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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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312/1359

312 朗報? 大丈夫? フラグ?

「そんなことよりも、クウ。ふふふ。おーほっほっほ。朗報ですわよ」


 エリカが高笑いをする。

 相変わらず絶好調のようだ。


「どしたの?」

「聞いて下さいませ。なんと、ここにいるハースティオさんが、わたくしと一緒に王国に来て下さるというの」

「そうなんだー。……いいんですか?」

「はい。先日のお茶会で、すっかりメイドという職業が気に入ってしまいまして。エリカ様がご存命の間は従者として楽しませていただこうかと」

「おーほっほっほ。どうです、すごいでしょう? 竜の従者ですわよ」

「すごいねー。でも存命の間っていうと、下手すれば100年近くになるかも知れないけど本当にいいんですか?」


 私は心配になってたずねる。

 エリカは100歳まで生きそうだし。


「私はもう7000年生きていますので。100年程度なら、ちょっとした旅行のようなものです」

「……フラウよりずっと年上なんですね」


 びっくりだ。

 フラウは1000歳と言っていたから7倍だね。


「とはいえ強さで言えば、王種であるフラウニール様の方が遥かに上ですが」


 なるほど。

 一口に竜と言っても種別はあるわけか。


「それでも人間なんてイチコロですわよねっ!」

「エリカ様がお望みとあらば、軍隊でも薙ぎ払って見せます」

「おーっほっほっほ! 聞きまして、クウ! わたくし、いきなり最強ですの!」

「……いや、やらないでね?」


 帝国に来たら私が薙ぎ払うからね?


「もちろんやりませんわ。わたくし、野蛮なことは嫌いですの」

「よく言うよー。帝国と戦争しようとしていたクセにー」

「おーっほっほっほ」

「高笑いでごまかすなっ!」


 ホントにもう。


「というわけでクウ、次のお茶会もお願いしますわね。……できれば……その……カイスト様もご一緒に……」


 なんか恥ずかしそうに言われた。


「……うーむ」

「あら。クウは興味ないんですわよね?」

「興味はないけどさー。ディレーナさんと取り合うでしょー、エリカ」

「当然ですの。これは戦い――いいえ、狩りですもの」


 お兄さま、獲物宣言されましたよ!


「あとで私がグチグチ言われるんだよー。めんどっくさくてさー」

「それくらいは我慢して下さいませ。わたくしの人生がかかっているのですよ」

「んー。まあ、いいけどさー」

「頼みますわ。一生のお願いですの。あと、いかにわたくしが素晴らしい人間であるかを宣伝しておいて下さいな」

「それはパス」

「どうしてですのっ!?」

「いや、だってさぁ……」


 よき親友なのは確かだ。

 そこに疑いはない。

 でも、さ。

 それと素晴らしい人間であるかどうかは別、だよね……。


 そんなことを話している内――。


 ド・ミの国の礼服に着替えたナオと、古代の神子装束に着替えたユイが、2人そろってフロアに戻ってきた。

 ナオの首には、サギリさんから預かった牙が掛かっていた。

 牙は、紐で結んでネックレスにしたようだ。


「あら。2人ともどうしましたの?」

「お出かけ」


 ナオがいつもの無表情で答える。


「わたくしも行ったほうがいいのかしら?」

「ナオの昔の知り合いに会いに行くだけよ。でも最悪、戦闘になるかもだから、エリカは今回は遠慮しておいて」


「ナオ、この試練、2人で成し遂げて、生き残ろうね」


 ユイが、ガッチリとナオの手を握る。

 冗談を言っている様子はない。

 真顔だ。


「とりあえず、わかりましたわ。ナオ、どんな試練なのかわかりませんけれど、とにかく生き延びて下さいませ」


「いや、うん、ユイもエリカも、そういうのじゃないからね? ナオの古い知り合いに会いに行くだけだからね?」


 絶対に平和で安全と言い切れないところが悲しいけど。

 そればかりはしょうがない。

 なにしろ相手は、まだ敵意を失っていない。

 ナオが本物のナオだと信じてくれるといいんだけど……。


「じゃあ、行くね」


 エリカに見送られつつ、銀魔法の『転移』を使った。


 視野が暗転。


 次の瞬間には、ユキハさんが眠ったままのダンジョン最奥の小部屋に戻った。


「どう、ナオ。知り合い?」

「うん。間違いない。白狼族の、ユキハ・スド」

「――起こすね」


 魔法を解除しようとすると、


「まった」


 ナオが制止してくる。


「どうしたの?」

「先に詳しい話を聞かせてほしい」


 そう言えばそうか。


 私はここに至るまでの話をできるだけ丁寧に伝えた。

 以前に帝都で起きたゾンビ騒ぎ、南の海の底にいた邪悪な存在のことも含めて。


 話を聞き終えたナオは考え込む。


「帝国って大変だね……。そんなことがあるだなんて……」


 ユイがつぶやいた。


「聖国ではないの?」

「うん。そういう騒ぎは聞いたことないなぁ」

「ユイがいたからかな?」

「私も聖国に光の加護があるようにいつも祈っていたけど……。リトがいてくれたからかも知れないね」

「あー、そっか。よくユイの家の庭にいたんだったね」


 リトは、見た目も言動も幼女だけど、あれでも歴然とした世界の光の守り手。

 その影響力は確実に絶大だ。

 もちろん、世界が定めた聖女たるユイの祈りも大きいだろうけど。


「でも、それだとさ」


 ふと思う。


「どうしたの?」


 ユイが首を傾げる。


「うん……。今、ユイもリトもいないよね? 無防備じゃない?」


 聖国。


「あはは。そんなことはないよー」

「そうかなー。今まで手が出せなかった分、今がチャンスだとばかりに悪魔の影が伸びまくらなければいいけど」

「聖国には総大司教も聖王もいるんだよ。それにたくさんの神官も」

「ならいいけど……」


 聖都で出会った粗暴な冒険者、メガモウのことをふと思い出す。

 メガモウ、元気だろうか。

 ユイのためなら命も惜しくないと真顔で言っていたけど。


 まあ、いいか。


 あんまりに気にしているとフラグになりそうだ。


「――それで、ナオ。どうする?」

「クウ、お願いがある」

「うん。なに?」

「場所を変えてほしい。もっと普通に、落ち着いて話せる場所に」

「なら一度、ダンジョンから出ようか」

「お願い」


 ユキハさんを担いで、ユイとナオには体に触れてもらう。

 私は銀魔法の『離脱』を発動した。

 ダンジョンの外に出る。

 出入り口にいた衛兵さんたちには敬礼された。

 尋問はされない。

 ついに顔パスのようだ。

 素晴らしい。


「湖でいい? この先にあるけど」

「うん。いい」


 山の中腹にあるマーレ古墳のダンジョン町は観光名所にもなっている。

 近くには、緑に囲まれた綺麗な湖もあった。

 姿を消して、空に浮かんで向かう。

 夏の最中とあって、残念ながら湖畔には観光客が多かった。

 なので上に飛んだ。

 湖とダンジョン町を見下ろせる高台を見つけて、そこに着地する。





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