理は期待しててよー」


 さすがはウェーバーさんだ。

 動きが早い。


 ともかく、話が通っているのならよかった。


 次は学院に行ってみよう。


 やっぱり、タタくんには来てほしいよね。

 最初の冒険者のお客さんだし。

 いい子だし、他の冒険者もたくさん紹介してくれたしね。


 というか、アレだね。


 私、タタくんのことは、なぜかいつも年下に見ているけど、実際にはタタくんの方が年上なんだけどね。

 体つきも、さすがは獣人の冒険者らしく立派だし。


 学院への道中で懐かしい人を見つけた。


 獣人のおじさんだ。

 名前は、なんだっけ……。

 考えてみれば、お互いに名乗っていない気がする。

 私が以前、初めて正門から外に出ようと並んだ行列で知り合った人だ。

 マーレ古墳のダンジョン町に奥さんと2人でお酒や食べ物を運んで暮らしている。

 酒飲みで、店で騙されて穢れた力に取り込まれたこともある。

 私が木の枝にひっかかって寝ていたところを起こしてもらって、一緒にダンジョン町まで行ったこともある。

 なにかと縁のあった人だ。


「やっほー! おじさーん! ひっさしぶりー!」

「おお。お嬢さんか、本当に久しぶりだなー」

「うん。元気?」

「お陰様でな。足腰もバッチリよ!」

「それはよかった。ねえ、実は、ちょっとお誘いがあるんだけど――」


 タダ酒と聞いて、おじさんは二つ返事でうなずいてくれた。


「俺はこれでも帝都で1番の大酒飲みだからな! ウェーバー商会の会長っつっても泣きを見ることになるかもだけどな!」

「あはは。飲みすぎて倒れないようにねー」

「任せとけっ! 死ぬ寸前でやめとくさー! わははは!」


 まあ、うん。

 自分で言うのもなんだけど、私がいれば平気だけどね。

 ちゃんと治してあげるし。

 しかし、ロックさんやキャロンさんあたりの大酒飲みと飲み比べしたら、果たしてどちらが勝つんだろうね。

 気になるけど、まあ、煽るのはやめておこう。

 お酒の飲みすぎは危険だしね!

 適量が1番!


「じゃあ、また夜にー! 陽気な白猫亭でー! 奥さんも連れてきてねー!」

「おう! 後でなっ!」


 また名前を聞き忘れてしまったけど、まあ、いいか。


 おじさんと別れて、学院についた。


 姿を消して、ふわふわと中に入る。


 んー。


 来てみたものの、タタくんがどこにいるのか、さっぱり見当がつかないね……。


 どうしたものか。




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