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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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243 タコを捕るぞー!

 ランウエルの海についた。

 遠浅の海が続いている。

 遠浅と言ってもそれなりの深さがあるのに、底の砂が見えるほどに海はエメラルドグリーンに澄んでいる。


「クウちゃーん! そろそろ止めていーい?」

「うん! おねがーい!」

「はーい!」


 低速で航行を続けていたクルーザーのエンジンが止まる。


 さて。


 いよいよだ。


「うーん。泳ぎたい……。もういいや! 私、着替えてくるね! 泳ぐ!」

「あ、それならわたくしも!」


 ランウエルの海のあまりの綺麗さが羞恥心を上回ったようだ。

 アンジェとセラが船室に駆け込む。

 ゼノとフラウとヒオリさんも後に続いた。


 エミリーちゃんはまだ運転席にいて、復活したキアードくんからクルーザーの操作について指導を受けている。


 ふむ。


 私、精霊の服のまま海に入っちゃうつもりでいたけど……。

 精霊の服は高性能で、水に濡れても平気で、重くなったりもしないし。

 まあ、船酔いは防いでくれなかったけれども。


 でも、アレだね。


 きっとエミリーちゃんも着替えるだろうし、みんなが水着なのに私だけいつもの服というのは変だ。


「……私も着替えよっと」


 水着になりました。


「よし、来い、弟子! 俺達も着替えて泳ぐぞ! ぐぼはぁ!」

「死ねバカ領主!」


 エミリーちゃんを連れて着替えようとしたバカ領主を蹴っ飛ばしてから、ザブンと気持ちよく海の中に飛び込む。


 みんなは一応、タコ捕りの手伝いを申し出てくれたけど……。

 ここは遊んでいてもらうことにした。


 私には、ゲームキャラ時代にイベントで獲得した技能「水中呼吸」がある。

 これをソウルスロットに入れておけば、精霊界にいるのと変わらない感覚で水の中に居ることが出来た。


 本当は、みんなでタコ捕りを楽しみたかったけど……。

 どうも、というか、完全にタコは不評だし、そもそも一般的にどうやって捕るのかもわからないので。

 もうここはアレですよ。

 ひたすら潜って、なんとか見つけて、銛で突いてやろうと。

 そう決めた次第なのであります。

 銛はクルーザーにあったものを借りました。


 小麦粉ボールの中身はタコ。

 それこそが正義。

 それこそが定番。

 なんとかそのことを広めないといけないのだ。


「セラ、競争しましょ! 昨日は負けちゃったけど、今日は負けないから!」

「わかりました。受けて立ちます」


 アンジェとセラは熱心に泳ぎ始めた。

 昨日が初めてだったとは思えない堂々たる泳ぎっぷりだ。

 今日は水深もあるので、安全のためにライフジャケットをつけている。

 さらに泳ぎの達者なメイドさんたちがそばに付いているので、水難事故の心配はしなくてもよさそうだ。


「クウちゃん、妾とゼノは少し沖を見てくるのである」

「うん。わかったー」


 フラウとゼノは放っておいて平気だろう。

 好きに遊んでもらおう。


 ヒオリさんは、キアードくんとエミリーちゃんを見てくれるそうだ。

 感謝。

 エミリーちゃんという弟子を連れていい気になっているキアードくんは、放っておくと無謀なことをしそうだしね。


 さて。


 そんなこんなでみんなの様子を見つつ――。


 あらためて。


 いよいよだ。


 私は、タコを、獲らねば。


 ソウルスロットを確認する。

 水中呼吸、緑魔法、白魔法。

 うん、問題なし。


 白魔法は、いつでもすぐに飛ばせるようにしておきたい。

 危険なことがあったら緑魔法で対処する。

 平和な海でタコを捕るだけだし、黒魔法や小剣武技はなくても平気だろう。


「んじゃ、行ってくるねー!」


 銛を振り上げてみんなに告げてから、私は水の中に潜った。

 技能「水中呼吸」は正常に働いている。

 呼吸のため、いちいち海面に上がる必要はない。

 私は海底まで降りて、眼下の砂地をじっと見つめながら泳いだ。


 タコは砂の中にいるらしい。

 盛り上がっているところがあれば怪しいのだろうか。


 しばらく探してみたけど、よくわからない。


 魚はたくさんいる。

 元気にあたりを泳いでいた。

 太陽の光が、まるでレースのカーテンみたいに海の中でそよいでいる。

 水は暖かい。

 ぼーっとすればすぐに眠れてしまいそうに快適だ。


 とはいえ、のんびりはできない。


 タコーどこだー!


 もういっそ、黒魔法のウィンドストームであたりの砂を吹き飛ばして、強引に海に出してやろうか。

 いやいや、乱暴なことをしちゃいけないよ、私。


 ちゃんと見つけて、銛で突かねば。


 お。


 砂地になにかいたので近づいてみれば、ヒトデだった。

 ヒラメみたいな魚が砂に隠れているのも見つけた。

 焼いて食べるだけなら、ヒラメみたいな魚でもたぶんご馳走なんだけど……。

 今日の目的はタコなのだ。


 いない。


 いくら探してもいなかった。


 うーん。


 もしかしたら浅瀬にはいないのかも知れない。

 私は沖に向かった。

 しばらくすると遠浅の海がおわる。


「うわぁ」


 思わず声が出た。


 断崖とは聞いていたけど、本当に断崖だった。

 ほとんど垂直に、ズドーンと、何十メートルも切り下がって、そこからさらに斜面が続いている。


 どれくらいの深さなんだろうか……。


 どれだけ海が澄んでいても、まったく底が見えないほどには深かった。


 これは……。


 うん。


 さすがに闇底へ降りていくのは、ちょっと怖い。


「やめとこ」


 と、思った時だ。


 ん?


 海の底から何かが上ってきた。


 私は身構えたけど、やってきたのはゼノとフラウだった。


「おーい!」


 私は手を振って2人を呼んだ。

 気づいて、すぐに来てくれる。


「2人とも、よくこんな怖そうなとこ、降りたねー」


 私が感心すると、ゼノの口からボコボコっと気泡がもれた。

 ふむ。


「もしかして、水の中だとしゃべれない?」


 ゼノがコクコクとうなずく。


 というわけで、一旦、海面に出た。


「クウちゃんはどうして水の中で普通にしゃべることができるのであるか?」

「どうしてと言われても。普通に?」


 さすがに技能だとは言い辛い。


「普通はしゃべれないよね? ボクが思うには」


 ゼノが突っ込んでくるけど気にしない。


「それにしても2人とも、よくあんな深いところに行ってたねー。私、見ただけで怖くて引き返すところだったよ」

「実はクウちゃんを呼びに行くところだったのである」

「私を?」

「クウちゃんも、気になって近づいたのではないのであるか?」

「ごめん。近づいたのは、タコを探してなんだけど……。あ、もしかして、海の底に巨大タコとかいた?」


 私としては軽い冗談だったのだけれど――。


「いたのである」

「うん。いたんだよ、これが。海の奥で嫌な気配がするから何かと思えばさぁ」


 フラウとゼノに、冗談を言っている様子はなかった。


「……え? ホントに?」





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