表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

305/1359

305 帰宅

 パーティーがおわった。

 陛下たちとは会場でお別れして、私たちは願いの泉に歩いた。

 魔法で飛んで帰るのでどこからでもいいんだけど、なんとなく、いつも願いの泉が発着場になっている。

 なので泉のほとりから帰ることにした。


 お見送りしてくれるのは、アリーシャお姉さまとセラとディレーナさんとマリエ――お茶会の参加者たちだ。

 マリエはディレーナさんと一緒に帰るとのことだった。

 すっかり仲良しのようだ。


 別れの言葉を交わす。


 だいたいは友好的だった。


 一部を除いて。


「それではエリカさん、御機嫌よう。お別れですわね。王国での今後益々のご活躍を期待しておりますわ」

「あら、ディレーナさん。お別れなんて寂しいことを言いますのね。わたくし、帝国の空気がすっかり気に入ってしまいましたの。クウに頼めばいつでも来れますし、また近い内にお邪魔させていただきますわね」


 エリカとディレーナさんが火花散る視線で笑顔をぶつけ合う。

 私は決めた。

 この2人の争いは見てみぬフリをしよう。


 ユイとアリーシャお姉さまはちゃんと仲良くなれたようだ。


「アリーシャさん、今日は本当に楽しかったです。ありがとうございました」

「こちらこそですわ、ユイさん。また会える日を楽しみにしています。これからも、よい関係でいましょう」

「はい。帝国に友人ができて嬉しいです」


 うん。いいね!

 ちなみにユイの肩には、フェレット姿のリトが乗っている。


「ナオさんもお元気で」


 セラがナオに声をかける。

 ナオは、いつも通りの無表情でVサインを出す。


 部屋から戻ってきたナオは、いつも通りだった。

 最初からすっぴんなので、涙で化粧が崩れたということもない。

 少し腫れていた目も、もう戻っている。


 ナオはこれからどうする気なんだろう。

 探しに行くのだろうか。

 姉と呼ぶほどに親しかったニナさんという人を――。


 正直、エリカのことはどうでもいいけど、ナオのことはとても気になる。


「じゃあ、まったねー。セラ、マリエ、おやすみー! アリーシャお姉さまとディレーナお姉さまも今夜はありがとうございましたー!」


 手を振って、重力操作でエリカたちを掴んで、続けて透明化の魔法をかける。

 そのまま空の上に行く。

 十分に浮き上がったところで透明化を解いた。


 これから私たちは魔法で竜の里に帰る。

 リトとはここでお別れだ。

 リトはユイにひっついてダダをこねたけど、こればかりはしょうがない。

 一ヶ月後にはまた会えるんだから我慢しなさい!

 生きてたんだから幸せでしょう!

 ということで精霊界に帰らせた。


 その後で、転移。


 フロアに行くと、フラウが待っていてくれた。


「ただいまー」

「お帰りなのである」


 お茶会が上手くいったことを伝える。

 フラウへの詳しい話はメイドとして同行した竜の人がする。

 私たちはお風呂。

 すっきり、さっぱりして、簡単な服に着替えて、あらためてナオの部屋で集まる。


 さて。


 というわけで。

 ここから先は、前世組だけの時間。


 テーブルの上にお菓子とジュースを置いて、お疲れさま会だ。

 まずは乾杯。


「で、どうだったの、エリカ。皇太子様はクウのお相手として相応しかった?」


 乾杯の後、すぐにユイがたずねる。


「ユイ、それはわたくしの勘違いでしたの」

「それって?」

「ねえ、クウ」


 エリカが確認を取ってくるので、私はうなずいた。

 お相手とかにする気はない。


「なーんだ。そうだったのかー。私、ちょっとほっとしちゃったよー」

「どうして?」

「だってクウだけ先に婚約したら寂しいでしょー。私なんて聖女になって、結婚できるかもわからないのに」

「私は予定ないから安心していいよー」

「うんっ! するならみんなで一緒にしようねっ!」


 それ、壮絶に裏切るフラグだよね。

 マラソン大会で一緒にゴールしようね的な意味で。


「ユイ、残念ですけれど、わたくしは約束できませんわよ」

「えー。なんでー?」

「だってわたくし、王女ですから。そろそろ婚約しないと示しがつきませんの」

「示しなんていいよー。私が聖女として、エリカは22歳まで結婚してはいけませんって宣言してあげるからー」

「やめて下さいっ! 洒落になりませんわっ!」


 エリカが叫ぶのもわかる。

 ユイに宣言されたら、確実にそうなってしまうよね。

 22歳なんてまだまだ若いと思うけど、こっちの世界の王族的には、それなりに遅い部類になるようだし。


「ナオはー?」


 ユイはどうしても仲間がほしいようだ。


「素敵なカメがいたらその時に考える」

「ならいっかー」


 まあ、うん。

 素敵なカメ、探せば海の中にいるかも知れないけど、お相手にはならないよね。


「ねえ、ナオ。そんなことよりもさ――。これからどうするの?」


 ナオはそれどころではないのだ。

 大切な願いを託されたのだ。

 私としては、そちらの方が気になる。


「ああ、そうでしたわよね。ナオは昔の知り合いとは、会えましたのよね?」

「うん。会った。帝国の市民になっていた」

「それではナオも帝国で暮らしますの?」

「えええええええ!? そうなのー!?」

「ユイ、うるさい」


 耳にジンって来たよ。


「だってー。ナオ、竜の里からいなくなっちゃうの? そんなのヤダー。ヤダヤダヤダヤダヤダー」

「またリトみたいなダダをこねてー」

「だってー! エリカは9月になったら王国に帰っちゃうでしょ。私、一人ぼっちになっちゃうよー! ヤダヤダヤダー!」


 リトの時は、よしよししてお姉さんしてたくせに。


「帝国には住まない。誘われたけど断った」

「よかったぁ」


 ユイがほっと胸を撫で下ろす。


「クウ。お願いがある」

「いいよ。言って」

「8月がおわったら、エリカを送るためにまたここに来るよね?」

「うん」

「その時、」


 ナオはここで言葉を止めた。

 私は待つ。

 次に来る言葉は、きっとナオの運命の歯車を動かすものだ。


 でも――。


 次の言葉は来なかった。


「……なんでもない」


 私から目を反らして、ナオはつぶやいた。

 立ち上がると、壁にかけてあった甲羅アーマーを胸に抱く。


「……クウは、8月のおわりにまた来るんだよね?」

「うん。来るよ」

「その時でいい。その時までには――」

「うん。わかった」


「どうしたの、ナオ?」


 ユイがキョトンとした顔でたずねる。


「なんでもない」


 甲羅アーマーを胸に抱いたまま、ナオが元の位置に座る。


「ねえねえ、クウっ! それにしてもさー。帝国の皇帝陛下と皇妃様、それに他の貴族の人たち、みんな、感じ良かったねー」

「陛下たちもユイの感じの良さに関心していたよー」


 お姉さま、曰く。


「ねえ、クウ。わたくしは?」

「エリカ?」

「はい。わたくしも感心されていたでしょう? 美しく聡明で、まさに国の柱となるに相応しい存在だと」

「さあ……。どうだろ……」


 少なくともディレーナさんやアリーシャお姉さまとは。

 微妙な空気だったよね。


「あらあら。聞いていませんの?」

「まだ陛下たちと、今日の感想をお話したわけじゃないしねー」

「それもそうですわね。ふふふ。今日のわたくしは完ぺきでした! 我ながら!」


「エリカはいつでも自信たっぷりで羨ましいよ」

「ねー」


 ユイと2人でうなずきあった。


 ホントに。

 そこだけは見習いたい。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 〉ホントに。  そこだけは見習いたい。 ソレ、其処以外は駄目って事でしょw
[一言] >「素敵なカメがいたらその時に考える」 ウニと結婚か
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ