250 閑話・セラフィーヌはお笑い祭りを楽しむ
クウちゃんは感動のあまり泣いてしまいました。
でも同時に笑ってくれています。
気づいてよかったです。
クウちゃんのお笑いに対する情熱を忘れるなんて、わたくしもどうかしていました。
本当に危ないところでした。
さあ、次はエミリーちゃんです。
「2番! エミリー! クウちゃんのマネをします!」
腕を上げて宣言。
「疲れた時のクウちゃん!」
エミリーちゃんがだらりと肩を落とします。
そして弱々しく言います。
「……そかー」
しばらく落ち込んでから、シャキッと元気に直立。
「嬉しい時のクウちゃん!」
エミリーちゃんが両腕を横に広げます。
そして笑顔で言います。
「そか~♪」
あはははは!
思わず、はしたなく笑ってしまいました。
エミリーちゃんのモノマネは、そばにいるクウちゃん以上に、なんだかクウちゃんな雰囲気があります。
本当に笑ってしまいます。
と、笑っていると、アンジェちゃんに袖を引かれました。
隅に連れて行かれます。
なにかと思えば、ハラオドリのことでした。
なんと……。
ハラオドリは一般的には、お腹を丸出しにして、そのお腹に人の顔を書いて、面白可笑しく踊るものだというのです。
「そ、そんな……。わたくし……」
あまりの恥ずかしさに赤面してしまいます。
わたくし、そんなことをしようとしていると思われたのですね……。
「たぶん皆、セラに話を聞かれて誤魔化したんだと思うよ……。さすがに皇女様にそんなこと言えないだろうし……」
「わ、わかりました……。教えていただき、ありがとうございます……」
「わかってくれてよかったわ」
アンジェがほっとした顔を浮かべます。
そんな内、エミリーちゃんのクウちゃんのモノマネ10連発がおわって、割れんばかりの拍手が響きました。
すぐに次のお笑いが始まります。
「3番! ひおりん&ぜのりん!」
「ショートコント、屋台」
ゼノちゃんが陽気に宣言して、ヒオリさんが真顔でタイトルを告げます。
「へい、ラーメン一丁!」
ゼノちゃんは店主さんですね。
「ずるる……。ずるる……。やはり夏の夜はラーメンに限るねえ」
ヒオリさんがお客さんとしてラーメンを食べます。
「ふふ! 隙を見せたな!」
「なっ! まさか、貴様!」
あれ。
この流れ、前にも見たことがあるような。
第2回大会の時の、暗殺者コントの新作でしょうか。
「ぬおおおお! 喉がー! 喉がー!」
「「辛口ラーメン!」」
あ。
そのようです。
「ショートコント、屋台」
「はい、肉串だよー。作りたてほやほやだよー。よく噛んで食べるんだよー」
またもゼノちゃんは店員さんのようです。
「ありがとう、おじちゃんっ!」
ヒオリさんは子供なのかな?
幼い感じです。
「ぱくぱく。もぐもぐ。うわーおいしー」
「ふ。騙されたな! ひおりん!」
「え!? ま、まさか!」
「それはイカさ!」
と、手のひらに真っ黒な針のかたまりを乗せて差し出すゼノちゃん。
「それタコぉぉぉぉぉ!」
叫ぶヒオリさん。
いえ……。
あの……。
ウニですよね……。
真顔に戻って、じっとウニを見つめるヒオリさんとゼノちゃん。
やがて、ヒオリさんがウニに驚いて叫んだ。
「ぜのりん! ごめんそれ、タコじゃない! タコじゃないよ!」
「え、じゃあ……。まさか……」
「「カメェェェェェェ!」」
いえ……。
ウニ、ですよね……。
あ。
おわったみたいです。
2人は一礼して下がりました。
正直、わたくしにはよくわかりませんでしたけれど……。
クウちゃんとキアードくんには大ウケでした。
腹を抱えて笑っています。
ひとしきり笑った後、キアードくんが立ち上がります。
「あー面白かったー。おまえら、センスあるな。正直、俺は感動した。というわけで俺も芸を披露するぞ! 少しだけ待ってろ」
キアードくんがティセさんを連れて、テントの中に入ります。
待っていると、やがて出てきました。
わたくしたちの前に立ちます。
キアードくんは、いつものごとくですが、自信満々です。
「ふ。姫様の会話をちらりと聞いたが――。これは運命というものだな。というわけでおまえらには無理だろうが! この俺様が見せてやろう! 父上直伝! 必殺! サウス辺境伯家の伝統芸をな!」
わたくしの会話が、関わっている……?
パッと思い浮かぶことはありませんでしたが……。
すぐにわかりました。
だってキアードくんがおもむろに服を頭のほうからひっぱり上げるように脱いで、お腹と胸を晒しました。
キアードくんの体は白く塗られていました。
その上に赤と黒の塗料で、変な顔が描かれています。
こ、これはまさか!
キアードくんが、ひっぱり上げた服で自分の顔を隠します。
そうするとまるで……。
とても顔の大きな、変な感じの人です。
メイドさんたちが手拍子と共に歌を歌い始めます。
「海の男は♪ 海の男は♪ 波と一緒に揺ら揺ら揺れて~♪」
歌に合わせて踊るキアードくんは、滑稽で笑えてしまいますが、同時に感心してしまうほどに見事でした。
やがて曲がおわって、キアードくんが服を着ます。
そして一礼。
「見たか? これが腹踊りだ!」
わたくしたちは盛大な拍手で見事な伝統芸を讃えました。
次はクウちゃんの番です。
わたくしはすっかり見学者のつもりでいましたが、クウちゃんに手を取られて前に連れて行かれました。
わたくし、先程は1人でハラオドリをしようとしてしまいましたが、そういえば一緒にやることになっていました。
打ち合わせはしてあります。
「5番! クウとセラ! やります!」
「ショートコント、伝説」
クウちゃんの宣言に続けて、わたくしがタイトルを告げます。
「つ、ついにここまで来ましたね、隊長……。ここに伝説の秘宝が……」
「隊員君」
隊長役のクウちゃんが真顔でわたくしに言います。
わたくしは隊員役です。
「はいっ! 隊長!」
「あった! あったぞ! これが伝説の――」
「「フラミンゴ!」」
「やると思ったわ」
ビシッとポーズを決めるわたくしたちに、アンジェちゃんが肩をすくめます。
さらにキアードくんが首を傾げます。
「おい。フラミンゴとはなんだ? 意味がわからないぞ?」
「あのね、師匠。フラミンゴっていうのは、クウちゃんとセラちゃんみたいに片足を上げて休憩する水鳥のことなんだよ」
そしてエミリーちゃんが説明してあげます。
……はい。
わたくし、反対したのです。
前と同じネタはやめたほうがいいんじゃないのかって。
でもクウちゃんが、こういうのはお約束がウケるからって言うから。
やったんですけれども。
この後も、フラミンゴを連発する予定なんですけれども……。
ああ……。
ぐぬぬぬ……と、クウちゃんが小さく歯ぎしりしています。
「セラ……作戦A、発動」
「え? それは」
聞き覚えのない作戦を言われてわたくしは混乱します。
いえ、聞き覚えのないどころか、そもそも作戦なんて決めた覚えがありません。
「ショートコント、カレー」
ああ、クウちゃんが始めてしまいました。
このカレーコントも、なんだかんだあって、最後は唐突にフラミンゴでおわらせるはずなのですが……。
なんだかんだで毎日書き続けて、ついに250話まで来ました!
ここまでお付き合い下さり、ありがとうございました!
お話は、まだまだ続きます!
FF14で暁月のフィナーレが始まって大忙しになったので、
もしかしたら毎日更新が途絶えるかもですが……今後ともよろしくお願いします!
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数字が増えていると、やる気↑なのです\(^o^)/




