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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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359 悪魔メティネイル



 さて。


 念の為に緑魔法で『昏睡』させてから――。


 黒いドレスに身を包んだ灰色髪の少女を私は肩に担いだ。


 調べた限りでは、トリスティン王国の王都にいる悪魔はこの子1人だけだ。


 逃さずしっかりと話を聞こう。


 竜の里に戻ると、広大な中央の吹き抜けフロアで、フラウを先頭にみんなが待機してくれていた。

 いつもより厚い服を身に付け、手には武器がある。

 ユイとエリカもいた。

 ユイは古代の神子装束を身にまとう。

 エリカは、私が以前に作ってあげた軽鎧姿だ。


「ただいまー。連れてきたよー」


 私が笑顔で挨拶すると、ユイが呆れた顔をする。


「またそんな気楽に……」

「その肩にいる子が、悪魔ですのね」


 エリカが近づいて覗き込んでくる。


「エリカ、危ないよっ!」

「クウの魔法で寝ているなら平気ですの。……なんだか普通に、血の気が悪いだけの亜人のようですわね」


 この後は光の大精霊であるリトのことを紹介した。

 リトは滞在を許可されてフェレット姿になると定位置に戻った。

 ユイの肩の上だ。

 リトは、そこで大人しくしている約束だ。


「じゃあ、起こすね――」


 竜の人たちが取り囲む中、私は悪魔の少女を床に寝かせた。


 魔法を解除する。


 しばらく待っていると、小さく呻いて、悪魔の少女が目を開いた。


「こんにちは、私はクウ。君は?」

「……メティネイル」


 ぼんやりと名乗ってから、メティと名乗った子が勢いよく身を起こす。


「って、ここドコ!? おまえ、ダレよ! この最強のメティちゃんをかどわかすなんていい度胸しちゃってるね!? 安心してね殺してやるから! ――あいたっ」


 思わず頭を叩いてしまった。

 ごめんね?


「まったく。その程度で痛がって、私に勝てると思ってるの?」

「はぁ!? ――あいたっ」

「ほら」


 言わんこっちゃない。

 爪を振りかざしても無駄だからね?


「麻痺」

「ぎゃ」

「ほら、よく周りを見て。痺れてても、視線くらいは動かせるでしょ」


 緑魔法で麻痺させてから、私はメティに状況を確認させた。

 メティは視線を動かして、ようやく現状を理解してくれたようだ。


 麻痺が解けたところで、おそるおそるたずねてくる。


「あのお……。みなさんはどこのどなたで? 見たところ、人間っぽい人がほとんどいないのですけれども……」

「私は精霊。あとはだいたい竜だよ。ここ、竜の里だから」

「精霊と竜……?」

「うん」

「そんなバカな」

「だよねー」


 あはは。


 笑っていると、フラウが前に出てきた。


「クウちゃん、変わるのである」

「あ、うん」

「この者には嫌な匂いが満ちているのである。世界に害を成す穢れた力とはこれなのかとよく理解できるのである」


 私が横に退くと、フラウがメティの首を掴んで、そのまま持ち上げた。

 と言ってもフラウは小さいので、宙ぶらりんにまではならない。

 倒れていたところから上半身が持ち上がった程度だ。


「おまえにたずねるのである。おまえは人の世で何をしていたのであるか?」

「はぁ!? どうしておまえに答える義理がががが。ぎゃあああ!」


 首を締められても平然としていたのに、いきなりメティが苦しみだした。


「言わないなら、妾の魔力をたらふく食らわせてやるのである。内側から破裂する苦しみを味わうのである」

「やめてぇぇ! わかったわかったわかったからぁぁぁぁ!」


 メティは簡単に落ちた。

 これは参考になる。

 私も次の機会には使わせてもらおう。


「さあ、言うのである」


 掴んだ首は離さず、フラウがたずねた。


「そんなの、契約を履行していただけだってばぁ」

「どんな契約であるか?」

「黒魔術のお手伝いー」

「具体的に言うのである」

「もー。めんどくさいなー。死ね。ぎゃああああああ!」

「言うのである」

「……だーかーらー、人間を支配する薬品とか魔道具」

「どう作っていたのであるか?」

「そんなの、奴隷から集めた負の感情を、こねてまとめて溶かすダケ」

「奴隷を殺して作っているのであるか?」

「無意味に殺すわけないでしょ。もったいない。奴隷にはね、支配の首輪っていう呪具をはめて、その呪具に感情を吸収させているの。私は、回収されてきた首輪から負の感情を抜いているだけ。奴隷だって有限なんだから、ちゃんとリサイクルして、完全に壊れるまで使わないともったいないでしょ」

「酷いことを平然としているものである」

「人間がやっていることだからね? 私は召喚された、ただの契約社員よ?」


 ここで私は、少し話を変えさせてもらった。

 ずっと気にしてきたことだ。


「ねえ、メティ。魔王っている?」

「魔王? なにそれ?」


 眉をひそめて、不思議そうな顔をされた。


「悪魔の王とか」

「そんなのいるわけないでしょ。私達は、たまに聞こえる邪神様の声に耳を傾けながら魔界で好きにしているだけ。ていうか、よくも私の可愛いインプ達を消してくれたわねシネシネシネシネシネ!」


 嘘を言っている様子は……ない気もする……。

 よくわからないけど。


「好きにこっちには来れないんだよね?」

「来れれば苦労しないっての。召喚されないと来れないから、皆、召喚されたがって順番待ちなんだから。ねえ」

「なに?」

「もっとさ、悪魔の召喚方法を広めてよ。もちろん、知られすぎないように密やかに影からお願いね?」

「いや、まっぴらごめんなんですけど」

「なんで!?」

「うん。当たり前だよね?」

「ハァ……。もうさ、今の私達なんてこんなモンなワケ。こんな簡単に捕まってペラペラ喋らされてさぁ」


 ありがたいことに、ホント、おしゃべりだね、メティは。


「大昔に壊滅させられて以来、悲惨な状態だったんだけどさぁ。最近になってうちの王様が毎年のように悪魔召喚してくれるようになって、私達もいよいよ復権の時かと燃えているワケよ」


 だから、手伝って?


 と、妙に可愛らしくお願いされたけど、却下だ。

 当たり前だよね。


「もっとも他の連中は今頃、超パワーアップしてるんですケド! おまえらの命もあと僅かだから覚悟することね!」

「パワーアップって……。何かしているの?」

「ふふーん。山脈の向こうの帝国で、死霊を操って皆殺し大作戦! 邪神様の落とし子を呼び出して、皆殺し大作戦! あとはなんだっけ……。首都の地下に強力な魔物を呼び出して皆殺し大作戦! あとは、光の魔力持ちが消えた聖なる国をぶっ壊して、皆殺し大作戦もあったかなぁ」

「あー。うん。なるほど」


 全部、解決済みだね。


 それらはすべて、トリスティンの王様の命令で行われたそうだ。


「いいよねー。私もそういう契約がよかった。私なんてさー、ちまちま呪具を作るだけの契約だし。まあ、いいんだけどね。楽だし」

「ねえ、なんでトリスティンの王様はそんなことをしたの?」

「そんなの決まってるでしょ。そそのかしたからに決まってるじゃん! あの国はもう私達の言いなりってワケ!」






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― 新着の感想 ―
[良い点] 最強のメティちゃん参上!! [一言] 最強(笑)のメティちゃん だった\(^o^)/
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