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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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374 ブリジットさんとのお茶会




 青空の下、明るい陽射しが差し込む午後の奥庭園の東屋。

 さすがは大宮殿のメイドさんだ。

 あっという間にお茶会の支度は整った。

 色とりどりのケーキやお菓子に、魔石のポットで温められた紅茶。

 どれも美味しそうだ。

 私はセラとアリーシャお姉さまと皇妃様は、先に席についてブリジットさんたちが来るのを待っていた。


 お姉さまの喉がごくりと鳴る。

 もちろん視線の先にあるのはケーキだ。

 お姉さまはダイエットのため、ケーキやお菓子は禁止だ。


 が、がんばれ……。


 私、すごくケーキを食べたい気持ちなのだけど、なんだか申し訳なさすぎてこれは食べられそうにないね……。


 そこにメイドさんが来た。


 もうすぐノーラさんとブリジットさんが来るそうだ。


「あら。もう1人のお方は?」

「はい。どう考えても柄ではないとのことで、ご辞退されるとのことです」


 まあ、うん。

 わかる。

 ルルさんはこういうの苦手そうだよね。


 しばらくすると、ノーラさんとブリジットさんがメイドさんに連れられてやってきた。

 ノーラさんがブリジットさんの腕を取って歩いている。

 気のせいか、連行しているようだ。

 これはアレかな。

 嫌がるブリジットさんを強引につれてきた的な……。


 東屋に二人が来た。


 ノーラさんが優雅に一礼して、光栄なお誘いに感謝の言葉を述べる。


「……ブリジットです。……お招き、感謝です」


 ブリジットさんも、少しぎこちなくだけど挨拶できた。

 お辞儀して、顔を上げたところで私と目が合った。

 あ。

 白目を向かれた。

 あ。

 元に戻った。

 さすがはブリジットさん。

 いきなり私を笑わせに来るとは。


 皇妃様に促されて、二人が着席する。

 私たちも軽く自己紹介をした。


「こちらのブリジットは、いささか変わり者でして……。失礼なこともあるかとは思いますが、どうかご容赦下さい」


 さて、おしゃべりしましょうか、というところで。

 まずはノーラさんが頭を下げた。


「わたくしたちは気にしませんので、いつも通り気楽にお願いしますね。それより招きに応じてくれて感謝します。帝国では本当に久しぶりのSランクとなった貴方達と、ぜひお話がしたかったのです」


 皇妃様が鷹揚に答える。


 この後は主に、皇妃様とノーラさんが会話をした。

 話題は主に『赤き翼』のことだ。

 禁区調査の話から始まって、今まで経験してきた様々な冒険のこと。

 私も聞いていて、なかなかに興味深い話だった。

 特にブリジットさんが、下町に隠居していた元魔術師団の老人に師事して魔術を学んだ話には興味を惹かれた。

 学院に行かなくても一流になれるんだねえ、と。

 あとはロックさんとの出会いのエピソードも面白かった。

 ロックさん……。

 6歳の時に、ブリジットさんのお父さんの畑で盗みを働いて捕まったらしい。

 でも、それが縁で、畑で働かせてもらえるようになったそうだ。

 ブリジットさんが生まれた頃の話らしい。

 ロックさんは、当時、まだ赤ちゃんだったブリジットさんの面倒も、ちょくちょく見ていたのだそうだ。

 なのでブリジットさんは物心ついた頃からロックさんを知っているし、ロックさんは生まれた頃からのブリジットさんを知っているのだそうだ。

 幼なじみというか、なんだろね、その関係。

 でもなるほど、ブリジットさんのお父さんとロックさんの仲も良いわけだ。

 ブリジットさんは、聞かれた時に簡潔に答える程度で、あとはパクパクとひたすらケーキを食べ続けた。

 ケーキは、うん、本当に美味しいものだ。

 特に大宮殿の高級品は。

 見ていると、すごく私も食べたくなる。

 セラは食べている。

 皇妃様もノーラさんも食べている。

 なので私も、気にせず食べてしまえばいいんだけど……。

 食べようとするとお姉さまと視線が合うのだ。

 何故か。

 何故だ。

 お姉さま、なんで私にだけそんな、うらめしい視線を向けるのですかぁぁぁ!


 そんな苦しみの中、会話が少し途切れたところでセラが口を開いた。


「実はブリジットさんのことは、クウちゃんからよくお伺いしているんです。強いだけではなくて、とても面白い方とか」

「見たい、ですか?」

「はいっ! とっても!」

「セラフィーヌ、失礼ですよ。芸人でもない方に芸を求めるなんて」


 皇妃様がたしなめる。


「私は構いません。お笑いは私の生きがいなので。よければ、ぜひ披露させて下さい」


 なんと。

 ここでやるのですか。

 この優雅な空間で。

 さすがの私もブリジットさんの発言には驚いた。

 とはいえ考えてみると、私もここでお笑いバトルをやったか。


 というわけで。


 皇妃様も見たいと言うので、ノーラさんのそれとなくな制止を無視してブリジットさんの芸大会が始まった。


 わー。


 ぱちぱちぱち。


 前に立ったブリジットさんに私は拍手する。

 期待は大だ。


 なにしろブリジットさんだ。


 なにをしてくるのか、想像がつかない。


「1番ブリジット、行きます。Sランクになったので、Sな芸をします」


 え。


 なんでしょうか、それは。


 私はちょっとエロな感じなのを想像してしまって、心配したのだけど――。


「Sかぁ。えーっすね」


 右手で側頭部を叩くと同時に左足を右足の膝に置いて、右足を軽く折り曲げると共に微笑んでフィニッシュ。


 おお!


 なんとなく全身がSっぽい!


 まさに、えーっすね、だ! Sだけに!


 思わずクスっときた!


 ブリジットさんがお辞儀する。


 席に戻った!


 おわった!


 …………。


 ……。


 さすがだ。


 皇妃様もセラもお姉さまもノーラさんも、みんな、クスクスしている。

 クールなメイドさんたちまでもだ。


 ほんのわずかな時間で、現状に合ったテーマのギャグを考案して、完成させ、披露して見事に笑いを取る。

 本当にさすがという他はない。


 私にできるのか?


 私なら、現状に合ったテーマは何だ?


 私はSランクになったわけじゃないから、Sは駄目だ。


 王女様?


 異国の王女様ギャグか!?


 なにか――。


 なにかないのか!?


 私がひとりで悶えていると、ブリジットさんが私の前に、そっと優しくケーキの乗ったお皿に置いてくれた。


「クウちゃん、くう?」


 ありがとうございます!


 クウちゃんだけにくいます!


 ――かくしてお茶会は、楽しくおわったのでした。





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さすがだよ
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