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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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245 わかった、見せてやろうじゃないか……。

 ジェスチャーだけでも、言っていることはだいたいわかる。

 ゼノが身振り手振りで自慢してくるには。


 ボクたちの鎌、すごいでしょ。

 楽勝。


 でもクウの魔法は、効果、ほとんどなかったね。

 残念。


 ほら、命令しなよ。

 消してこいって。


 クウはショボショボだったけど、ボクたちならさくっといけちゃうからさー。


 くす。


 ほら、はやくー?


 最後、ゼノはバカにするみたいに笑った。

 うん。

 勝ち誇った顔もしていた。


 まあ、うん。


 その鎌、私が作ったものなんですけれどもね?


 しかし、だ。


 …………。

 ……。


 ふふふ。


 言ってくれるじゃないか。


 あれが、小手調べの60レベル魔法が――。


 この、精霊第一位。

 精霊姫の称号を持ち――。


 集団戦に個人戦――。

 大学生活を捨ててあらゆる戦いの中に身を投じてきたこの私の――。


 このクウちゃんさまの――。


 実力だとぉぉぉぉぉぉ!


 よくも言ってくれたなぁぁぁ!


 よーしわかった!


 くくくく。


 ふふふふふふふふふ。


「……よくもこの私をそこまでバカにしてくれましたねぇ。

 いいですよ。

 見せて差し上げますよ。

 この私の、本気の、すべてを破壊する全力の一撃を」


 ソウルスロットを、水中呼吸、小剣武技、魔力アップに変更。


 ゼノが慌てた顔でなにか言ってくるけど、もう遅い。


 もう遅いになってしまった以上。

 あとは「ざまぁ」しかないのだ。


 それが世の理。



 さあ、行くぞ。


 普通じゃ攻撃の通らない重装甲タイプの敵に対する、我が切り札。


 ただひたすらに剣に魔力を込めて。

 込めて、込めて――。

 どこまでも魔力を圧縮させて、必殺の剣技に乗せて、放つ。


 単純な力技だ。

 だからこそ、私の魔力を最大に活かすことができる。


 我が相棒、神話武器『アストラル・ルーラー』であれば、私のすべての魔力を注ぎ込んでも耐えてくれる。

 並の武器であれば10分の1で限界だ。


 ――さあ、行くよ。

 ――アストラル・ルーラー。


 ――私たちの本気を、ついに見せる時が来たよ!


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 気合と共に魔力を注ぐ。


 注いで――。


 注いで――。


 限界まで――。


 剣の青い輝きが一面を染め上げるほどにまで膨れ上がったところで収縮。


 そして――。


 一気に距離を詰める。

 絡みついてくるタコの足は切断。


 狙うは目玉。


「武技! フラッシュ・スラスト!」


 最後は一瞬で10メートル以上の間合いを詰める跳躍の突き技で決める。


 剣を突き刺す。

 同時に、収縮させた魔力を解き放つ。


 剣を抜き、素早く飛び退いた。


 次の瞬間には――。


 海底にへばりついて広がっていた黒々しいナニカ――。

 あるいは、どこか違う場所から現れようとしていたナニカ――。


 ナスル・ナチャという異形が、私の打ち込んだ青い光と共に弾けた。

 それこそ風船が割れるように。


 黒い残骸と青い余光が、深い海に広がって舞う。

 やがて、溶けて消えた。


 海底には、もうなにもない。


 綺麗さっぱり消えた。


 というか、消した。



「どうよー! 大勝利!」


 私はゼノとフラウにVサインを向けた。

 もちろん満面の笑みで。


 ゼノとフラウはしばらく呆気に取られていたけど、やがて指を上に向けて海面に上がろうとジェスチャーしてきた。


 私はうなずいて、2人と共に海面に戻った。


「どうよー!」


 私はあらためて勝利宣言した。


「う、うん……。相変わらず滅茶苦茶だね、クウは……。まさか、ただの力押しでケリをつけるとは思わなかったよ……」

「海底であるし、妾は苦戦を予想していたのであるが――」

「ねえねえ! 驚いた? 予想外だった? ざまぁしちゃったー?」


 わっはっはー。


 ざまぁ。


「とにかく、穢れた力を処理できてよかったよ。お疲れ様、クウ」

「流石はクウちゃんなのである」

「いえす! あい・きゃん!」


 私なら、できる!

 できた!

 当然ではありますけれども!


「……で、一応、許可がほしいんだけど。他に小物が湧いたりしていたらボクたちで処理してもいいよね?」

「いいよー! あとは好きにしてくれたまえ!」


 わっはっはー。


「……しかし、あれは何だったのであるかな」

「ナスル・ナチャって名前の異形みたい。それしかわからないけど」

「で、あるか……」

「名前に聞き覚えはある?」

「いや、ないのである」

「私のアイテム欄に千切った足をしまったら、そう説明が出たんだよねえ。だから名称はそれのはずなんだけど……」

「竜の里に帰ったら、書物で調べてみるのである」

「うん。なにかわかったら教えてね」


「――それで、クウ、どうする? あんなバケモノもいたし、今回のバカンスはこれくらいにして帰宅する?」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 ゼノの発言には私、ちょっとキレましたよ。

 この温厚さには定評のある生き仏のようなクウちゃんさまが!


「なにを言っているんですかねえ、ゼノさんは!

 いいですこと!?

 バカンスは、これからが本番!

 今夜が本番なんだよ!?

 それを帰宅って――。

 はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


「わかった! わかったからぁ! もうバケモノは倒したし安全だよね!」

「そう。もう安全なのです。だからみんなでタコ焼きを食べよう!」

「タコ、捕れたんだ?」

「ううん。捕れなかったんだけど――」


 私はアイテム欄からナスル・ナチャの足を取り出した。

 アイテム欄に入れたからか、もう動いてはいない。


「クウ……。それって……」

「さっきのバケモノの足」


 日の下で見れば、ただの、ちょっと気持ち悪い感じの大きなタコの足だ。


「まさかとは思うけど……」

「ピンポーン。これ、食べれるみたいなんだよね。タコと同じ味みたいだから、これで作ろうと思いまーす」

「え」


 ゼノが固まった。


「ク、クウちゃん……待つのである」

「どうしたの、フラウ」

「そ、それはいくらなんでも……。いくら妾でも……」

「でも?」

「そ、そうなのである! 妾とゼノもタコ捕りを手伝うのである! どうせならちゃんとしたタコを食べるべきなのである! 食べてみたいのである! そのほうが感動もヒトシオなのである!」

「まあ、それはそうなんだけど……。なかなかいなくてさあ……」

「任せるのである!」


 この後、ゼノも熱心にタコ捕りを手伝うというので、3人で手分けして再び生ダコを探すことにした。


 結果、ゼノが捕まえてくれた。


「タコ! 獲ったぞー!」


 足にからまれながらも、タコを掴んだ手を空に掲げてゼノが喜ぶ。


「さあ、クウ。これを調理するんだよね。あとは任せたよ」

「え」

「さあ、ほら」


 ゼノがタコを私に渡そうとしてくる。


 私はちょっとのけぞった。


「どうしたの? 受け取ってよ」

「いや、だって」


 間近で見る生きているタコって……。

 なんか、ぐにょグロで……これを捌くのなんて、とてもじゃないけど私には無理そうなんですけれども……。


 と、言ったらゼノに本気で怒られた。


 まあ、うん、はい。


 ゼノだって気持ち悪いのを我慢して手づかみしてくれたのにね……。


 ご、ごめんなさい。


 でも触るのは怖いので、バケツに入れて蓋をした。


 どどど、どうしよう……。


「さあ、クウのタコ焼きとやら、楽しみにさせてもらうねー! ちゃんとタコから作ろうねタコ焼きなんだから!」

「先程の足の後だと、普通のタコはとても美味しそうに見えるのである。妾もタコ焼きに期待するのである」

「う、うん……。任せて……ね……」


 今さらやめますとは言えない空気の中、私は途方に暮れた。




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― 新着の感想 ―
[一言] ちなみに金魚でも人間の顔を覚えるくらい魚も頭よかったりするらしい。 海底の野生の魚でもダイバーに懐いたりとか。 タコは数字を記号としてちゃんと理解して、餌を取ったり、かなり頭がいい生き物ら…
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