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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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309 さて、どうしようか

「とりあえず、お米、買います。2袋ください」

「え? クウちゃんが?」

「はい。私、実は商業ギルドの会員なので」


 会員証を見せると、ユキハさんに目を丸くして驚かれた。


「商店主さんでしたか。これは大変に失礼いたしました」

「えっと、金貨6枚でいいよね」


 値引き交渉はしない。

 面倒だし。

 私、大金持ちになったものだ。


「はい。お買い上げ、ありがとうごさいます。お運びはどうしますか? 有料になりますがギルドの宅配サービスを使用しますか?」

「ここで受け取るので大丈夫です。はい、これ。金貨6枚」

「確かに頂戴しました。ありがとうございます」


 礼儀正しくユキハさんが頭を下げる。

 先程見せた暗い眼差しは、まるでただの錯覚だったかのようだ。


「馬車までは運びますぜー」


 軽々と両肩に米袋を担いで、男の人たちが声をかけてくる。


「あ、私が受け取るので平気です」

「……お嬢さんが?」

「はい。とりあえず置いてもらえますか?」

「お、おう」


 魔法のバッグをかざして、アイテム欄に収納。

 驚かれたけど、まあ、いいよね。

 なんといっても、バルターさんも公認の魔法のバッグなんだし。


 この後は少し質問攻めされた。


 魔法のバッグは、どこで売っているのか。

 いくらなのか。


 聞かれたけど、適当にごまかした。

 こういう時、私は便利だ。

 子供相手にしつこくする気はないようで、ユキハさんたちは諦めてくれた。


 アイテム欄の説明欄で確認するけど、お米に異常はなかった。

 それどころか上級品と鑑定された。

 商売で悪いことをするつもりはないようだ。


「じゃあ、また来ますねー」

「ありがとうございました」


 背後を警戒しつつ、私はいったんユキハさんたちのブースを離れた。


 もしかしたらバッグを奪いにくるかなぁ。

 とも思って、わざと物陰に入ってみたりもしたけど――。

 そんなことはなかった。


 東方市のいろいろなブースを見つつ、私は考える。


 どうしたものか。


 敵感知の反応する相手を放置はできない。

 ユキハさんは、きっとなにかをする。

 それはきっと、私個人にではなく、帝都にダメージを与えるなにかだ。


 やはり強引に転移で連行。

 話を聞くべきか。

 最悪、ゼノを連れてくれば、闇の精神操作で話は聞ける。


 あるいは、バルターさんに相談するか。

 その方がいい気もする。

 ただ、バルターさんがどこにいるのかわからない。

 たぶん大宮殿だろうけど……。

 探して、話して、決める、どうしても時間はかかってしまうだろう。

 その間、ユキハさんから目を離すのは危険な気がする。

 だって今すぐにも、なにかをするかも知れない。

 私がそばにいれば、すぐに対応できるけど、離れていてはさすがに無理だ。

 これもゼノを連れてきて張り付かせていれば問題ない気もするけど……。

 ボクを便利なアイテム扱いしてぇ!

 と前にゼノが怒っていたしね……。

 あまり気軽には、呼ばない方がいいだろう。

 ゼノも忙しいみたいだし。


 あああああああ!


 頭が沸騰するぅぅぅぅ!


 ダメだ。


 私の思考回路はショート寸前だ……。

 今すぐ決めたいよ……。


 もういいや!

 やっぱり強制転移が簡単でいいかな!

 万が一にも無実だったら、ごめんなさいすればいいよね!


 自棄になりかけて、とどまった。


 …………。

 ……。


 結局、『透化』して、少し離れた場所に漂って様子を見ることにした。

 まずは相手を知ろう。

 いつどこでなにをしようとしているのかがわかれば、バルターさんに報告して対処してもらえばいいし。


 というわけで、私は浮遊霊のように漂ったのだけど。


 これが退屈だった。


 なにしろユキハさんは普通に商売を続ける。

 私は離れた場所から見ているだけ。

 当然、やることがない。


 お。


 高そうな服を着た肥満な男性が、うしろに部下を引き連れて、ユキハさんのブースに近づいてきた。

 金持ちだ。

 指に宝石のついた指輪がたくさんついている。


 誰かと思えばウェーバーさんだ。


 そう言えばウェーバーさんは、初めて会った時にも派手な成金スタイルだったね。

 普段の地味なスーツ姿に慣れたせいか、誰だかわからなかったよ。


 護衛のキャロンさんも同行している。

 昨日の夜、いつもの白猫亭でバカみたいにお酒を飲んでいたのに、二日酔いの様子は欠片もない。

 お気楽そうに歩きつつも、油断なく周囲に気を配っている。

 しかも、なにかあれば、即座に剣を抜ける姿勢だ。

 キャロンさん、プロだ。


 ウェーバーさんは、どうやらお米を買い付けるようだ。

 距離を取っているので会話までは聞こえないけど、なにやら交渉している。

 やがて交渉がおわった。

 ウェーバーさんとユキハさんが握手をする。


 しかし、ウェーバーさんはやり手だ。


 姫様ドッグと姫様ロールのお店をいつの間にか取り込んでいたり、ぬいぐるみマートを大成功させたり。

 お米にしても、高級レストランでなら黒字で出せるだろう。

 なにしろ聖女様の大好物だ。

 需要は確実にある。

 ウェーバーさんなら、ユイの考案した和食の数々も知っているだろうし。

 豚汁定食とか、とんかつ定食とか。

 帝都でも食べられるのなら、ぜひに私も行かせてほしいところだ。


 部下の1人を残して、ウェーバーさんたちが立ち去る。

 ユキハさんは試食コーナーを片付け始めた。

 男の人たちはお米と漬物の値札を取り外す。

 どうやらウェーバーさんがお米も漬物も買い占めたっぽいね。


 お米、買っておいてよかった!


 後片付けがおわったところで、ユキハさんが1人でブースを離れる。


 どこにいくんだろう……。

 いよいよ、なにかやる気なのかな……。


 ていうか。


 もういいか。


 めんどくさくなってきた。


 というか、面倒。


 追跡なんて、延々とやっていられない。


 売るものは売ったみたいだし、もういいよね。

 うん。

 オーケー。


 私はこっそりとユキハさんの背後に近づき――。

 そっと背中に触れる。

 気づいたユキハさんが振り返ろうとするけど、もう遅い。


「転移、マーレ古墳、最奥」


 私は魔法でユキハさんを連れ去った。


 さあ。


 他には誰もいない場所で。


 ゆっくりと、話を聞かせてもらおうかな。



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