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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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364 セラと休日



 こんにちは、クウちゃんさまです。


 今日は午前からセラと一緒でした。

 今日は勉強がお休みだからとセラに遊びに誘われたのだ。


 というわけで。


 午前には、魔法の訓練をした。

 セラはどんどん上達している。

 うん。

 びっくりするほどだ。

 最初、ヒール1回でクタクタになっていたのが今や嘘のようだ。


 昼食は奥庭園の東屋で取った。

 サンドイッチが美味しかった。

 ランチの後はしばらくいろいろなことをおしゃべりして、さて、午後はどうしようかということになった。


「――クウちゃんって、そういえば以前のパーティーで騎士団の訓練にも誘われていましたよね?」

「訓練っていうか、見学だけどね」

「行ってみませんか?」

「いきなり行ってもいいの?」


 確認をとってみたところ、オーケーだった。

 というわけで。

 午後は騎士団の訓練にお邪魔することになった。


「でもセラ、今日ってお休みの日なんだよね?」

「はいっ! 久しぶりなので、とっても羽根を伸ばせています!」

「私の気のせいか、午前は魔法の訓練だったよね」

「はいっ! クウちゃんの指導はとっても勉強になりますっ!」

「で、午後からは騎士団の見学なんだ?」

「はいっ! 頑張りますっ!」


 ふむ。


「……ねえ、セラ。私の気のせいか、気のせいじゃない気もするけど、まったくお休みになっていない気がするんだけど」

「そうですか?」


 キョトンとされた。


「うん」


 私がうなずくと、セラはますますキョトンとして、


「クウちゃんと一緒なら、いつでもどこでもわたくしにはお休みですよ?」


 と、言われた。


 ふむ。


 まあ、いいか。

 ここは素直に喜んでおくとしよう。


 騎士団の練習場に行った。


 晴れた空の下、土の上でたくさんの騎士が剣を打ち合っている。


 私たちの来訪は事前に知らされていたので、騎士団長のグラバムさんが出入り口のところで待っていてくれた。

 グラバムさんは、ザ・武人という感じの中年男性だ。

 強者の風格がある。

 さすがは騎士団長といったところだ。

 とはいえ、よくしゃべってよく笑う豪放な人だということはパーティーでご一緒したことがあるので知っている。


「グラバムさん、こんにちはー」

「本日はよろしくお願いします、グラバム騎士団長」


 私は陽気に、セラは丁寧にお辞儀をした。


「姫様方、よくおいで下さいました。今日は存分に指導をお願いしますぞ」


 ん?


 今、妙な言葉が聞こえたような。


「さあ、まずは我らの訓練を御覧ください」


 見せてもらった。


 みんな、熱心に打ち合っている。


 水魔術師が控えていることもあって、実戦さながらの激しい訓練だ。


「……すごい気迫ですね」


 セラはその熱気に圧倒された様子だ。


「皆、必死なのです。実は先日、メイヴィス嬢とブレンダ嬢がここに来ましてな」


 うわ。


 それだけでわかった気がする。


「狂犬共が――いえ、お嬢様方がまた打ちのめされに来たかと、最初は騎士達も余裕の態度で接したのですが――。結果としては、なんとか――。もちろん上位の者であれば余裕で勝てたのですが! 余裕なのですが! しかし、お嬢様方の相手をして然るべき若手では……厳しく……。今日は会議があるからということでお嬢様方には早めにお引取りいただいたのですが――」


 ……私の訓練の賜物ですね、わかります。


「さらには皇太子殿下が、ご友人と共に腕試しに来まして――。その日も会議が大忙しといった有様でして――」


 す、すいませんでした……。


「なんでも、お嬢様と殿下達は、クウちゃん様の指導を受けたとか」

「は、はい……」

「クウちゃん様」


 改まってグラバムさんに名前を呼ばれた。


「先日、この帝国に嵐が起きたことは聞き及んでおります。クウちゃん様の力で静まったことも。本当に感謝しております。ですが本来であれば、クウちゃん様は楽しくお店を経営しているべき身。我らこそが成さねばならぬことでした。しかし今の我らでは悪魔に対して剣が届きにくいのは事実――。先程、連絡を受けた時、私は思ったのです。これは天意なのだと。先の発言とは矛盾しますが、ここはぜひともクウちゃん様に我らも導いていただかねばならない、と」


 真顔で言われた。


 私、天意などでは決してないと思いますけれども……。

 私、遊びに来ただけなので……。


「皆、集まれ!」


 グラバムさんが大声を出す。


 すぐに騎士たちが訓練の手を止めて、私たちの前に整列する。


 結局……。


 断りきれる雰囲気ではなく、私は騎士たちの指導をすることになった。

 と言っても、強化魔法をかけてあげるだけだけど。

 私の強化魔法には、副作用として魔力の肉体浸透を促す力がある。

 強化魔法を受けた状態で訓練すれば、厳しい訓練を積んできた彼らなら、すぐに開眼することができるはずだ。

 実際、できた。


「おおおおおお! これであの狂犬共に、もう負けることはない!」

「……もう俺、あの狂犬共から目をそらして、うつむいて逃げなくていいんだな。久しぶりに前を向いて歩ける」

「あの狂犬共、目にものを見せてやるからなぁぁぁぁ!」


 いや、うん。


 メイヴィスさんとブレンダさん……。


 一体どれだけ騎士団の若手の人たちを煽ったんだろうね。


 悪魔そっちのけで、みんな、貴女たちのことばかりなんですが。


「「「クウちゃん師匠、ご指導ありがとうございましたぁぁぁぁ!」」」


 ど、どういたしまして……。


 訓練の後、なんか引くくらいに感謝された。

 強化魔法をかけただけなんだけどね……。


 近い内に、私がいなくても訓練できるように強化魔法の指輪を量産して、陛下に献上しておこう……。


 夕方になった。


「なんかあっという間に1日がおわっちゃったねー」

「そうですね。充実の1日でした」


 騎士団ともたっぷり訓練して、セラはくたくたになっていた。

 満面の笑顔だけど。


「クウちゃんっ! 今日は夕食もご一緒できるんですよねっ!」

「決めてなかったけど、いいの?」

「もちろんです! そのつもりで準備していましたから、クウちゃんが帰っちゃったら食材がもったいないです!」


 まあ、うん。


 実はそのつもりで来ていました。


 たまには食べたい宮廷料理、なのです。


 夕食になる。


 今夜も普通に陛下たちと一緒だった。


「クウちゃんはすっかり家族の一員ですね。いっそ毎日食べに来てもいいのですよ」


 もちろん冗談だろうけど、皇妃様にそんなことを言われた。


「それはいいですわね。クウちゃん、歓迎しますわ」


 アリーシャお姉さままでもが追随してくる。


「あはは」

「おい、クウ。社交辞令だぞ、真に受けるな」

「わかってますよーだ」


 お兄さまにそっけなく言われて、私は舌を出して応戦した。


「はははっ! 確かに今のは社交辞令だが、クウ、来たければいつでもうちには来てくれて構わないからな」

「そうですよクウちゃんっ! いつでも来て下さいね! わたくし、いつでも遊ぶ準備はできていますから!」

「セラフィーヌは、いつでもではないぞ。おまえは勉強が第一だ」

「そんなー! お父さまー!」


 あはは。


 それはそうだよねー。


 笑って、私は思う。


 こうして皇帝陛下のご一家と食事をするのも。

 気づけば私の日常の一部なんだねえ。




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