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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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299 審判者マリエ、審判の時(マリエ視点)

 一礼してナオさんが下がります。

 最後のギャグ……。

 メラだけに、の意味は、正直、よくわかりませんけど……。

 メラメラ燃えるから火につながるのでしょうか……。

 クウちゃんとエリカ様とユイ様にはやたらウケて笑いを取っていましたので、なにかあるのでしょう。


「マリエ、審判を」


 ナオさんが言います。


 するとエリカ様が立ち上がります。


「ちょっとお待ちを。クウとユイとナオが芸を披露して、わたくしが披露しないわけにはいきませんわね。マリエさん、よろしいかしら?」

「は、はい……。それは構いませんが……」


 エリカ様は、大国ジルドリアの姫君です。

 しかも薔薇姫と称される美姫です。

 実際、とてもお美しく、派手で豪華な見た目をしている方です。


 そんな方が芸……。


 想像がつきません。


 エリカ様が前に出ます。


「4番、エリカ。いきます。マイナーなモノマネ!」


 マイナーなモノマネですか……。

 私にもわかるネタだといいのですが……。


「友人がカメになってしまったのをあきらめて眺めているクウ」


 クウちゃんがネタのようです。

 でも、友人がカメになるって、どういう状況でしょうか。

 謎です。


 エリカ様が立ったままの姿勢で、疲れた顔をして、こう言います。


「そかー」


 あ、みんなが笑いました。

 用意された場面はまったくわかりませんが、そかーと言うのがクウちゃんの口癖なのは私も知っています。

 エリカ様のモノマネはクウちゃんによく似ていました。


「ありがとうございました」


 一礼して、エリカ様が席に戻ります。


「……ねえ、エリカ。実はそれ、他の友達にもやられたんだけど、私って結構、そかそか言ってるのかな?」

「言っていますわよね?」

「そかー」


 テーブルに伏せるクウちゃんに、またみんなが笑いました。

 だって落ち込むそばから使っていますから。


「さあ、マリエさん。わたくしも満足したことですし、審判をどうぞ」

「……あ、はい」


 エリカ様に促されて私は前に立ちます。


「えっと、では……。

 発表させていただきます……。

 コント一発勝負の勝者……。

 今回は――。

 該当者なしとさせていただきまぁぁぁぁぁす!」


 最後、私は叫びました。

 ほぼ自棄です。


「――これが白黒を決めるべき勝負だと理解した上での結論なのですね? 詳しく理由を述べなさい」


 うう。


 冷たい声でアリーシャ殿下が言います。


「……あの、えっと。

 これ、コント一発勝負ですよね……。

 まず、ユイさんのは本人がおっしゃられたように談話ですし……。

 クウちゃんのは大道芸ですよね……。

 ナオさんのは、いいかもしれませんけど一発ではなくて連発でしたし……。

 エリカ様のは一発芸ですよね……」


 そうなのです。

 だれもコントで一発勝負していないんですから……。


「なるほど。理由はよくわかりました」


 よかった。

 アリーシャ殿下はわかってくれたようです。


「とはいえ、マリエ。貴女は審判者。勝者を決める義務があるのではなくて? でなければリト様の運命も決まりません」


 安心した途端、アリーシャ殿下にそんなことを言われました。


「そうなのです! 早くユイの勝利を告げるのです!」


 ユイさんにくっついた光の大精霊様が、私に怒気を向けてきます。


「さあ、マリエ。そこで吠えている小動物のことは気にしなくていいから、素直な気持ちで1番に笑った人を選んで。私、最高だったよね?」


 クウちゃんが笑顔で言います。

 クウちゃんって、時々、笑顔が怖いです。


 ……勘弁してほしいです。


 みんなの視線が私に注がれています。

 逃げ場はないです。

 いっそお父さんみたいに死んだふりをしちゃおうかなーと思うのですが、ここには聖女様がいます。

 さらには、精霊様が。

 死んでも魔法で蘇生されそうです。


 やむを得ません。


 私は覚悟を決めました。


「……わかりました。では、私が1番に笑った人を発表します」


 私は参加者を順番に見ていきます。


 ユイさん、クウちゃん、ナオさん、エリカさん。


 みんなすごい人たちです。

 本来なら、私のような庶民が優劣を決めてよい相手ではありません。


「優勝は――」


 でも、決めます。


「ナオさんです! おめでとうございます!」


 私は叫びました。

 決めてしまいました。


 迷いは――。


 ありませんでした。


 なぜなら、1番笑ったのはナオさんのショートコントだったので。


「うえー。負けちゃいました。ごめんね、リトちゃん」

「……うう。無念なのです。でも、リトのために戦ってくれて感謝なのです。この大恩はいつまでも忘れないのです」


 ユイさんと大精霊様が悲しみを分かち合います。


「私じゃないのー!? 私、最高だったよね!?」


 クウちゃんは抗議してきました。


「……はい。……たしかに素晴らしいパフォーマンスでしたけど。今回は、1番に笑った人を決める勝負なので」

「うう。そかー。言われてみれば。無念」


 クウちゃんがテーブルに伏せました。

 セラフィーヌ殿下が必死に慰めます。


 ナオさんが前に出てきます。


「おめでとうございます」

「ありがとう」


 私とナオさんで、握手を交わしました。


 その後で、私はナオさんの腕を、高々と掲げました。


 アリーシャ殿下たちが拍手でナオさんを讃えます。


 こうして――。


 ユイさんとクウちゃんの勝負に、決着はついたのでした。


 この場合、リトさんの運命はどうなるのでしょう。


 考えて、私は考えないことにしました。


 私の役目はここまでです。


 あとのことは全部、優勝したナオさんが決めればいいんですよね。

 世界の平和、お任せしますね、ナオさん!



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