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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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351/1359

351 お兄さまが来た



 皇妃様たちがヒオリさんの案内で応接室に入って、私はお店で1人になる。


 さて。


 どうしようか。


 私も応接室でおしゃべりしていてもよかったんだけど、お兄さまに勘付かれないようにするため、それは却下された。


 私はお店にいて、普通に過ごすことになった。


「んー」


 ぬいぐるみでも作ろうかなぁ……。

 と思ったけど、まだ在庫はある。

 悲しいかな、売り切れるほどには売れていなかった。


 今日も天気は良い。


 空は快晴だ。


 時間が経つに連れ、通りは賑わしくなっていく。


 あ。


 お店のショーウィンドウの前に親子連れが立ち止まった。

 ぬいぐるみやオルゴールを見て、かわいいねー、と言ってくれているようだ。

 今なら入って来てもいいんだよー。

 歓迎するよー。

 でも、歩き過ぎてしまった。

 残念。


「ふぁ~あ」


 朝から頑張ったせいか、あくびがこぼれる。


 やることがない。


 でも最近はずっと頑張っていたから、たまにはのんびりするのもいいね。


 …………。

 ……。


 気づくと私は寝ていた。


「――おい。

 ――おい、クウ」


 ちょんちょんと肩に触れる指の感触と、不機嫌そうな声で――。

 私の意識はふんわりと戻った。


 目を開けるとお兄さまがいた。


「あ、いらっしゃいませー。待ってましたよー」

「寝ていたがな」

「あはは」


 お兄さまのうしろには、2人の青年がいた。

 どちらも、私より年上。

 お兄さまと同年代の人たちだ。


 1人はわかる。

 ブレンダさんの兄で体育会系な人、ウェイスさんだ。


 もう1人は……。


 服の上からでもわかる、しっかりと鍛えられた筋肉を持っている。

 顔つきも精悍で、明らかに強そうだ。

 だけど、なんとなく生気がない。


 んー。


 誰だっけ。


 知っている気もする……。


 パッと名前とかは出てこないけど……。


「クウちゃん、久しぶりだな。元気だったか?」

「はい。元気です。ウェイスさんも元気そうですね」

「まあな」

「ブレンダさんは夏の間は実家に帰るって言っていましたけど、お兄さんは帰っていないんですね」

「……まあな」


 なんだか妙に含みのある感じで、ウェイスさんはうなずいた。


 ふむ。


 よく見れば、ウェイスさんもなんだか元気がない。


 なんだろか。


「それで――。えっと――」


 私はもう1人に目を向けた。


 お兄さまが紹介してくれる。


「この男はロディマス。将来はこの帝国を守る騎士となるべき男だ」

「へー。期待されてるんですねー。初めまして、クウです。って、あああああ!」


 思い出した!


「この人って、アレですよね! 学院祭の武闘会の時、ホストみたいな人に瞬殺されて医務室送りにされた人ですよね!」


 ホストみたいな人――。

 たしか、フリオって名前だったはずだ。

 ディレーナさんの取り巻きの人で、ドーピングポーションで発狂した人。


「……その通りだが。

 クウ、せめてもう少し言い方をだな」


 お兄さまがこめかみに手を当てて、困ったように首を横に振った。


「す、すいませんっ! 私ったら気配りのないことを!」

「気にするな……。それは事実だ……」


 ロディマスさんの声が暗い!

 影も暗い!

 このまま消えていきそうに生気が消えていく!


「だだだだ、大丈夫ですよ! アレってただのドーピングだったし! いくら瞬殺されてもいくら一撃でも!」


 私は慌ててフォローした。


「ああ……。事実だ……。俺は大観衆の前で、醜態を晒したのだ……」

「平気ですよー! たぶん!」


 みんな、わかっていたと思いますよ!


 とはいえ……。


「……まあ、インパクトはありましたよね。……あんなホストみたいな人に、こんな鍛えた人が負けるなんて」


 ついうっかり私は本音をポロリした。


「ああ……。俺は……おわったのだ……」


 ふらつくように、ロディマスさんが四つん這いになってしまう。


「ああああああ! ちがいますよ! ちがいますからー! たしかにみっともない敗北でしたけどアレは事故ですよね、事故! 言うなれば、植木鉢が不運にも頭に落ちてきたようなものですよね!」

「……クウ。おまえは少し黙っていろ」

「あ、はい……」


 すいませんでした。


 お兄さまに言われて、私は素直に口を閉じた。


 ウェイスさんが言う。


「……とにかく、あれ以来、こいつはこんな調子でな。今回は、俺の頼み事ついでに連れてきたんだ」

「俺達は、ロディマスが騎士となることを目指し、今まで必死に努力し、成果を出してきたことを知っている。あのような一戦でその努力が水泡と帰すなど、あってはならないことだと思っている」

「はい、えっと……。そうですよね……」


 お兄さまの言葉はわかる。


 その通りだ。


「それで――。どうしてうちに? 私にカウンセリングなんて無理ですよ」

「おまえに頼みたいのはカウンセリングではない」

「というと?」


 私がたずねると、お兄さまがウェイスさんに目を向けた。

 なので私もウェイスさんを見た。


 すると――。


 いきなりウェイスさんが体を90度折り曲げた。


「クウちゃん!」


 ウェイスさんが、私に向けて手をまっすぐに伸ばしてくる。


「え、あ、はい?」


 なんだか昔の告白番組みたいだけど。


「今日から君のことをクウちゃん師匠と呼ばせてほしい! どうか俺達にもその剣技を伝授いただけないだろうか!」


 え。


 私が戸惑っていると、ウェイスさんがのけぞって叫んだ。


「クウちゃんがぁぁぁぁぁぁ!

 鍛えてくれたせいでぇぇぇぇぇぇ!

 俺はぁぁぁぁぁぁ!

 妹にも!

 婚約者にも!

 剣で勝てなくなってしまったのだぁぁぁぁぁぁぁ!

 兄として夫として!

 このままでは、顔を合わせることができないんだよぉぉぉぉぉぉぉ!

 なんとかしてくれやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 続けて、ふらりとロディマスさんが身を起こす。


「……ああ。

 俺もこのままでは、誰にも顔向けができない……。

 頼む……。

 君が本当に達人ならば……。

 俺に力を……剣技を……教えてはくれないだろうか……。

 くれないだろうかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 最後はロディマスさんまで、のけぞって絶叫した。


 …………。

 ……。


 なんだこれ。


 私は困ってお兄さまのことを見た。


「クウ」


 お兄さまが、じっと私のことを見てくる。


 あの、えっと。


 さすがに間近で見つめられると……。

 さすがのクウちゃんさまも、ほんの少しは照れますよ?


 と、お兄さまが目を反らした。


 コホン。


 お兄さまが息をつく。


 その後で言った。


「……もののついでだ。……俺にもお願いできないだろうか」

「えっと。剣技、ですか?」

「ああ……。頼む」


 お兄さまが恥ずかしそうにお願いしてくる。


「はい。いいですよ」


 教えること自体は、別に構わない。

 ウェイスさんの魂の叫びは、よくわかった。

 ロディマスさんにも、できれば立ち直ってほしい。

 あと1人増えても同じだし。


「……そうか。感謝する」


 恥ずかしがるお兄さまは、なかなかに新鮮だった。

 そもそもイケメンなだけに絵になるね。


「あ、でも、じゃあ、お兄さまも私のことを師匠って呼ぶんですか? 試しに呼んでみてくださいよ?」


 と言ったら、思いっきり睨まれたけど。


 まあ、呼ばれても困るから、呼んでもらわなくてもいいんですけれどね。




ロディマスがあっさりと負けたエピソードは、当時は名無しでしたが、

118 武闘会、一回戦

です。

よかったら確認してみてください\(^o^)/

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― 新着の感想 ―
ロディマス・・・いったい何コンボイなんだ!
「クウ、せめてもう少し言い方をだな」 初対面の年下の女の子にいまだに暴言を吐きまくる人が言えた言葉ではないよねー おにいさまはじぶんをみつめなおすといいよ☆
[気になる点] クゥちゃんクリティカル入ってるから!ぐさぐさ刺さってるから!!笑
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