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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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350 大忙し



 大宮殿でお風呂に入った後――。

 いつもならセラの部屋でお泊りするところなんだけど――。

 その日の夜は帰った。


 何故ならば、明日の準備をしなくてはいけないからだ。


「え? 皇妃様がいらっしゃるのですか? 明日?」

「うん。そうなんだよー。大変だよねー」

「それは……。はい……。一体、帰ってくるなり何があったのですか?」

「実はね――」


 まずはヒオリさんに事情を説明する。


「皇太子様も来るのですか!」

「大変だよねー」

「しかも、用件は不明、と」

「教えてくれなかったんだよー。友達の方に用事があるみたいなんだけどねー」

「昼前に来訪ということは、昼食も必要なのでしょうか?」

「さあ」

「帝室の方に下手な料理は出せませんし、それだと困ったことになりますね。準備しておくべきなのでしょうが……」

「ヒオリさんって、明日は空いてるの?」

「はい。お任せ下さい。学院に行っている場合ではなさそうですし」

「ありがとー。助かるよー」

「皇妃様方にも軽食とドリンクが必要になりますよね……。様子を見るのであれば、すぐに帰るわけではないでしょうし……。あと、どこに滞在の予定なのでしょうか? 綺麗にしておかねばなりませんよね?」


 正直、私は何も考えていなかった。


 まあ、たぶん……。


 何の準備もしていなくても、適当でも何も言われないだろうけど……。


 来るとわかっているのにそれでは、さすがに失礼な気がする。


 おもてなしの心は、ちゃんと見せるべきだろう。


 ヒオリさんがいてくれてよかった。


 明日、皇妃様達には、一階の応接室に入ってもらうことにした。

 部屋は綺麗だ。

 旅行期間中に大宮殿のメイドさんが掃除してくれた。

 ただ、飾り物はなにもない。

 花くらいは置くべきだということで、明日の朝に買いに行くことになった。


 食べ物は、悩んだ末、いずれにせよ高級品は用意できないので、いっそ姫様ロールと姫様ドッグでいいだろうということになった。


 軽食には、ユイが竜の里で作ったクッキーもある。

 最高の素材で作った逸品だ。

 見た目も綺麗だし味も素晴らしいし、これも合わせて出そう。


 飲み物は紅茶と水。


 すべて私のアイテム欄に入っている。

 ただ、アイテム欄からいきなり出すのは失礼なので――。

 事前に準備しておこうということになった。


 コップやお皿は、最初から棚に入っていたものがある。

 気にしていなかったけど、高級品らしい。


 そして、翌朝。


 市場に買い物に行って、途中で広場に寄ったら姫様ドッグのお店でおじさんが準備をしていたので――。

 頼み込んで、お昼にお店に持ってきてくれるように頼んだ。

 渋々ながらもオーケーしてくれてよかった。

 日頃の付き合いの賜物だね!

 これでアイテム欄を使わずに出来たてを提供できる。

 姫様ドッグは、姫様考案なのが売りだ。

 そこに加えて、皇族の方にもご提供! が加わるわけだから、きっとおじさんも大喜びしてくれるよね。

 詳しいことは話さず、とにかくおじさんに届けてもらうことにした。

 サプライズだ。

 驚く顔が楽しみだね!



 家に帰ったら、花を生けて。

 クッキーと姫様ロールをお皿に盛り付けて。


 あっちこっちを掃除して――。


「ふいー」


 一息をついたところで騎士たちに守られた馬車が来た。


 私とヒオリさんで並んでお出迎えする。


 馬車がお店の前で止まった。


 先に降りてきた執事さんの手でドアが開けられる。


 皇妃様とアリーシャお姉さまが、お忍びスタイルで降りてきた。


「ようこそいらっしゃいました」


 私はお辞儀してお出迎えする。


「あら。クウちゃんともあろう者が、どういう風の吹き回しかしら。そんなに畏まらなくてもいいのに」


 皇妃様が可笑しそうに言う。


「おもてなしです」


 私はにっこり笑って答えた。


「それはありがとう。嬉しいわ」


 皇妃様に続いて、アリーシャお姉さまが降りてくる。


「おはよう、クウちゃん」

「おはようございます」

「今日は朝から騒がしくして御免なさいね」

「いいえー。楽しんでいってください」

「そうですわね。お兄様が何を企んでいるのか、楽しませてもらうわ」

「……あはは」


 今更ながらだけど、私、いいのだろうか。


 これ……。


 後でお兄さまに恨まれる気がしてきたのだけれど……。


 挨拶の後は、ヒオリさんが2人を店内に招いた。


 まずはお店を見るようだ。


 お姉さまは、真っ先にエリカのぬいぐるみを見つけると、手に取った。


「これが薔薇姫のぬいぐるみですか……」

「えっと。あのぉ」


 ぬいぐるみを巡る争いは、セラとナオから聞いている。


「売上は?」

「えっと……それの、ですか?」

「ええ。『これ』は、どれくらい売れているのですか?」


 これの部分に妙な毒気があったのは、たぶん、気のせいだろう……。


 ともかく私は、ここ数日は外に出ていた。

 なので売上は知らない。

 ヒオリさんに視線を向けると、代わりに答えてくれた。


「現状では、ほとんど売れておりません。むしろとなりの銀狼ちゃんぬいぐるみの方が可愛いと売れています」

「これは――ナオさんですわね」

「はい。頼まれたので、ついでに作ったんです」

「……ねえ、クウちゃん」

「は、はい……」

「皇女様ぬいぐるみを作る予定は、ありませんのかしら?」

「それはさすがに……やめておこうかと……」

「そうですわね。わたくしでは無理があることは理解していますが……。セラフィーヌではどうかしら? 民に人気がありますし」

「売れるとは思いますけど……。うーん……」

「乗り気ではないの?」

「セラの皇女様伝説って、私のせいでもあるじゃないですか。それを更に私が増長するのはさすがに罪悪感が強いですよー」


「やめておきなさい、アリーシャ。クウちゃんが困っているでしょう」


 皇妃様のお言葉で、皇女様ぬいぐるみは作らずに済んだ。

 よかった。


「それよりもクウちゃん」

「は、はい?」


 妙な迫力で皇妃様に迫られた。


「新作のアクセサリーは? クウちゃんのことですからありますわよね? すべて見せて下さいな」

「は、はい……」

「あるのですね! 来た甲斐がありました!」


 実は、新作はたくさんある。


 エリカにマウントを取られないように、前世の人気ブランドの記憶を頼りに、いろいろと試作していたのだ。

 竜の人たちの助力を得て作った古代デザインのアクセサリーもある。


「言ってくれれば、大宮殿で出しましたけど……」

「それは駄目です。なにしろわたくしは、クウちゃんのためにお店でアクセサリーを扱わない方が良いと言った本人です。それをわたくしのためにアクセサリーを出せなど言える道理がありません」


 私的には助かったんですけれどもね。

 お値段以上に大人気になるのはぬいぐるみで懲りました。

 ぬいぐるみ以上に高価値なアクセサリーまで大人気になったら、それはもう面倒なことになっていただろう。


 ともかく、すべてご購入いただきました。

 大儲けです。

 毎度ありがとうございます。





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