表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

361/1359

361 夏のおわりに




 こんにちは、クウちゃんさまです。


 私は今、空の上にいます。


 ふわふわと浮かんで、あてもなく流れています。


 空は青いです。


 快晴です。


 今日は8月のおわり。


 世間では、今日は夏休みの最終日。

 アリーシャお姉さまは明日から学院だそうです。

 学院長のヒオリさんも忙しくしています。


 私はふわふわです。


 精霊はふわふわするのが仕事なので、これも仕事なのです。



 あれから――悪魔のメティから話を聞いてから――。

 すでに数日が過ぎていた。

 私にできることは、とりあえずおわった。



 悪魔召喚に使われていたド・ミの国の元首都は綺麗に浄化した。


 トリスティンにいた悪魔には、すべてご帰還いただいた。


 悪魔に洗脳されていた王様は正気に戻った。

 王様には特になにもしなかったけど、私の張った結界の作用で悪魔の術が自然に崩れ散ったようだ。


 商人に化けて他国で呪具を売り歩いているという悪魔は、残念ながら発見することができなかった。

 大陸は広い。

 全域の捜索は、さすがに無理だ。

 隠密能力に長けていそうな相手だから、魔力感知や敵感知に引っかからない可能性もある。

 なので後は各国の調査にお任せすることにした。



 そうして。

 一段落はついた。



 私は『帰還』の魔法で帝国に帰った。


 ユイとエリカも、それぞれの国に戻った。


 陛下への報告はしていない。

 帝国への報告は、ユイが書簡で行うことになっている。

 今回の件は漏れていなかったようで、願いの泉のほとりで待ち構えられていることもなかった。

 なので私は、そのまま家に帰った。


 …………。

 ……。


 そんなこんなの最近の出来事も思い返しながら。

 私は青空の中を、ふわふわと浮かんでいた。


 正直、今の私は元気がない。


 トリスティンには、未解決の問題があることを私は理解している。

 獣人奴隷たちをそのまま放置してきた。

 助けることはできた。

 手当たり次第に支配の首輪を壊せばいいだけだし。


 だけど、しなかった。

 だって、その後どうするのか。

 絶対に大混乱になる。

 そんなの気にせず、とにかくやっちゃう?

 うーん。

 さすがにそれは躊躇われる。

 私がすべての責任なんて取れるわけもない。

 なら、どうする?


 エリカとユイは、そもそも、それは精霊の仕事ではないと言った。

 ゼノやリト、フラウも同意見だった。


 うん、まあ……。

 私としても、やるべきことはやったとは思う。


 悪魔にはご帰還いただいたのだ。

 再召喚も、まず不可能にした。

 支配の首輪やその他の呪具だって効果は永遠ではない。

 いずれ力を失くす。

 私がなにかしなくても、その時は来るのだ。


「あとは政治と民意の問題かぁ……。まあ、そうだよねえ……」


 エリカとユイも頑張ってくれるそうだし。

 私の仕事は、おわったのだ。


 空は青い。


 目を閉じれば、まぶたの奥は真っ白に染まる。


「……帰ろっかな。お店でも開くか」


 いつまでふわふわしていてもしょうがないので、私はお店に戻った。


 最近はまったくお店にいなかった。


 久々の開店だ。

 ヒオリさんも最近は学院の方が忙しくて、お店にはいられなかったようだし。


 看板を外に出して、開業中であることを知らせて。

 私はカウンターの椅子に座った。


 しばらくぼーっとする。


 誰も来ない。


 まあ、やむなしか。


 こんなに不定期だと、お客さんも離れるよね。


 と、あきらめていたところで……。


 ドアが開いた。


 私はできるだけ元気に挨拶をした。


「いらっしゃまー!」


 私の元気は、最後の一言を前にして停止した。


「せ……」


 いや、うん。


 だって、さ。


「ああああああああ!

 お久しぶりです!

 マイ・フレッシュエンジェル!

 このボンバー、見事に任務を果たし、無事に帰ってきましたぞ!

 さあ、再会を喜びましょう!

 わかります!

 見たかったのでしょう!

 この私の、類まれなる美しき筋肉を!

 いいですとも!

 いくらでも見せて差し上げましょう!」


 いきなり筋肉のかたまりが、満面の笑顔でマッスルポーズを決めてくるし。


 そのうしろから獣人のタタくんが申し訳なさそうに、


「すいませんっす、店長さん。いきなり騒がしくて」


 と、頭を下げてくる。


 見れば外には、私が武具を作ってあげた若手冒険者たちがずらりといた。

 みんな無事に禁区から帰ってきたんだね。

 よかった。


 ボンバーのことは本気でどうでもいいけど、みんなからは武勇伝を聞きたい。


 私は席から立ち上がって、邪魔なボンバーを外に蹴り飛ばしてから、笑顔でタタさんやみんなをお店の中に招いた。


「はははッ! さすがはマイ・ハートキャッチエンジェル! この私を吹き飛ばすとは相変わらず素晴らしい蹴りですね!」


 みんなと一緒に、ボンバーが元気にお店の中に入ってきた。


「……なんか復活早いね」


 いつもならもっと倒れているのに。


「ふふ。これも禁区での死闘を乗り越えた成果ですな。我らボンバー同盟、以前の我々とは違いますよ、マイ・スイートエンジェル!」

「なーにが、エンジェルだか」


 両腕を広げたボンバーに、私はそっぽを向いた。


「照れる必要はありません! 私の溢れる愛はいつでもここです!」

「はいはい。そういうのは、世界で唯一の輝く大輪の聖女様に向けてねー。なんと麗しくてなんと美しいんだから聖女様はー」


 べつにボンバーのことは本気でどうでもいいけど、こいつが禁区でユイにうっとりしていたことはよく覚えているのだ。

 その時のこいつの台詞も記憶しているのだ。

 私はそういうこと、意外と忘れない子なのだ。


「な、ななな……。そ、それは……。ち、ちちちがうのですよアレは!」


 ボンバーも忘れてはいないようだ。


「フンだ」


 私はさらにそっぽを向いて、みんなから話を聞くことにした。

 それは、楽しい一時だった。

 未だ経験不足のみんなが、いかに勇気を出して、いかに協力しあって、押し寄せる敵に立ち挑んだのか。

 ギルドマスターを助けたボンバーの男気の話は……、

 うん、私はスルーしたけど。

 まあ、頑張ったといえば頑張ったよね。

 そして現れた聖女様のこと。

 でも聖女様というのは秘密だから、これは秘密の話だということ。


 これ、アレだね。


 秘密の話として、あっという間に広まるね、確実に。


 武勇伝に花を咲かせた後は、損耗した武具を修復してあげた。

 タダでもよかったけど、みんな気前よくお金を払ってくれた。

 みんな、今回の禁区調査で大儲けしたそうだ。


「でも、奥に行っていたAランクとかBランクの人たちは、もっと凄いんっすよ。浄化された廃墟で遺産の宝飾品を見つけまくって、羨ましいっす。特に『赤き翼』なんてボスまで倒して受勲されるそうっす」

「へー。そうなんだー」


 タタくんの話は実に興味深かった。


 赤き翼とは、ロックさんたちのパーティー名だ。


 受勲って凄いことだよね。


 貴族の地位とか、もらったりしちゃうんだろうか。


 貴族のロックさん……。


 うん。


 似合わなさすぎて笑えるね!


 申し訳ないけど!


 私はいつの間にか、普通に笑っていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 適当に終わらせたな。
[気になる点] なんか最終回っぽいΣ(・ω・ノ)ノ! [一言] クウちゃんさまの冒険は・・・これからだ!!\(^o^)/
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ