表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

319/1359

319 景気づけ

 さあ、ユイとナオを連れて、禁区に出発だ。


 エリカとフラウを先頭に、竜の人たちに見送られて、転移。

 いつものようにマーレ古墳に出て、そこから銀魔法でダンジョンの外に出る。

 出入り口の衛兵さんに挨拶して町に向かう。

 町で物陰に入った。


「んじゃ、姿を消して、空から一気に禁区まで行くね」

「まった」

「どしたの?」

「クウ、これは試練。自力で行かないと」

「ていうと、歩いて?」


 たずねるとナオはうなずいた。


「んー。でも、ここからだと歩いて4日はかかるよ」


 マーレ古墳のダンジョン町から帝都までは徒歩で3時間ほど。

 帝都から禁区までは北に向かって3日。


「普通の人間で?」

「うん」

「なら平気。私の足なら1日」

「あー、うん。そうかもだね」


 ナオは、険しいザニデア山脈でも自由に歩き回る。

 体力と運動神経は抜群だ。

 平地なら並の人間の4倍くらいの移動は、たしかに簡単にこなしそうだ。


「でもナオ、道はわかるの?」

「帝都までは、街道沿いでいいんだよね?」

「途中に分かれ道はあるけど、立て看板があるから見ていけば平気かな」

「目的地は帝都の北だよね?」

「うん。帝都の北門から出て街道を進んで、かなり遠いけど、タステンっていう城郭都市に向かえばいいよ。禁区のあるディシニア高原に最寄りの町だから。タステンにつけば後はわかると思う」

「わかった。行ってみる」


 街道の立て看板を見逃さないように進めば、たぶん行けるだろう。

 けど……。


「……ねえ、ナオ」


 震える声で呼びかける一応は聖女のユイ太くんが、ここにはいた。


「4日の行程を1日なんて、私、無理なんだけど……?」

「試練」

「試練と言われてもお!」


 この後、しばらくユイが泣いてごねたけど、私には思うことがあった。


「ねえ、ユイにはさ、光の魔力があるよね?」

「うん。あるよ……?」

「ならさ、アレ、使えるんじゃない? 光の翼。あと透明化も」


 光の翼は、その名の通り、光の力で背中に翼を生み出す空中移動用の銀魔法。

 高速移動は無理だけど、人が走る程度の速度なら出せる。

 使用中の消費MPは微小。

 私が持つ精霊の固有技能『浮遊』に、近い感覚で使える魔法だった。


 透明化の魔法は、光の力で姿を消す銀魔法。


「それって銀魔法だよね? 私、白魔法しか無理だよ?」

「でも、どっちも光の力だよ。ゲームでもユイ、使ってたよね。もう昔のことだろうけどよく思い出して、強くイメージして使ってみて」

「……うん。やってみるね」


 ユイが目を閉じる。

 そして、しばらくの間を置いて、言った。


「光の翼」


 次の瞬間、ユイの背中に真っ白な、輝く翼が生まれた。


「あ、できた」


 翼をばたつかせて、ユイが宙に上がる。


「クウっ! ナオっ! できたよー! ほら、飛べてるー!」


 まさか一回で発動とは。

 さすがは聖女様。

 透明化の魔法も簡単に成功させて、ユイは消えたり現れたりした。


 とりあえず降りてもらう。


 空に浮き上がったことで、通りにいた観光客に思いっきり見られた。

 驚く声が聞こえる。

 でも幸いにも、わざわざ物陰に見に来る人はいなかった。

 風光明媚なので観光地化もされているとはいえ、なにしろダンジョンの町だ。


 冒険者が魔道具を使ったのだろう――。

 面倒なことになると困るから関わらないほうがいい――。

 と、思われている様子だった。


 ユイは素直に降りてきて、光の翼を消した。


「ありがとう、クウ。よくわかったよ。私、べつに白魔法にこだわらなくても、ゲームの魔法を再現できるんだね」


 そして、では行こうか、となったところで、リトが現れた。


「ユイー!」

「リトっ」


 飛び込んでくるリトを、ユイは笑顔で抱きとめた。


「竜の里を出たのですか!? なにかあったのですか!?」

「私、これから冒険なんだ」

「リトも行くのです! ユイの力になるのです!」

「ありがとう。お願いしてもいい?」

「もちろんなのです! 当然なのです! リトはユイのそばにいるのです!」


 というわけで。

 光の大精霊様がユイの補佐をすることになった。


 リトが真っ白なフェレット姿になって、ユイの肩に乗った。

 注目を浴びるつもりはないようだ。

 いいね。


「ちなみにリト、ユイを運んで空は飛べる?」

「楽勝なのです。鳥より早く飛んでみせるのです」


 ふむ。


 光の翼すら必要なくなったね。


 よく考えれば、そうだよね。


 ユイにはリトがいるのだから、はっきり言って、すべて問題なしだよね。

 精霊界からリトを連れてくるだけで万事解決だった。

 まあ、勝手に来たけど。


「なんかもう、ピクニック気分だね」

「なのです!」


 ユイが、リトを肩に乗せたまま腕を広げて、その場でくるくると回る。

 本当に気楽で幸せそうだ。


「そーれー! くるくるー! 回っちゃうぞー!」

「回るのですー! 楽しいのですー!」

「くるくるー! くるくるー!」

「ユイは最高なのです! リトは楽しいのですー!」



「……クウ。私に何かを言って下さい」


 ナオにそう言われた。


 ふむ。


 旅立ちの時だ。


 ここはひとつ、景気づけでもしてあげよう。


「じゃあ、芸をしまーす!

 一番、クウ!

 一人芝居ー!」


 さあ、行くぞ。


 テンポよく、レッツ、スタート!



「ハイハイハイ!

 ハイハイハイ!

 はいっ!」


 ガニ股に腰を下ろし、腕を左右に広げてヒジを90度、上に曲げる。


「カニ」


 そして、指でVサインを作って、チョキチョキ。


 もういっちょ行くよ!


「ハイハイハイ!

 ハイハイハイ!

 はいっ!」


 頭のてっぺんに手のひらを乗せる。

 指はピンと上に向ける。


「ちょんまげ」


 言ってから。


「ぴんこん、ぴんこーん」


 手のひらを前に倒して、すぐに立てる。


「はいクウちゃんさん、正解をどうぞ!」

「せんべい!」

「正解です! 勝ち抜けおめでとう!」

「やったぁぁぁぁ!」


 ザ・一人芝居。


 …………。

 ……。


 え?


 ハッと気づいて、全身で驚く。


「クイズだこれぇ! ちょんまげじゃなかったぁぁぁ!」


 はい。


 おわりです。


 ありがとうございました。


 これでナオも元気百倍!


 さあ、出発だ!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ここまでで後1000話! なごみあり笑いありシリアスあり涙ありのお話がとってもおもしろくて引き込まれて、数日で一気にここまで読みました(*´ω`*) これからの展開も楽しみです……すてきなお話をあり…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ