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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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26 竜の里にカメの子がいた






「ここなのである」


 山の中腹、岩が突き出てテラスのようになっている場所でフラウは静止した。

 テラスに降り立つ。

 テラスの奥の壁は、一見、ただの壁に見えるけど、よく目を凝らせば大きな空洞が透けて見える。


「……へえ、隠しゲートなんだねえ」

「さすが精霊には見えるのであるな」

「普通は見えないんだ?」

「少なくとも人間には見えぬはずである。もっとも、この切り立った山の中腹まで来れる人間がいるとは思えないであるが」

「たしかに」


 かなり飛んできたしね。


 壁の中に入ると、視界が暗転。

 ローディング。


 パッと世界が明るくなると、そこには筒状の大広間があった。


「おお」


 見上げると、どこまでも空間が上に続いている。

 あちこちにテラスが出ていた。


「皆、彼女が精霊のクウちゃんである。

 我等の誘いに快く応じてくれ、遊びに来てくれたのである」


 おっと、景色に見惚れている場合ではなかった。


 目の前には、頭に角を生やすたくさんの人たちがいた。

 里のみなさんだろう。

 性別と年齢はバラバラだ。

 白髪の老人がいれば金髪の若者もいる。

 奥には、明らかに幼さを感じる、たぶん子供の竜たちも何体かいる。


「どうも、初めましてクウです。よろしくね」


 しーん。

 と、されてしまった。

 あれ。

 もっと丁寧にするべきだったかな?

 最近、ずっと気楽な感じでいたから、気楽にしちゃったけど。


 失敗したかな?


 どうしよう言い直そうかなと思っていると、わっと爆発したように竜の人たちが自己紹介を始めた。


「これ。そんな一度に言っても聞き取れぬのである。後で場を用意する故、今は顔見せだけである。クウちゃん、こちらに来てほしいのである」

「りょ、了解……」


 ちょっとびっくりしてしまった。

 私は大広間から脇の通路に入る。

 人間サイズの通路だ。


「竜の人って、年齢と性別、みんなバラバラなんだね」

「人化した姿は心が望むままになるのであるな」

「老人が希望の人もいるんだね」

「妾のように心の年齢に合わせるものもいれば、実際の年齢に合わせた外見を好む者もいるのである」

「心、5歳っ!」


 若っ!


「ふっふー。妾の心はいつまでも童女なのである。いつまでも夢を見て、いつまでも今を楽しむのである」

「ところでここって、魔物は出るの?」

「出ないのである。イスンニーナがダンジョンコアに手を加えてくれて、ここの魔素は魔物を生まないのである。それどころか我等が過ごしやすいようにダンジョンの形も変えてくれたのである」

「へー。すごいね。そんなのできるんだ」

「イスンニーナは大精霊であったからな。クウちゃんにもできそうであるが?」

「私は無理かなー。そういうのさっぱりわかんないや」

「そうなのであるか。それぞれ、得手不得手はあるのであるな」


 部屋に通された。

 ソファーにテーブル、いくつもの調度品が置かれた豪華な応接室だった。

 だけど部屋の豪華さは気にならなかった。

 気にする余裕もなかった。


 カメ!?


 あ、いや、ちがうか……。


 カメの子か……。


 カメの甲羅をショルダーベルトで背負った小柄な女の子が、私に背を向けて箒で床を掃いていた。


 ザッザッザッザ……。


 箒で床を掃く音が部屋には静かに響いていた。


 女の子は竜ではないようだった。

 角がない。

 短めに切り揃えられた女の子の銀髪には獣耳があった。

 もふもふな尻尾も見て取れる。

 印象としては狼っぽい。

 私より少し年下に見える獣人の女の子だ。


「これカメ。こんなところでなにをしているのである」


「カメは仕事をする。生きる必然」


 振り向くことなく、カメが無感情な声で答える。


 私は固まった。


 …………。


 その声、ガッチリ聞き覚えが。


「部屋の掃除などせぬでもよいのである。ここはダンジョンなのだから部屋の汚れは勝手に落ちるのである」

「土を掘って、埋める。それがカメの人生」

「だいたいその箒はどこから持ってきたのであるか」

「自作」


 カメの子が振り向く。


 感情の映らない赤い瞳で、じっとフラウを見た後、カメの子がフラウのとなりにいた私に目を向けた。


 うん。

 間違いない。


 獣耳があるし、瞳の色も髪の色も昔とは異なっているけど、実年齢より幼く見える顔立ちは昔と変わらない。

 昔というか前世と。


 向こうも私はわかるはずだ。

 なにしろ私はVRMMOのキャラクターそのまんまのクウ。

 一緒に同じゲームで遊んでいた。


「えっと、ナオ?」


「久しぶり、クウ」


 なぜか誇らしげに拳を突き出し、Vサインを出してくる。


 いや誇るような状況じゃないよね?


 勇者はどうしたの?

 七難八苦はどうしたの?

 祖国の再興は?


 なんで土を掘って埋める人生になってるの!?


 いやそれ以前にカメってなに!?


 七難八苦を願い、祖国の復興を誓い、苦難の勇者として転生したはずのナオが、なぜか竜の里でカメになっていた。



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