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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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30 究極魔法スターライト・ストライク





「じゃあ、ナオ、私にしっかりと抱きついて。ここだと不味いから、どこか離れた場所まで飛んでいくね」

「クウは飛べるの?」

「うん。ふわふわだよー」


 ナオを抱えてでも、『浮遊』であれば楽勝だ。


「私、汗をかいた」

「いいよ。平気」

「わかった」


 ナオが抱きついてくる。

 空で落ちたら大変なので私も腕を回した。

 そして『浮遊』。

 2人で浮き上がった。


「……すごい」

「よく考えてみると、自由に空を飛べるって我ながらすごいよね」


 さーて、どこにしようかな。

 周囲を見渡す。


「クウ、空を飛べるなら連れて行ってほしいところがある」

「いいよ。どこ」

「私が落とされた谷の底。トリスティン王国のほうにあるはず。殺されたみんなに祈りを捧げたい」

「どっちだろ……?」

「トリスティン王国は、こっちのほう。詳しい場所まではわからないから、近くに行くだけでもいい」


 ナオが指差す方向をマップで確かめると、南東。

 帝国とは反対側だ。


「とりあえず行ってみるね。あーでも、走る程度にしか速度が出ないから、着くまでに時間かかっちゃうかも」

「平気」

「わかった」


 私、いつもならそろそろ就寝なので、途中で睡魔に襲われそうで怖いけど。

 今夜は我慢だ。

 意識をキチンと保って『浮遊』する。


 まずはテラスの高さまで上がった。

 すると、テラスにいた幼女、フラウと目が合った。


「2人とも、どこに行ったのかと思えば、夜のデートとは羨ましいのである」

「デートじゃないけどね」


 戦ってたし。


「妾も抱きつくのである」

「わっ。こらっ」


 ジャンプして抱きつかれた。


「ごめん落ちるっ! 落ちるから離してっ!」

「これならどうであるか?」

「お」


 急に楽になった。


「妾も飛んでみたのである」

「なら離れてくれると……」


 さすがに2人は暑苦しい。


「クウちゃんの抱き心地はやはり最高なのである。今夜は一緒に寝たかったのであるがまだ用事であるか?」

「あ、そうだ。フラウならわかるんじゃない?」

「なにがであるか?」

「ナオが殺されかけた谷底の場所」

「わかるであるが――」

「みんなに祈りを捧げに行く」


 ナオがそう言うと、フラウは驚いた顔を見せる。


「カメよ、本気であるか?」

「本気」

「場所はわかるから案内するのである」

「なら、フラウに竜になってもらって――」

「このまま行くのである。人の姿でないと、こうやって抱きつけないから嫌なのである」


 離れてくれそうにない。

 かといってナオを放り出すわけにはいかないので、仕方なくこのまま飛んだ。

 フラウはすごかった。

 飛行を主導してやるというのでお願いしたら、私とナオがいるのにスピードがぐんと上がって銀魔法『飛行』並の速度になった。

 さすがは古代竜。


 一気に山脈を越えて、越えて、越えて。


 夜の内に到着した。


「ここであるな」


 私たちは崖の淵に降り立つ。

 ここでやっと、フラウも私から離れてくれた。


「ここから先がトリスティン王国。人間以外は奴隷扱いされるから、クウちゃんは決して行ってはならんのである」


 フラウと同じ方向に目を向けると、丘陵地帯が広がっていた。

 トリスティン王国。

 ナオとナオの国に酷いことをした国か。

 遠くには町か砦か――わずかだけど人工の光が見える。


「そして、これがカメのいた谷である」


 私たちは谷を見下ろす。


 ナオは目を閉じて手を合わせた。


 谷は深い霧に包まれていた。

 なんとも不気味な、黒と紫が混じり合った霧だ。


 いや、これ、霧なのだろうか……。


「ねえ、フラウ。これって……」

「いつの間にか、瘴気に満ちているのである」


 谷底からは、何か不気味な音も響いている。

 風の音だろうか。

 唸り声や呻き声にも聞こえるけど……。


「死者の魂が神の許に帰れず、悪霊となっているのである」

「酷いね……」


「クウ、なんとかできない?」


 目を開けたナオが私に言う。


「ここは妾が竜に戻り、」

「いや、私がやるよ」

「クウちゃんが、であるか?」

「ちょうど本気の魔法を見せる約束もしてたし。この谷、消滅させていいよね?」

「それはむしろ歓迎なのであるが……」

「あと、近くに魔物くんは住んでる? 住んでるなら退避してもらわないと。大丈夫とは思うけど想定外もあるかもだし」

「このあたりは人間の領土に近いので、魔物は住んでいないのである。それより何をする気なのであるか?」

「魔法だよ」

「魔法で、あるか」

「フラウ、ナオをお願い。2人で離れた空の上に行ってて」

「……わかったのである」


 ナオを抱いて、というか抱かれて、フラウが空に飛んだ。


 私も空に上がる。


 さて。

 果たしてどこまでの威力になるのか。

 やってみるか。

 ソウルスロットを、古代魔法、魔法威力アップ、パワーワードにセット。


 2人が十分に離れたのを見て、開始。


「パワーワード」


「我、クウ・マイヤが世界に願う。

 我に力を与え給え」


 よし。

 魔力が体の中で膨れ上がった。


「発現せよ」


 魔法を選択する。


「集中せよ」


 集中ゲージを貯めていく。

 100%まで来たらターゲットを定める。


「解放せよ」


 さあ、行くぞ。


 選んだのは、晴れた夜の野外でしか使えない究極魔法だ。


「スターライト・ストライク」


 この魔法は、発動から実際の効果が現れるまでに少し時間がかかる。

 なので実用性は低い。

 でも威力だけは最強で最高。

 さらに極めて強力なターンアンデッドの効果がある。

 魂を天に帰してあげることもできるはずだ。


 夜空が輝きを増す。

 星の光のひとつひとつが何倍にも膨れ上がって、やがて夜空全体を染める。

 染まった光は渦を巻き、ターゲットの上空でひとつの塊となる。

 そして、一瞬で突き刺さる。

 大爆発。

 光の濁流が、谷も何もかもを飲み込む。


 やがて光は消え、世界には静寂が戻る。


 そして、眼下には巨大なクレーターが出来ていた。

 野球場より遥かに大きい。

 地形も瘴気もすべて消えてなくなっていた。

 沈黙だけが、そこには残っていた。


 うん。

 この魔法は封印決定。


「クウ……」

「……ク、クウちゃん?」


 ナオとフラウが、ふらふらと近づいてきた。


「よかった。2人も無事だよね。思ったより攻撃範囲が広かった。びっくりした」


「驚く程度ではないのである。何であるか、今の神の御業は」

「私の魔法だけど?」

「ぐうの音も出ないのである」


 私たちは、クレーターを避けて大きな岩の上に降りた。


「どうだった、ナオ?」

「凄かった。人間業じゃない」

「私、精霊だしね」

「そうだった。でも、ありがとう。よくわかった」

「どういたしまして。これで許してくれるよね?」

「許した」

「よかった。ごめんね」


 ナオは相変わらずの無表情だったけど、私を許してくれた後、その赤い瞳で静かにトリスティン王国の方を見つめる。

 何を思うのだろう。

 気になるけど、聞くのは不躾だし、私は限界だった。


「ふぁぁぁ~」


 あくびが出る。

 仕事がおわって一息をついたら、眠気が怒涛の勢いで襲ってきた。


「ごめん、もう無理。帰るのは、ちょっと寝てからでお願い」


 岩の上で横になる。


「クウちゃんは大物であるな。寝るなら妾も付き合うのである。カメよ、お主も寝ておらんのだから一眠りするとよいのである」

「私はいい」

「で、あるか」


 フラウが私にくっついて寝転ぶ。

 私はすぐに寝てしまった。




30話まで来ました\(^o^)/

ここまでおつきあい下さりありがとうございました。

今後ともよろしくお願いします。

ブックマークと評価もよかったらお願いしますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
なかなか出てこない魔王、このスターライトストライクですでに倒されてる可能性もあるのかな?または南の島のやつとかで?
[一言] 我々はふわふわしてる精霊さんを愛でるのがお仕事です!
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